バロンズ誌:マーケット、米2月雇用統計後に6月利上げを準備 --- 安田 佐和子

2015年03月09日 13:51

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バロンズ誌、今週号の特集はシンガポールに分校を設立したイェール大学。ブッシュ前大統領のほか、父のジョージ・H・W・ブッシュ元統領、ビル・クリントン元大統領を輩出した名門校は、アジアを代表する都市の金融街から約10kmの立地にイェールNUSカレッジを設立しました。その他の名門校と一線を画した戦略は成功するのか、本校を凌ぐ勢いをみせるのか、注目されます。詳細は本誌でご覧下さい。


バロンズ誌のアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、早期利上げを織り込むマーケットとその変化について。米2月雇用統計が思いがけなく強い数字となり、3月17-18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で「(利上げに)忍耐強くなれる」との文言が削除される公算が高まって参りました。同文言の削除は、6月16-17日開催のFOMCで2008年12月に導入したゼロ近辺金利政策に幕を下ろす可能性を引き出します。

少なくとも世界の債券、為替、株式市場は6月利上げを織り込み始めました。Fedが仮に利上げに動けば、欧州中央銀行(ECB)が発表した9日から国債買い入れと、逆行する動きです。中国人民銀行も、緩和策を決定した並みいる中央銀行のひとつ。過去4ヵ月で2回目の利下げを実施した中国は、全人代で成長率目標を約15年ぶり低水準となる「7%」にとどめています。

約2兆ドルに及ぶ国債の利回りがマイナス圏に陥るなか、投資家はしわ取り注射ボトックスで知られるアラガン買収の資金調達に動くアクタビスをはじめ社債市場へシフトしてきました。ただし、Fedが利上げを開始すれば様々な市場での資金シフトに変化が訪れる可能性をはらみます。米株市場でダウ平均の銘柄入れ替えで19日から時価総額7370億ドルのアップルが加わりAT&Tが除外されたとのニュースにも関わらず、278ドル安、1.5%安を示したのは象徴的です。

では、米2月雇用統計で利上げ織り込み度はどう変わったのか。FF先物市場動向を見ると、6月利上げの確率は48%から70%へ上昇しました。一方で9月利上げは82%を超え、22%は2回目の引き締めを見込み始めています

マーケットがFedの早期利上げに注目する一方で、弱気派で知られるソシエテ・ジェネラルのヘッド・オブ・グローバル・ストラテジーのアルバート・エドワーズ氏は、外貨準備高の減少に警鐘を鳴らします。

外貨準備高の増加は、量的緩和(QE)と同等の効果を生み出してきました。QEも外準も国債、通貨といった資産の買い入れを可能にさせ、バランスシートを拡大させてきたからです。特に中国は(ドル安が加速する局面でドル・ペッグ制を採用する事情もあり)人民元の上昇と輸出競争力の低下を阻止するため怒濤の為替介入を実施すると同時に、流動性を拡大させ信用バブルを醸成してきました。

ただし、状況は刻々と変化しつつあります。人民元は足元、実質貿易加重平均の為替レートでドル高でやや下振れしつつあるものの、ユーロや円などで上昇中。エドワーズ氏は、現状のディスインフレ環境を踏まえ「中国当局はドル高に伴う人民元高を容認できなくなる」と予想します。

中国の外貨準備高、2014年年7月に3兆9932億ドルを達成してから、右肩下がり。
china foreign reserve
(出所:Trading economics、単位はミリオン)

BCAリサーチのグローバル・インベストメント・リサーチは、中国の成長率が鈍化するなかで伝統的な金融政策あるいは財政政策に頼り切っていられなくなると予想。その上で「通貨こそ需要を喚起する切り札」と指摘し、人民元は向こう12ヵ月間で7-8%下落すると見込んでいます。つまり、米国債保有高第1位の中国が買い越しペースを鈍化させる可能性をにらんでいるのです。12月対米証券投資でも、中国は4ヵ月連続で売り越していました。(筆者としては、米財務省が2014年9月に対米証券投資の発表時間をこれまでの米東部時間午前9時から米株相場の取引が終了する午後4時に変更した点に、裏を感じてしまいます。)

他の中央銀行はどうか。メキシコが対ドルで約6年ぶりの水準まで急落したペソを防衛するためドル売り・ペソ買い介入を実施したように、米国債を売却する可能性が考えられます。各国の中銀が、金融市場を支え続けた流動性を吸収するシナリオが浮かび上がってきました。

——基本的にベア路線を突き進むアップ・アンド・ウォールストリートですが、同コラムでは今回エッツィー(Etsy)の新規株式公開(IPO)について触れ、足元でテック・バブルは発生していないとも論じています。エッツィーは工芸品・手芸品を売買するサイトで、2014年に1億9600万ドルの売上を計上。IPOを通じ1億ドルの資金調達を目指し、時価総額は17億ドルに達する公算です。

同株のIPOであらためてITバブルが一部で取り沙汰されるなか、同コラムは一石を投じます。ニューヨーク大学スターン校のアスワス・ダモダラン教授の主張「テスラは自動車メーカーで、ウバーは配車サービスで、レンディング・クラブは金融サービスであり、テクノロジー産業ではない」ことと同じく、エッツィーも小売サイトでありテクノロジー関連ではないと一蹴していました。コラム内で6月利上げ織り込み度の高まりに伴い資金シフトを伝えていましたが、ニューヨーク市ブルックリンに本社を置くエッツィーは別なんでしょうか。

ストリートワイズは、米企業業績の悪化と成長率の拡大は米株にとってプラスと指摘します。久々に、楽観寄りへシフトしていました。

ドイツ銀行のストラテジストであるデビッド・ビアンコ氏によると、過去にそうした実績があるといいます。1986年1-3月期までの4四半期で、原油先物が下落しドル高が進んだ結果、企業業績は5%減少しました。もっとも、S&P500は1985年7月にピークをつけ同年9月に底打ちしてから、1986年に28%もの上昇を遂げていたのです。

当時は、バリュエーションも上昇を支えました。S&P500の株価収益率(PER)は10.6倍で、足元の18倍を大きく下回ります。ビアンコ氏はこの点も了解済みで、「米10年債利回り3%割れが数年続くのであれば正当化される」と主張。米2月雇用統計後の米株は大幅安を演じましたが、利上げ警戒にもめげず米株は回復を遂げるでしょうか。

(カバー写真:ruycesar/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年3月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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