続・男女関係のナッシュ均衡 --- 井本 省吾

2015年03月08日 11:27

3日付けのブログ「男女関係のナッシュ均衡」について、フランス生活6年というmerciさんから長めのコメントをいただいた。次のフランスと日本の社会の違いについての観察は参考になった。

日本とフランスの一番の違いは、一つです。フランスはカップル社会、日本はおひとり様社会ということです。……日本はどこへでも一人で行けますし、なんでも一人でできます。……ところがフランスでは一人で外食できる場所はほぼありません。コンビニもありませんから、自炊するしかありません。そして、フランスでは友人たちと飲みに行く際もしくは仕事関係の集まりでさえパートナー同伴です。……フランスでは家族を作るのがとても自然で、シングルだと言い辛い環境です。日本(では)……ひとりで行動がとてもしやすくなっています。日本でも昔は周りが放っておかなかったというのがありましたが、絶食系と言うより人と人の繋がりが無くなっているのではないかなと思います

これはその通りだと思う。拙ブログ「絶食系男子が増殖している」でも、日本について同様の分析をしている。コンビニなどの存在が独身生活を快適にさせる一方、適齢期という言葉がほぼ死語となり、見合いの話を持ち込む世話焼きも激減している。

これに男女平等思想、雇用機会均等法のもと、かつての男女関係のナッシュ均衡(「妻は夫を立て、夫は妻を労わる」関係)の崩壊が加わり、絶食系男子の増殖、少子化がすすんだというのが私の見立てである。

働く女性が子育てしやすい保育所の整備不足、社会保障の不備も少子化の原因で、この点はmerciさんの意見とは多少異なり、フランスをはじめヨーロッパの方が進んでいると思う。

merciさんの次のコメントは、私のブログを誤解した結果だと思う。

そんなに女性を家庭に縛り付けたいのであれば、日本をイスラム等の社会のように宗教から変えた方がいいと思います。「女性の社会進出に異論がある」とは、男性の賛成が必要ということでしょうか

私は「女性の社会進出に異論がある」とは書いていない。「女性の社会進出がこれ以上進む点については異論もある」と書いたのである。「これ以上」が付き、「異論がある」ではなく、「異論もある」としている。

細かい違いのようだが、そうではない。なぜなら、その後すぐにこう書いているからだ。

私は女性の社会進出に反対ではない。能力のある女性は大いに活躍すべきだと思う。そうした女性と親しく接する男性が増えるのも望ましい

議論の基本にあるのは「自由」である。以前のブログ「続・少子化と『男女平等』思想」でもこう書いた。

夫婦百景、十人十色。二人の仲がうまく行っていて、子供も健やかに育っているのなら、他人がとやかく言う筋合いではない。どちらがどれだけ外で働き、どっちがどの程度家庭を担うかは二人の自由である

そう、夫婦で話し合って役割分担を決めればいい。男女が結婚するのは「その配偶者とずっと一緒にいたい、家庭を築きたい」ということである。男女とも多種多様なのだから、自分に合った人に運よく巡りあい、結びつけばいいのである。

基本は各男女の選択の自由。外部からの圧力は少ない方がいい。

しかし、言論の自由のもと、男女関係のあり方について、いろいろ意見を言える社会でもありたい。ただ、一定の傾向の意見が多数になり、学校や地域社会、マスコミ、議会で優勢になると、それは社会的な圧力になる。多数派の意見をもとに学校の規則、法律や条令になることもある。さらに、宗教的な教え、戒律となると、規制はもっと厳しくなる。

それは社会生活を不自由にする。だが、人間とは面倒なもので、「すべてあなたの自由」と言われると、どうしていいかわからなくなり、かえって生活が不便になり、精神状態が不安定になる。

親のしつけや地域社会の慣習、学校の規律、法律、そして宗教の戒律によって自分の生活を律してもらった方が安心して生活できるところがある。大いにある。

私が「女性の社会進出をこれ以上進む点については異論もある」と記したのは、従来の社会的な枠組みがさらに崩れ、自由化が進むと、男女ともに生活の不安が高まる懸念はないか、と思ったからだ。

男女関係のナッシュ均衡の崩壊による社会生活の不安定の増加である。

「そんなに女性を家庭に縛り付けたいのか」というが、今でも「子供が生まれ、中学を卒業する頃までは家庭にいたい」という女性の方が多いのではないだろうか。その女性たちを「家庭に縛り付けられて満足なのか」と社会的圧力をかけない方がいい。

また、そうした家庭的な女性を望む男性も多く、そうした男性には「それでいいのではないですか」と声をかけてあげたい。それが「女性の社会進出をこれ以上進む点については異論もある」と書いた真意である。

重ねて言えば、それでも働きたい女性はどしどし勤めればいいし、それを望む男性と結婚すればいいと思っている。

また、結果として女性の社会進出が現在よりも格段に進んだとしても、自由な選択の結果、そうなったのなら、それでいいとも思っている。また、女性が社会進出しやすいように、保育所や子育て手当てなどの社会保障を充実させることも必要だと思っている。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年3月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。

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