意識高い系より障害者に期待できる政治のイノベーション

2015年03月16日 07:00

筆談ヘッダー
どうも新田です。今夜もタリーズのブラジルコーヒーを愛飲しながら書いております。ところでタリーズ党といえば、初の統一地方選挙で全国区の目玉候補になりそうな方がおられます。東京・北区議選に立候補予定の “筆談ホステス”こと斉藤りえさん。昨晩、彼女の決起会へ取材に行って参りました。


◆音声読み上げシステムで“演説”
参加者は70人を超える方々が駆けつけ、NHK、日テレ、ジャパンタイムズ等の取材陣も来ておりました。テレビ局は候補者の平等性を異常に配慮する体質がございますので、どうせクローズアップ現代やバンキシャが選挙後に放映するための資料映像収集なんだろう、と思いつつ、区議選の決起集会で複数の局が取材に来ること自体が異例なのは間違いありません。北川景子さん主演でドラマ化されたベストセラーの筆者であるという知名度に加え、聴覚障害者が選挙にチャレンジするという話題性がありますから、今後も選挙本番に向けてクローズアップされていくでしょう。

※参加者との懇談はやはり“筆談”
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政治家や友人が応援の演説に駆けつけて、という点は一般の政治集会と同じなわけですが、斉藤さんのご友人の聴覚障害の方々も多くいらっしゃいましたので、このように登壇される方々にはすべて手話通訳者が付いておりました。写真は松田公太さんの挨拶。松田さんの演説も手話通訳に加えて要点をスライドで表示しておりました。
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肝心のご本人の挨拶は、PCのスライドを使った「パワポ演説」で行いまして、「聴覚障害者が議員になるのは大丈夫か?」という懸念にお答えされておりました。議会での質問は事前に文書で役所に通告し、役所側も回答文書どおりに読み上げているのが実態なので、支障はないことを強調。ただし、議事録は実際に議場で発言した内容を記載しますので、その対策としてペッパーくんの機械と同じ音声読み上げシステムを使う構想も明らかにされておりました。
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■障害があるからこそイノベーション
実は当初は、話題の候補者を見てみたいというただの野次馬根性で観に行ったのですが、障害者の方こそ因習めいた選挙や政治の世界にイノベーションをもたらせてくれるのではないかと気付かされたわけです。そういえば本山さんも「障害者は社会のイノベーター」と言ってましたっけ。

斉藤さんはプレゼンの中で「街頭演説」「選挙カーでの名前の連呼」をやらない方針を明らかにしました。いや、やりたくてもできないわけですが、「大声を出さなくても自分の声を届ける方法」として彼女が取り組むのが、有権者の方々との「お話作戦」。そこは競争の激しい銀座の夜の世界でナンバーワンたらしめた筆談コミュニケーション能力をまさに発揮できるわけですが、実はこれって健常者の候補者の方々、大政党のおエライ先生方ほど、有権者の方と選挙戦中に街で話し込むことができていないんじゃないかと思うわけです。

※4歳の一人娘の激励に思わず涙するシーンも
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都知事選の時、家入さんが渋谷の街頭演説で質問タイムを作って仕込み一切の無しのガチンコ質疑応答をしましたが、スタッフ側としてドキドキしながらも、それが新鮮に感じられたのは、選挙においていつしか候補者と有権者が「語らう」「議論する」「対話する」という大事なことが置き去りにされていたからなんだと後で気づいたものです。その意味で斉藤さんには政治や選挙のコミュニケーション構造に古くて新しい視点を提案してもらえるのではと思いました。

◆都知事選のない統一選のキーワードとは?
障害者の方の考えを政治に生かすという意味では、為末さんが以前、2020年のオリンピック開発では「パラリンピックを中心に街作りをしてはどうか」と提言されていて、まさにそれが超高齢化するポスト2020年の街づくり、国づくりのコンセプトとして相応しいと思います。斉藤さんの選挙活動もそうですが、障害があるが故の「不便」を解消する必要性から、既存の政治や行政にこれまでのシステムや因習を見直すきっかけをもたらしてくれるんじゃないでしょうか。それこそ家入さんや青木大和君がイノベーションやらアップデートやら意識高いワードを使わなくても、現場が変わらざるを得ないインセンティブが強く働くような気もします

いわゆるダイバーシティ、多様性を政治や行政の世界にも反映させていくには、この“不便”を解消するところが意外に出発点になるかもしれません。以前、東洋経済オンラインで女性の政治参画を取材した時、今度、渋谷区長選に立候補される自民党の村上さんが、都議になった頃は女子トイレの数が庁舎に少なくて、増設を申し入れて改善させた旨のお話をされていましたっけ。

そういや、渋谷区長選といえば、同性愛パートナーシップの条例案を巡って、保守クラスタの方々の政治運動化させようとする動きも絡み注目度が高まりつつあるようです。今後の候補者の顔ぶれ次第では、統一選後半の目玉選挙になるのは間違いありません。

斉藤さんの立候補、為末さんのパラリンピック都市計画構想、渋谷の条例案もろもろを考慮すると、都知事選がなくなってクリープの無いコーヒー状態で盛り上がらないこと必至の、しかし私たちの社会・生活にとって大事な今回の統一地方選のキーワードは「ダイバーシティ」ではないかと感じております。ではでは。

追伸・あの号泣県議を輩出した議会におかれましては、相変わらずのようですがね。

兵庫県議会事務局:議場で手話「品位反する」、議員を注意 聴覚障害者「差別だ」 「言語」普及、求めておきながら 
2月26日の兵庫県議会本会議で、一般質問の際に手話で自己紹介した県議に対し、議会事務局が口頭で注意していたことが分かった。傍聴していた聴覚障害者へのあいさつに当たるとして、議場での傍聴者への謝辞などを「議会の品位に反する」行為として慎む申し合わせに反すると判断した。手話の普及が進む中、兵庫県聴覚障害者協会は「手話は言語の一つ。聴覚障害者への差別とも言え、看過できない」として、県議会に近く説明を求める。【宮嶋梓帆】(15年3月10日 毎日新聞大阪夕刊)

さすがは兵庫県議会。ますます県民の良識が問われることになりそうです。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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