進化するマイナンバー制度は人間版IoT

岡本 裕明

日経電子版に報じられた「戸籍にもマイナンバー適用 結婚・相続で謄本不要 18年実施検討」のニュースには正直、凍り付きました。戸籍をベースにマイナンバー制度を管理する意味はその人の全てをデータセンターの中に入れるという事です。婚姻関係から銀行の通帳、納税から年金、勤務先、疾病歴から処方箋、更にはパスポートに運転免許に違反歴も管理できます。


この意味するところはマイナンバー制度は人間版IoT、私はあえてIoH(Internet of Human) と命名したいと思います。我々は自動車や冷蔵庫と同じように便利さと共に間接的に管理されるという事になります。

一昔前、脱税やら不法行為、二重国籍など分からなければいいという軽い気持ちで生き延びた人たちも基本的にいつでも見つかる時代がやってきたということに他なりません。おかしな行為や動きがあれば当局のホストコンピューターが異常を知らせる、といった近未来的なことが間近まで迫ってきたとも言えるのです。

世の中面白いもので法の隙間をぬっていろいろ考える人たちが幅を利かせ、それを求めて人が群がったりします。同じ法の隙間でも合法的にやればコンサルタントとして高額の報酬を得て社会的にも立派な人ですが、グレーエリアになるとあまり目立たなくなり、クロであればこれはアングラの世界でありました。戦後、闇市から始まった日本の経済はある意味、まじめで普通の世界とアングラが両立した中で、共存共栄であったのかもしれません。

80年代後半にはヤクザも経済部を持ち、国内はもとよりアメリカあたりに不動産を買うほど勢力を拡大したところで警察が徹底的なせん滅作戦に転じます。それは90年代を通じてグレーとクロを取り締まり続け、日本の色をシロに変え続けてきたともいえましょう。そのシロもマイナンバー制度ができることで純白度を増すわけですが、戸籍管理まで行くとこれ以上はもうないともいえる水準であります。

人間は時として管理されることに疲れたり、はみ出してしまうことがあります。すべての人間のDNAが違うなかでルールとはある程度のフレキシビリティがあることで画一性を取り除き、運用がしやすくなるものです。しかし、機械は融通が効かないという弱点があります。

私の事業のうち駐車場管理部門で駐車料金精算の際、チケットに記載された入庫時間と出庫時間から駐車料金が算出されますが、時としてクレームがあります。時間が3分はみ出した、このぐらい負けろ、とか車を取りに行き、ここまで来るのに数分かかるとか、料金ブースが混んでいて10分並んだのはお前のせいだ、など様々であります。このためアテンダントには融通を利かせられるよう指導をしているのですが、では何分ならおまけなのかといえばそれはケースバイケースであり指針程度しか出せません。あとはその人の経験則の判断です。

コンピューターに融通はありません。原理原則が全てであります。

日本に行くとあらゆることがルールと暗黙の了解の中で納まっています。これは時として良い時と肩が凝るときと両方あります。カナダに戻ってくるとホッとするのはここがまだまだ人間臭さが蔓延しているからでありましょう。人間がロボットの様に動かされるのはちょっと怖い気がします。日本人が没個性化しないことだけを祈ります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 3月15日付より