時代も経営も流れはオープン化 --- 岡本 裕明

2015年01月31日 15:08

今から20年も前、バンクーバーで集合住宅開発事業に携わっていたころ、台所の設計について大きな時代の変化がありました。それはオープンキッチンと呼ばれるものでそれまでの台所は囲い込み型デザインからキッチンがダイニングルームと一体化する作りとなり、いわゆる参加型のキッチンが一気に開花したのです。


それまではカナダと言えどもキッチンは女性の城とも言われ、見せたくないエリアの一つでありました。ところがキッチン仕事は女性ばかりがやるわけではなく、また、家に友人などを呼んだ際には皆でキッチン越しにワイワイすることは楽しいひと時と変わっていきました。これがオープンキッチンが普及した大きな理由でしょう。

その後、レストランでもオープンキッチンはあちらこちらで見かけるようになりましたが、その理由は作っているところが目の前で見ることができる、つまり、インチキをしたり、変なものを使っていないという証ともなったのです。寿司屋はその点、日本の伝統あるオープンキッチンであり、今や、白人客がカウンター前の冷蔵庫の寿司ネタをネタに寿司談義している姿もごく普通に見られます。

このオープン化は台所やレストランに限ったわけではありません。コンピューターソフトの世界ではウィンドウズに対抗して出来たLinuxがオープンソースソフトウェアの礎となりました。更にオープンからシェアをするという発想に発展し、日本ではシェアハウスも第三の居住スタイルとしてその地位を築きつつあります。

コンピューターの世界ですと特にインターネットを駆使し、世界のどこでも繋がるという強みがオープン化を促進させたとも言えます。そこでは国境という枠組みを既に取り去ってしまっているとも言えるでしょう。

そんな中、日本の家電、自動車にやや陰りが出てきています。家電については既に10年以上、もがき苦しんでいるのは市場を圧倒し、長期にわたって貢献できる製品が少なく、それまでの世界のリーダーとしての地位が維持できないからであります。理由はコモディティ化と共に日本の製品が機能などにこだわる一方で世界がそれ以外のものを求めていたというギャップであります。一番先に打撃を受けたのは日本が圧倒的な自信を持っていた携帯電話でした。

その後、テレビ、DVD再生機等はドラッグストアやスーパーで日本の一流メーカーのものがこんな値段という価格で手に入るようになり、その時点でブランド価値は遺棄してしまいました。また、ソニーが頑張っていたソニーストアもカナダではなくなるようです。今でもアップルストアとかサムスンストアにはかなりの人が来てアンテナショップとしての役割は十分果たしているように思えますが、ソニーは消費者との交流の窓口まで切り詰めてしまうのでしょうか?

自動車についてはIoTの時代を迎え、自動車会社が自動車を作るという発想そのものが変わってくる予感があります。私はソフトの会社やIT企業が自動車会社を下請けとして抱える時代がさほど遠くない時代にやってきてもおかしくないとみています。

例えば手元のスマホで完全にカスタマイズした自動車をソフトを通じて発注できる仕組みができれば自動車業界は激変します。エンジンはこれ、車体はこれ、シートはこれ、と言った具合に組み合わせを自由に選び、工場はIoTとロボット化で顧客の組み合わせ通りの自動車をライン上に作り出す、と言った具合です。その場合、既存の自動車のブランドは必要なくなることもあり得るのです。勿論、これは極端な例でそんなバカなことがあるわけがないとお叱りを受けるかもしれませんが、そういった発想そのものは今や世界のどこからでも湧きあがっているのです。

テスラは標準装備するインターネットシステムを介して個々の車のソフトの更新を自動で行っており、5年後をめどに自動運転に近づけるというプランがあるのは驚きです。テスラ自体が既に将来の自動運転を前提に作られているのです。日産のリーフも全車インターネットに接続し、ビックデータとして情報を分析し、様々な改善を行っています。これは自動車がもはや動力性能からITとの接続による制御機能の強化へと変化していることがうかがえます。

世界の多くの企業が2020年を目指して革新的な商品、今までの常識を完全に覆すようなものをうみだそうとしています。それはもはや一企業レベルではできないし、一国のレベルでも出来ません。世界の頭脳と知恵とアイディアを持ち寄ってこそ達成できるものであります。これが私の思う新たなるステージのオープン化であります。

私が20年前の住宅の設計の際、オープンキッチンが受け入れられるだろうかと疑心暗鬼でありましたがわずか数人の方がクローズドキッチンへの変更を求めただけでした。明らかにオープンが時代の流れであります。そのオープンとは日本が最も苦手としているところでもあります。これを克服できるかどうか、それは周回遅れとなった時気がつくようでは困ります。

いまや、モノづくり日本とは言わなくなりました。なぜなら世界はその次のステージで激しい競争を繰り広げているからです。我々が生き延びる方法はオープンアームで世界に打って出るという事でしょうか?ただ、オープンのやり方にもはなんでも見せるのか、戦略的に見せるのか、腕の見せ所になるでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年1月31日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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