また始まるギリシャの長い4か月

岡本 裕明

ギリギリの交渉をし続けたトロイカやギリシャの関係者にこう言っては失礼かもしれませんが、今回もいつものようにギリシャ劇場で素晴らしいパフォーマンスを演じてくれました。一部では当初から瀬戸際までどっちつかずの攻防があるけれど最後は落としどころに落ちると読まれていました。事実そうなっています。私もトロイカは新政権に敬意を表して飴玉を与えるだろうがそれ以上はない、とこのブログに書かせていただきました。ほぼその通りになっています。


私が知っている幾人かのギリシャ人はある主張を極めて正しく熱心に主張し、自分以外の正論はないというスタンスで突っ走ります。ところがその正論のあちらこちらに穴があることに気がつき、正論の進む道がふさがっているとこれは俺の知ったことではない、とあっさり諦めたりします。いわゆる想定範囲が狭く、声の大きさだけは一流というのがイメージでしょうか?

2月末に期限を迎えるトロイカの支援を延長させるにはかつてと同様の緊縮財政プランをギリシャが維持することが延長の条件でありました。ところがチプラス政権はその緊縮プランを変えることを打ち出して選挙で当選しています。当然ながら今回の4か月の暫定延長に至るまでの交渉経緯からは現政権がトロイカからの圧力を押し返すだけの交渉力も政治力も十分ではなかったことは明らかであります。バルファキス財務大臣のアピアランスは非常に注目されましたが会議でボコボコにされた後はあまりニュースにも出てこなくなりました。ただ、昨日にユーロ圏からの離脱をしないよう努力するとコメントされているのが印象的でした。

問題はここからであります。そしてそれはチプラス政権がトロイカと折り合えるようなウィンウィンの内容で支援を延長してもらえるかであります。それはチプラス政権にとってどちらかを諦めるしかないように思えます。つまり、国民に窮乏生活を続けてもらうか、あるいはトロイカからの支援が止まり、国家が破たんし、ユーロからも外れ富めるものだけが国外に脱出し、残った国家はボロボロになる運命かのどちらかです。

確かに中国やロシアが支援を囁いていると言われています。しかし、ギリシャが本当に中国やロシアの軍門に下ることがあり得るのか、と考えればそれならばまだユーロ圏の方がまし、というのは誰が考えても同じ答えになります。例えば中国がギリシャ支援すれば金も出すけど人も出す、政治にも口を出すとなり、ギリシャの労働環境はちっとも改善せず、ギリシャ人は辟易とするでしょう。

私は仮にもう一案あるとすればチプラス政権が解散総選挙を行うというプランだと思います。今選挙をすれば結果は変る可能性があります。なぜならギリシャにはユーロ脱退の選択肢は実質的には存在せず、ドイツを中心とした旧EECのメンバーのブラックホールに吸い取られる以外に生きる道がないという事に薄々感じているからでありましょう。

ギリシャ人のメンタリティからすれば反緊縮政権が立ち上がり、反旗を翻し十分頑張ったという事実、そしてその向こうの壁は思った以上に厚かったという認識をすれば諦めるというのが私の知っているギリシャ人のタイプであります。つまり、ドイツのような固執もしないし、粘着気質でもないのです。

ここから4か月のシナリオはなかなか読めないと思います。既存の手駒からはトロイカを説得するだけのプランを作り出すことは困難で6月末までにもう一、二回、ギリシャ劇場がありそうな気もします。そしてそれを乗り越えないと夏の大きな山場を乗り越えられません。「破たん懸念先」である同国の縛りを更にきつくして逃げられないようにしているユーロ諸国、特にドイツはそういう点では鬼のような国なのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 2月27日付より