ビットコインが銀行業にもたらす影響

大石 哲之

昨日は、たまたま2つのインタビューをうけた。1つは金融のメディアで、ひとつは地方銀行である。

ビットコインが銀行業にもたらす影響とはなにかということをあらためて考えた。

それについて整理してまとめる。

1) 決済ビジネス

ビットコインが直接銀行の競合となるのは、送金のところである。御存知の通り、世界中に、ほぼゼロフィーで、瞬時におくれる送金・決済手段としてのビットコインは強力だ。

ほかにも、Fin-thech分野の多くが、決済・送金ぶんやでなされている。そもそもPaypalしかり、Apple payしかり、決済分野にかんしてはインターネット出自の企業が、銀行の伝統的なビジネスを奪おうとしている。

この結末は、ネットが多くの勝利をおさめるだろう。

理由は2つ。銀行は基本的にローカルなものであって、地域の企業への融資が基盤となる。銀行はグローバルではなく、地元密着の、分散型のビジネス構造にある。これがグローバルな決済基盤を一社でつくることは難しい。せいぜい、銀行間ネットワークを通じて決済を行うに過ぎないが、この銀行間ネットワークは極めつけに古いシステムであり、これを捨てない限りコストが下がる見込みが無い。

一方、Paypalはグローバルであり、地域を問わず、全てのひとにサービスし、スケールメリットがでる。

銀行も送金コストを下げているが、あくまで自行内振込に限られる。他行あて、国際送金となると、古い銀行間ネットのシステムの問題がたちはだかり、コストと利便性では叶わなくなる。

今後5、10年にかけて、ネット出自の支払手段は加速的に成長するだろう。銀行振込みという決済手段は、コンシューマにとっては魅力を失うだろう。

2)融資ビジネス

実は、融資ビジネスにもイノベーションの芽がでてきている。マイクロファイナンスや、ソーシャルレンディングなど、小口融資におけるネット出自のイノベーションの可能性は、すでに実現がされ、成長している。

銀行は大企業向けの融資には一日の長があるが、小口の融資に関してはその座をネットにゆずることになるはずだ。

ビットコインとの関連性でいえば、P2Pレンディングがある。通貨の暗号化と、スマートコントラクトにより、純粋なP2Pレンディングが可能になるはずだ。いままでのP2Pレンディングは、資金をやりくりする中央主体がおり銀行が必要であったが、おそらくアンビシャスなひとにより、完全なP2Pレンディングのプロトコルが提案されると私は考えている。

すでに分散型(decentralized)な、エクスチェンジ(交換所)のプロトコルがあるのだから、これに、レンダーと、借り手のマッチングをスマートコントラクトでおこなえば、完全分散のP2Pレンディングが可能だ。金利はマイナーが分け合う。

ビットコインエクスチェンジにおけるマージン取引などからまずは採用の可能性があるのではと思う。

3)信託ビジネス

一日の長があるのは、実は保管ビジネスだ。銀行が他社より秀でているのは、KYCやAML、個人情報の保護、それから、資産のあずかりにおいてのプロセスやコンプライアンスだ。

これは、機動的にうごけないという弱点でもあるが、最大の強みでもある。

たとえば、現実の日本円を100%リザーブして、その銀行名義での暗号IOUを発行するということは、おそらく銀行が一番良いだろう。

そもそも預金というのは、日銀券をリザーブしたIOUであり、すでにそういう意味では、銀行とは、仮想通貨の発行を主たるビジネスとしていると考えてよいのだ。

銀行が保障しているので、仮想通貨と考えるひとは少ないが、じつは銀行預金とはすでに電子的であり、100%の裏付けがあるわけでもないので、きわめて仮想的なものである。その信用を保証できているといういみで、暗号通貨や、暗号証券の預かりや発行体としての、銀行というのは、信頼に値するだろうし、今後もその信頼は続くだろう。