「安倍農協改革」の結末に思う

北尾 吉孝

ちょうど一週間前の衆院本会議、安倍晋三首相により施政方針演説が行われました。その中で首相は、「変化こそ唯一の永遠である」という岡倉天心の言葉も交えながら、先般決着を見た所謂「六十年ぶりの農協改革」につき、「農協法に基づく現行の中央会制度を廃止し、全国中央会は一般社団法人に移行します。農協にも会計士による監査を義務付けます。(中略)農業委員会制度の抜本改革にも、初めて、踏み込みます」等と述べておられました。


当該改革の世の評価に関してネットで検索してみますと、例えば「農民から離れた全中の敗北は必然だった」とか「“最後の砦”守るため団体譲歩」といった様々な見出しの記事があり、ある政治評論家は『「痛み分け」という見方が圧倒的だ』と言っています。欲を言えばきりがなく、此の農業分野でも強い意志を持ってやって貰わねばならぬことは、勿論まだまだ沢山あります。私は、安倍首相が言われるように之は「戦後以来の大改革」で、今回積極的に評価して良いのではないかと思っています。「いよいよ出口が見えて」きたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参画実現に向けた安倍内閣の第一歩の成果とも言え、多くの国会議員が自身の選挙区を意識する中こうした形で決着をつけられたことを、素直に評価すべきだろうと思うのです。

そして此の次にはやはり、雇用関連の岩盤規制をどう打ち破るかが最大の問題になってきます。省庁や業界団体等が揃って強く改革に反対する中で岩盤規制を打ち破るのは大変でありますが、安倍政権は昨年末突然の解散総選挙という荒技で以て消費再増税を予定されていた15年10月から1年半先延ばすという難事を成し遂げたわけですから、今後も構造改革を推し進め様々な岩盤規制緩和を色々な手で断行して頂けたらと思います。

例えば、先月28日のブログ『「日本の経済にとって良い」のは、円安か円高か』でも述べたように、昨年「日本を訪れた外国人旅行者数は、前年比29.4%増の1341万3600人(中略)、訪日客が旅行中の買い物などで使ったお金が推計で43.3%増の2兆305億円」と、続く円安傾向がある面で内需刺激に役立っている部分が見られます。此の成果は何も為替要因というだけでなく「外国人の観光ビザの規制緩和」あるいは「免税品販売の大幅な規制緩和」等々、安倍総理や菅義偉官房長官が様々な規制を打ち破ったことが非常に大きな要因であります。前者では更に今年に入って、昨年11月に発表された「中国人に対するビザ発給要件緩和」の運用が、先月19日より開始されました。昨年「日本を訪れた中国人は前年比83%増の約241万人で、今年は300万人を超えるとの見方もある」ようで、之は安倍内閣の大きな功績だと私自身は認識しています。

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