新聞は生き残れる対策を

岡本 裕明

電車に乗って新聞を読む人が少なくなったのは今に始まったわけではありませんが、昨年の朝日新聞ショックが与えた新聞そのものに対する不信感は業界にボディブローのように効いてくるような気がします。

新聞の発行部数は日本ABC協会が管理しているのですが、2014年度下期(6-12月)で見ると読売926万、朝日710万部となっており、漸減傾向が続いています。上期との比較でプラスになったのは産経新聞のみで2013年下期との比較となると主要全紙下落となっています。


その中で発行部数の多い読売と朝日は特に変動率が高くなり、上期比較で読売は-3.1%、朝日-4.5%、2013年下期比較では読売-6.1%、朝日-5.9%となります。これはあくまでも販売店に届けた数字で実売ではないために本当のサーキュレーション数はもっと少ないことになります。

昨年、読売の下落率が気になっていたのですが、下期の動きを見る限りやはり本命の朝日の落ち込みが深くなってきている気がします。読売のようにもともと営業力により高いシェアを誇っている場合、市場のインパクトが生じて下落傾向になると一番影響を受けやすくなり変動幅も大きくなります。これは読売の販促がうまくなかったといったより、新聞に対する不振でうわずみ部分が取れたとみてよいかと思います。

いわゆる本当の発行部数は雑誌社や小規模媒体などはひところ二倍程度にふかしていたこともあり、実態はなかなかつかみにくいものです。新聞が発行部数を販売部数の二倍にふかしていることはないと思いますが、少なくとも1-2割増しがあってもおかしくないわけで実態はこの発行部数よりもっと少ないことになります。

新聞を購読するか、という疑問は、在宅時間が長いリタイア層の方は確かにまだまだ続いていると思います。また、紙の新聞を読むことが習慣化されているため、朝ごはんの味噌汁、漬物、朝刊のセットものといえます。また、新聞を一面と社会面のどちらから読むかという話題も昔あったのですが、例えば巨人にスター選手がいて強かったころの読売新聞はスポーツ欄から、という人も多かったでしょう。

スポーツ新聞を読む人の心理は何か、と昔、考えたことがあるのですが、自分のひいきチームが勝ったとき、派手な活字に踊らされ、朝から快調にさせる一種の栄養ドリンク剤のようなものだと思います。結果は生放送に深夜のスポーツニュースを見て暗記するほど覚えていてもさらに何か新しい情報と「昨夜の興奮」を求めてスポーツ新聞を購入していたと思います。

これは時代がシンプルで情報量も少なかった時代だからこそできた技かもしれません。ネットが主流の現代において情報の鮮度、深さ、解釈がより重要になってきています。その結果、ネットのニュース欄には国内主要メディア記事よりも日本の内外発の新興系メディア記事が主流となり、聞いたことのないニュース媒体もかなり膨れ上がっています。

いわゆるネットニュースがビジネスとして注目されたこともあり、新規参入の媒体も増えているのが実情のようです。

ただ、ニュースのクオリティがここでは無視されやすい傾向があるかもしれません。

新聞には全国紙、地方紙、及び高級紙とタブロイドといったカテゴリーがあります。外国では読む新聞によりその人の知性がわかるとまでいう人もいます。カナダではグローブ&メールが全国紙で高級紙であり、バンクーバーではサンが地方紙でプロビンスがタブロイドでしょうか?日本なら読売、朝日、毎日、産経が全国紙で大衆紙、日経が専門紙、日刊ゲンダイなどがタブロイドに当たります。日本は販売数至上主義で本来の意味での高級紙はないかもしれません。(朝日はそれに近いとされていましたが。)

新聞の生き残りという意味ではテイストを出すことがキーになるのではないでしょうか?産経のスタイルは一つのやり方ですし、日経は専門紙のみならず課金型ネット新聞としても成功していると思います。新聞勧誘員がトイレットペーパーや洗剤を山のようにもってきて1か月でも購読を、というスタイルそのものが古いでしょう。購読新聞が頻繁に変わる家はその家の奥さんが洗剤に目がくらんだとみてよいわけで新聞のクオリティよりテレビ欄ではないでしょうか?そういう意味では正しい新聞の価値を新聞社が育ててきたのか、このあたりも問われるのかも知れません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 3月16日付より