バロンズ誌:米株と米債、2つの相場が送るメッセージとは? --- 安田 佐和子

2015年02月02日 08:32

バロンズ誌、今週の特集号はマーケットの重鎮10名によるラウンドテーブル第3弾です。今年のベスト投資アイデアについて、ヒントを与えてくれていますよ。ご興味のある方は、ぜひ本誌でどうぞ。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、テーマは明暗分かれる株式相場と債券相場。古代ローマでヤヌス(Janus)といえば、1月=Januaryの語源であり2つの顔を持つことで知られています。奇しくも1月、米国の金融市場も二面性が生じました。株式相場が2ヵ月連続で下落した一方、債券相場が続伸していたのです。

米国が誇る詩人T.S. エリオットにとって「4月は最も残酷な月」かもしれませんが、米株市場関係者は1月早々、厳しい現実を突きつけられました。ウィルシャー・アソシエーツによると、2014年12月29日のピークから1.1兆ドル失っており、そのうち前週だけで6000億ドルにのぼったといいます。さらに前週の6000億ドルのうち、週末にあたる1月30日だけでその半分に当たる3000億ドルを占めました。

二面性といえば、前週に新規株式公開(IPO)を果たしたグルメ・バーガーの代表格とされるシェイクシャックは初日に119%高で取引を終えました。バーガーチェーン最大手のマクドナルドは、ドン・トンプソン最高経営責任者(CEO)の退任発表を受けて29日に5.1%高も急伸した後で、シェイクシャックのIPO当日は0.9%安で引け。同CEOが任期を務めた30ヵ月間で米国の既存店売上高が18回も減少していた一因として、シェイクシャックのようなグルメ・バーガーを求める消費者の嗜好シフトが挙げられます。

シェイクシャック、人気に違わぬ華々しいデビューに。

nyse
(出所:NYSE)

上場投資信託(ETF)はというと、マクドナルドのようなブルーチップに資金へ還流してきました。S&500に連動する”SPDR S&P 500 ETF(SPY)”は1月に3.1%の上昇を遂げた一方、ナスダックに連動する”パワーシェアーズ QQQ トラスト シリーズ1(QQQ)”は2.1%の下落。強い米経済成長とドル高の局面でアウトパフォームする傾向が高い小型株指数ラッセル2000に連動する”iシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)”は、3.3%も沈んでいました。

アノマリー研究で知られる”ストック・トレーダーズ・アルマナック”によると、1月のリターンは年足を示す。1950年から2013年まで、7回しか外れたことがないといいます。2014年がそれに例外に該当し、S&P500が3.6%下落したにも関わらず、2014年は11.4%の上昇を遂げました。

米株がデフレという潮流に巻き込まれるなか、債券利回りは過去最低を更新中。一部ではマイナスに陥っており、JPモルガンによると、前週は世界全体の16%に相当する3.6兆ドルがマイナス金利で取引されたといいます。考えてみればクレージーな話でデフレ圧力で低下中とはいえ米5年債利回りは1.155%のところ、独5年債利回りのマイナス0.054%なんですね。

1月27-28日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文では、あらためて今年の夏頃の第1弾の利上げに踏み切る可能性を示唆してきました。それでも、米債市場は買いの流れを継続。米30年債利回りは過去最低の2.226%を示現し、米10年債利回りも1.644%と、2013年5月の”テーパー・タントラム”依然の水準へ戻してきました。”iシェアーズ 米国債 20年超 ETF(TLT)”は、1月に9.8%もの急伸を達成。”公益事業 セレクト セクター SPDR(XLU)”の2.32%とは、歴然とした違いを見せつけます。

米株の重しとなっているのは、2014年6月から約60%も下落した原油先物の影響を受けるエネルギー関連。高い配当を支払ってきた同セクターは禁じ手を用いる羽目になっており、シェブロンは設備投資計画の削減だけでなく年内の自社株買い計画の中止を発表してきました。

原油安の影響はまだ実現していないようにみえるものの、米10-12月期国内総生産(GDP)速報値をみると、在庫投資を除いた最終消費は1.8%増となり、7-9月期の5.0%増から大幅に縮小します。物価にいたっては上昇の兆しはまったく見られず、コアPCEデフレーターは1.1%に過ぎません。Fedのインフレ目標値”2%”から、一段のかい離を示しました。

ヤヌスの顔は、1年の終わりと始まりを表すと言われています。金融市場の二面性を振り返ると、さながら経済指標は過去を、米債や米株、商品相場は不透明な未来を指し示すかのようです。

ストリートワイズも、今回は悲観的トーンです。中央銀行がデフレとリセッションをもたらすと予想しているのですから。欧州中央銀行(ECB)による大規模量的緩和(QE)導入により火蓋が切って落とされた近隣窮乏化(beggar-thy-neighbor)を通じた通貨戦争により、各国は利下げで対応してきました。

これまで、QEによって生まれた過剰流動性相場の恩恵から米国の金融市場は潤うと予想されていました。ヤルデニ・リサーチのエドワード・ヤルデニ氏は、違います。同氏は原油安とドル高が利益を圧迫すると読み、2015年のS&P500予想を2300pから2150pへ引き下げています。同氏は、過去20年以上にわたって脈々と受け継がれてきた債券ファイナンスのスーパーサイクルが終焉を迎えつつあると予想。いくらECBや日銀などが2008-09年以来の流動性をもたらしたとしても、需要を超える供給は成長を促進しない見込みだと主張しているんですね。Fedですら世界的なデフレと低成長の波に呑まれ利上げ開始時期を遅らせるか、あるいは1回のみ形だけの利上げで済ませると予想していました。世界は、いつか日本が来た道を歩みつつあると言えそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年2月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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