男女関係のナッシュ均衡 --- 井本 省吾

2015年03月04日 15:24

3日付け日本経済新聞の「エコノ探偵団」は「欧米では中古住宅の価格がいつまでも低下せず、逆に上がる傾向が強いのに対し、日本の中古住宅価格は時とともに下降線をたどるのはなぜか」と追究している。


答えはこうだ。

住み替えが頻繁な米国や欧州では『投資』という意識が強く、高く転売できるように購入後はメンテナンスするのが常識。これに対し、日本では建物はいずれ無価値になるという前提に立つため、メンテナンスはしない。だから実際に価値が下がるという悪循環に陥る

日本大学教授の中川雅之さん(53)(によると)、日本では中古住宅取引で建物の質を評価する慣行はなく、「売り手は家をメンテせず、買い手はコストをかけて質を調べない」ことで「均衡」している。双方が利益を最大化しようとした結果で、一方だけが行動を変えれば損をする。ゲーム理論の「ナッシュ均衡」という状態だ

この分析は面白い。同じような欧米(あるいは世界)と日本の対比で、話題に上るのが女性の活用だ。日本では企業でも役所でも女性の登用が欧米に比べ(世界全体で見ても)格段に少ない。

このため人口減少、少子高齢化のもと、日本では女性の活用が叫ばれている。保守政権といわれる安倍政権も成長戦略と女性有権者の支持獲得のため、この対策に注力している。

だが、なかなか進まない。企業や役所が女性を登用する以前に、東京大学や京都大学、早稲田、慶応など、いわゆる難関大学に入学する女子学生の比率が20-36%と低い。男女の能力差がほとんどないという前提に立てば、日本の有能な女性の多くは最初から難関大学を選ばない傾向があるようなのだ。

なぜか。大きな原因(の1つ)は、住宅価格と同様の「ナッシュ均衡」にあるようだ。アゴラのブログ(「女性活用が進まない理由をデータで考える」)で村山聡氏が、興味深い観察をしている。

子供は、自分と同性の親をロールモデルとして見る傾向があります。父親が企業で働き、家庭の年収の大部分を稼ぎ、母親はパートで、家計を補助するという家族における役割分担が根強い現状では、高い専門知識を学べる難関大学に入り、企業で働き、成果を上げ管理職になりたいと考える女の子は少ないのではないでしょうか

もっとも、ここ20~30年間の男女平等思想の普及で、このナッシュ均衡は崩れつつある。

村山氏も次のように、女性が活用されない風土の打破を勧める。

このような状況を打破する方法として、企業で働く父親が社会で働くことのやりがいや楽しさを自分の娘に積極的に教えてあげる必要があるのではないでしょうか?女のお子さんを持つお父さんこそが、女性活用を推進するキーマンかもしれません

エコノ探偵団でも中古住宅市場の活性化のカギとしてナッシュ均衡の変化を説く。

低水準の均衡から欧米型の「売り手はメンテし、買い手は質を調べる」という高水準の均衡に移るには双方が同時に行動を変える必要がある。……そうなれば日本でも質の高い住宅は資産価値が維持され、ライフステージに応じて住み替えしやすくなり、老後生活の安心にもつながる

だが、中古住宅市場の活性化は賛成できるが、女性の社会進出がこれ以上進む点については異論もある。それが拙ブログ「少子化と『男女平等』思想」のテーマだった。
女性を避ける、あるいは女性に無関心な「絶食系男性」がふえているという話で、反論、賛成、いろいろなコメントを受けた。

私は女性の社会進出に反対ではない。能力のある女性は大いに活躍すべきだと思う。そうした女性と親しく接する男性が増えるのも望ましい。

ただ、男性はどこかで「立てる」ことを望んでいるのもまた、確かである。妻子のために一生懸命働く男性を望む女性が多いのも確かである。欧米ではその点、どうなっているのか。少しは知っているが、さらに知見を広げたいな、と思っている。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年3月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。

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