浜田宏一氏の責任の取り方

池田 信夫

──日銀は「物価安定の目途」も見直す方向だ。

浜田「(物価安定の目途で示している)1%のインフレ率は、他の国が2%という中で、1%ずつ円高が進む政策。景気振興策としても非常に弱い。デフレだったから目指す物価上昇率が低くていい、という考えはまったく逆で、現在のようにデフレ予想が定着している中では、むしろショックを与えないといけない。(物価目標は)2%ないし3%がふさわしい」


これは浜田宏一氏の2012年12月28日のインタビューだ。ところがきょうのインタビューでは、彼はこう言っている:

━━具体的に目標をどのように変更すべきか。

浜田「インフレ目標の常識からすると、少なくともエネルギー価格を除去した指標で目標が達成されれば問題ない。原油安の影響を考えれば、原油を含んだ現在の目標を2%から1%近くに下げてもいい。原油を除いたベースは1.5―2.0%でいいだろう。達成期限も現在の2年程度を3年程度にしたって構わないと思う」

以上の二つの言明は矛盾している。2012年の彼の論理を今に適用するなら、「原油価格が下がったから目指す物価上昇率が低くていい、という考えはまったく逆で、現在のようにデフレ予想が定着している中では、むしろショックを与えないといけない。(物価目標は)2%ないし3%がふさわしい」という結論になるはずだ。

原油価格の下落が「外生的」だからそれを除くというなら、それを除いたコアコアCPI(食料・エネルギーを除く総合指数)を見てみよう。

図のように、ピーク時でも0.8%しか上がっていない。これは黒田総裁のお好きなポパーのいう反証可能な命題である。つまり浜田氏の提唱したインフレ目標2%は失敗したのだ。それによって景気がよくなったとかいう話も、彼に対する反証である。彼は「インフレにしないと景気はよくならない」といったのに、インフレとは無関係に(景気循環で)よくなったからだ。

浜田氏の説はこうして明らかに反証されたのだから、2013年に言ったように「学者としての責任の取り方、それは公の場で自分の考えの誤りを認めることです」。学者には言論しかないのだから、自分の誤りを認め、内閣官房参与を辞任することが彼にできる唯一の責任の取り方である。