街角の「防犯カメラ」による監視はどこまで許されるのか

並木 まき

私たちが暮らす街のいたるところに、ここ数年で防犯カメラが増え続けている実態がある。
誰がどこで何をしているかが「カメラを通じて監視されている」と捉えている人もいる。
一方で、犯罪の抑止に繋がると評価する声や、犯罪発生時の捜査に協力できる点が利点として挙げられている。

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オンラインセキュリティとプライバシー保護を提供する『エフセキュア株式会社』が実施した「英国における大量監視とプライバシーに関する意識調査」では、大量監視に対する懸念がビジネスコミュニティにも広がっている点が指摘されている。
イギリスはオリンピックを契機に大量の監視カメラが導入されたことで有名だ。

エフセキュア関係者のアレン・スコット氏は、大量監視について次のように述べている。

私たちは原始社会に回帰しつつあります。原始社会で人々は人前で裸で過ごしていましたが、私たちは全世界の前で裸になっているのです。私たちは実際に原点に戻って、インターネットで自分の行動をすべてむき出しにしているのです。この状態はあまりにも急速に起きているため、人間はすぐに適応することができません。

同調査によると、回答者の86.5%が、英国政府が大量監視を実施することに賛成しないと回答し、回答者の32.3%が、自分のデジタルデータを政府が追跡していることを認識している。
そして、77.85%が、自分のデータが追跡されていることに懸念を抱いているという。

公共の安全を目的として、すべての人々の個人情報にアクセスできる権利を政府が持つべきだと考えている人はわずか14%、別の質問では10.45%の人たちだけが、「(政府による)大量監視は良いことだ」と捉えている実態が明らかになっている。

つまり、日本よりはるかに防犯カメラ大国のイギリスにおいて、政府によるカメラ監視を是としない国民のほうが圧倒的に多いということだ。

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筆者が市議会議員をつとめている千葉県の市川市でも、主にネットワーク型の防犯カメラを設置し、市民の安心と安全を守る取り組みを進めている。
市川市のウェブサイトには、おおまかにどの辺りにカメラが設置されているかを公表しており、これによって犯罪の抑止効果が期待できるとされている。

参考:市川市の街頭防犯カメラ

また、犯罪が発生したときにカメラに映っていた映像によって捜査に協力できるメリットもあり、実際にそのような運用がなされている。

しかし、自分が意図しない場面で勝手に自分の行動を監視される事態について、反対の意見を唱える人も多い。
現在、多くの自治体で防犯カメラを設置する動きが出ているが、東京都杉並区のようにプライバシー保護の観点から、個別の基準を条例で定めているところもある。
市川市でも「防犯カメラの適正な設置及び利用に関する条例」によって公共の場所に向けられた防犯カメラに市民が知らないままに撮影され、その画像がカメラ設置者の思いのままに取り扱われることを防止するよう定めている。

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オリンピックをきっかけに420万台という大量のカメラが設置されたイギリスでは、観光客は一日に約300回も防犯カメラに写されている現実があるそうだ。
2020年には東京オリンピックの開催が決定している。
世界基準で見てみれば治安がよいといわれる日本だが、ひと昔前に比較すると凶悪犯罪が増えていると不安を抱く人もいる。

イギリスがそうだったように、犯罪抑止力があるとされる防犯カメラの設置は、今後、急速に拡大していく可能性がある。
監視はどこまで必要なのかーー、国民ひとりひとりの意識が真剣に問われる時代がきているといえるだろう。

参考リンク:
英国における大量監視とプライバシーに関する意識調査 – エフセキュア株式会社

イギリス・ロンドン市における防犯カメラの現状について

画像:すべてfreeimagesより掲載

市川市議会議員 並木まき
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