2015年日韓関係の行方

岡本 裕明

国交正常化50周年の日本と韓国の間には冬の冷たい風が吹き続けています。韓国の一部からは日本との関係を改善すべきであるという声もぽつぽつあるようですが、大勢は依然、厳しい壁に阻まれているというのが現実です。


両国の財務大臣をトップとする日韓財務対話が5月下旬にも再開される見通しとなったものの通貨協定は2月23日で終了されることになっています。通貨協定は100億ドルの交換枠でいざという時、双方の助けになる仕組みでありました。2006年より開始され、3年ごとに更新されていたわけですが、韓国の外貨準備がアジア通貨危機の時に比べて18倍に増えていることも通貨協定を止める理由になっています。ですが、真の意味合いは両国間の感情のもつれが改善しないことが最大の理由であります。

感情のもつれの直接的きっかけは李明博前大統領が突然竹島に上陸したことですべてが始まっています。ではなぜ、親日派とされた李前大統領が竹島に上陸したのでしょうか?

2011年、韓国憲法裁判所で「韓国政府は元従軍慰安婦への損害賠償を日本政府に求めるよう交渉しないのは違憲だ」という判決が大きなきっかけになっています。日本と韓国の間においてすべての問題は解決済みとされる日韓基本条約では元慰安婦の補償は韓国政府が行うことになっており、日本側に求償されないことになっています。これが日本の主張であり、一切変っていません。

ところがこの裁判の判決により常識がひっくり返ってしまったのであります。つまり、この裁判の判決により日韓基本条約は「政府間の賠償問題に過ぎず、個人の請求権をも含むものではない」とされてしまったのです。

そのため、李前大統領は日本側にその善後策を求めたのでありますが、日本は当然ながら突っぱねます。これが李大統領が姿勢を180度転換させた理由でありましょう。

そして、残念なことに日本には存在しない憲法裁判所の役目は「憲法の解釈に関する見解の相違と疑義を裁判手続で解決する手続を示す」(ウィキ)為、一旦違憲と出れば、否が応でもそれに固執しなくてはならないのが制度であります。朴槿惠大統領が固執するのもそこに帰着点があるのでしょう。

日本側が国際司法裁判所に提起できるのか、あるいは日韓基本条約締結の際、韓国政府側の判断が甘く、違憲だったとしても第三者である日本は無罪となるべきという論理を展開するのが原則論であります。

ここまで見ると韓国政府は慰安婦問題について挙げた手が降ろせない非常に辛い立場にあるとも言えるのです。その中、韓国にはさまざまな問題が噴出しています。朴大統領の不人気から経済成長の構造的低迷およびデフレのリスク、いびつな雇用環境、財閥への不満、更には2018年冬季オリンピック準備問題など挙げ始めたらキリが無くなります。

その中で反日教育を強化する韓国は残念ながらストレス発散を日本に向けるしかなくなるという実に残念な結果となっています。

日韓問題はもはや慰安婦問題を避けて解決させることは困難であります。「目には目を」の論理ならば「司法は司法で解決すべき」であるべきです。日本はこのあたりにおいてなぜか非常に腰が引ける癖が昔から直らないのですが、欧米社会では訴訟プロセスは問題解決のごく普通の手段であり、何ら恥じらう事ではないという常識観を持っています。

残念ですが、2015年が両国にとってお祭りムードになることはなさそうです。冷えた関係はどれだけ温めようとしても元が冷えているので改善は困難だとみています。唯一、韓国の弱点の一つは世論ですからこの世論を通じて「敵の敵」の流れを作れば一気に変わるわずかな可能性だけはあるとみています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 2月19日付より