バロンズ誌:リスク・オン相場に死角はないのか --- 安田 佐和子

2015年02月23日 12:31

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バロンズ誌、今週の特集は恒例の”2015年版:ベスト・フィナンシャル・アドバイザーズ1200”でございます。各州別にランキングを集計した必見のリストは、どうぞ本誌でご覧下さい。


当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、引き続き雪降るニューヨークのごとき視界不明瞭なマーケットを警戒しています。いつものランダル・フォーサイス氏ではなくジョナサン・ラング氏による今回のテーマは、米株高とギリシャ融資延長の落とし穴。

ギリシャの偉大なる哲学者アリストテレスは何千年も前に、「喜劇と悲劇の違いは紙一重である」と説きました。この名文句は、まさにギリシャ支援プログラムをめぐる協議にこそふさわしい。19日にドイツがギリシャによる6ヵ月間に及ぶ融資延長の要請に否定的な見解を示したかと思ったら、20日には4ヵ月と期間を短縮させつつ合意にたどり着きましたよね。おかげで、S&P500とダウ平均は過去最高値を更新して引けたものです。

歓迎すべきニュースと米株高を迎えつつ、香港に拠点を置くガベカル・ドラゴノミクスのアナリストであるウィル・デンヤー氏は強気派に冷や水を浴びせてきました。同アナリストいわく、国内総生産(GDP)比でみた米株の時価総額は155%に及び、リーマン・ショック以前に最高値を遂げた2007年の150%を超えてきました。ITバブルが頂点を極めた2000年の180%を下回るとはいえ、警戒水域に入ってきたといえます。

もちろん、時は移り米企業は他国制企業が多く占めるため、海外投資家の参入も増えたことは否めません。というわけで、デンヤー氏は別のアプローチでも攻めています。米株の時価総額を世界全体のGDP比でみると、35-40%を占めるまでに成長してきました。最後に同じようなレベルに達した時を振り返ると、1960年代まで遡らなければならないといいます。

デンヤー氏はこうした点を踏まえ、直ちに米株市場が急落する危機にあるわけではないとも主張します。逆に、米株は向こう2年にわたし海外株を上回るパフォーマンスを達成し、市場シェアを拡大する可能性も指摘。世界的な金融緩和ラッシュを追い風に、世界の株式市場が経済成長で正当化されない水準まで膨らませるとの考えも示します。

それでも、デンヤー氏はドル高が米企業の海外市場シェア拡大を阻害しかねないと強調。何より、米連邦公開市場委員会(FOMC)が第1弾の利上げを断行することで超緩和政策を終了させる方向であるため、「米株には逆風が吹き付けつつあると言える」と結論づけていました。

イェール大学の金融経済学教授でノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー氏は、CNBCに出演した折にこんな爆弾発言で物議を醸しました。シラー教授は、米株から欧州株に乗り換える可能性に言及しただけでなく、すでにスペイン株にも手を出したと明かしたのです。同教授いわく米株は超低金利をバネに驚くべき水準まで跳ね上がっており、大いに割高だとか。CAPEレシオ(現在の株価から過去10年間でみた1株当たりインフレ調整済み利益を割って計算する中期的投資尺度)によるとS&P500は27.50にあり、2009年の15をはるかに上回っています。ここまで急伸したのは、世界恐慌が直撃した1929年以前あるいはITバブルが崩壊した2000年以来といいますから、穏やかではありません。

ギリシャ動向も、融資延長で合意したからと言って安心は禁物。バロンズ誌が「影のCIA」と呼ぶ民間調査会社ストラトフォーの創設者ジョージ・フリードマン氏は、別の側面からギリシャ問題こそユーロ圏崩壊のリスクを高めたと説きます。ドイツからみたギリシャ債務危機は、放漫財政をはじめ政府の腐敗、不徹底な徴税で論じられますが、フリードマン氏によるとドイツこそ問題だと言うのです。

ドイツといえばGDPの50%以上を輸出に頼り、その多くは生産性と競争力でドイツに大きく水を開けられているユーロ圏。自由貿易圏のユーロ圏の誕生により、資本投資の障壁は打ち砕かれドイツにとって都合が良くなりました。しかもユーロ安のおかげで、ドイツの経常黒字と外貨準備はますます膨れ上がる公算です。この見方に沿ってドイツがギリシャに財政健全化を突きつけるのは、高失業率と賃下げのなかで返済を迫る愛の鞭、あるいはサディスティックな政策とも解釈できるんですね。

ツィプラス首相率いる急進左派連合が総選挙で勝利した時、こんなツイッターが流れたものです。
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(出所:Dominic Sherry Adams/Twitter)

ギリシャ問題については欧州のどこに位置するかで、それぞれの受け取り方は変わってくるでしょう。ただフリードマン氏は、4ヵ月間の融資延長が単なる「問題の先送りでしかない」と切り捨てます。

欧州では、テロ対策と銘打って国境警備を強化せよとの声が高まりつつあります。この主張は同時に、低賃金労働者の流入を水際で止める狙いを含んでいることは言うまでもなく。こうした動きがユーロ圏各国で実現すれば現在の欧州連合(EU)体制を脅かすリスクをはらみます。こうした可能性に頓着せずリスク・オン相場を迎えている今は、買いで攻める方が得策なのでしょうが。

ストリートワイズも、引き続き慎重な姿勢を維持しています。

裁量消費財セクターは、原油安と雇用改善でひとっ飛びに上昇してきました。ウォルト・ディズニー(DIS)、ホーム・デポ(HD)、マクドナルド(MCD)が格好の例で、S&P500のリターンの3倍近くを遂げています。ただし、足元でリスクが浮上しつつあるのも事実。1)賃上げ、2)利上げ、3)ドル高——など悪材料が意識されるなかでは、消費が拡大しなければ株価は下落するリスクを有しています。

残念ながら、消費者は財布の紐を緩める様子をみせていません。米小売売上高は2ヵ月連続で減少し、2014年12月の貯蓄率は上昇しました。おまけに裁量消費財セクターは割高の様相を呈しており、同セクターの上場投資信託(ETF)の株価収益率(PER)は18.4倍と、S&P500の17.2倍を超えています。どんなパーティーにも終わりが訪れるように、同セクターの上昇も永遠には続かないでしょう。

(カバー写真:AFP)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年2月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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