「おかげさま」の日韓関係 --- 長谷川 良

2015年03月28日 16:30

韓国の大手日刊紙「朝鮮日報」電子版(27日)のトップ記事に、「日本よ、『漢江の奇跡』を侮辱するな」というかなり戦闘的なタイトルの記事が掲載されていた。同紙の主張は理解できたが、「わが国の繁栄は日本のおかげ……」という主張に対して、「日本のおかげではなく、欧米からの借款がもっと多かった」と、数字を挙げて反論していた。


「日本の外務省は今月24日、駐米・駐韓大使館のホームページなどで、韓国などアジア諸国への援助を強調する広報動画を公開した。この動画をめぐっては、『誇張であって、一方的な主張』という指摘が出ている。『戦後国際社会の国づくり:信頼のおけるパートナーとしての日本』という動画は、『1954年からアジア諸国に対し経済支援を提供した』として、韓国の地下鉄1号線の開通写真、昭陽江ダム工事の写真、浦項総合製鉄所の写真を次々と示した。韓国も日本による大々的な支援のおかげで経済成長の第一歩を踏み出すことができた、というのだ」
「朴正煕政権の第1次経済開発5カ年計画が始まった62年からの10年で韓国が導入した借款のうち、70%は米国・欧州からのものだった。日本からの借款は20%程度だった」

当方は同紙が挙げた数字の正確度をチェックする手段がないから、その論旨が間違いとも正しいともいえない。当方が合点いかない点は、同紙が「日本のおかげ」には厳しく批判の目を注ぐ一方、「欧米のおかげ」は問題にしていないことだ。同紙の主張を正しく理解するなら、韓国側は「欧米のおかげ」で「漢江の奇跡」があったという主張があったとしても反対しないが、「日本のおかげ」には猛反撃するというわけだ。

朝鮮半島の動乱後、疲弊していた韓国経済が回復し、発展していった背後には、「欧米のおかげ」だけではなく、たとえ「20%に過ぎない」(朝鮮日報)日本からの借款もそれなりの貢献を果たしたこと否定できないだろう。すなわち、「漢江の奇跡」は欧米と日本の連携による支援が大きく貢献したと考えて間違いないだろう。

朝鮮日報が批判をする点は、日本の支援が当時、欧米と比較して少なかったからではない。日本が「わが国の支援が韓国の経済発展に貢献した」と主張されることを危惧しているのだ。だから、「日本の支援で韓国が発展した」という主張は、「朝鮮を近代化した」という日本帝国主義の強弁とそっくりだ、と厳しく断じているわけだ。

明確な点は、日本は戦後、経済発展し、経済力をつけると近隣諸国へ積極的に経済支援を行ったという事実だ。もちろん、その背後には、戦時への反省と謝罪の意味も含まれていただろう。そして戦後70年を振り返って、日本外務省がその経済支援政策を評価することは自然だ。問題は、「欧米のおかげ」は容認するが、「日本のおかげ」は暴言と受け取る韓国紙の姿勢だろう。借款のパーセントの問題ではない。問題はその精神だ。

国の運命だけではない。人の人生も多くの「おかげ」を受けている。「おかげ」を受けていない人、民族、そして国家など存在しないのではないか。日本が戦後、急速に経済復興できた背景には、米国の支援のほか、朝鮮半島で多くの血が流された朝鮮動乱が日本側の経済的発展の契機となったことは否定できない。けっして「おかげ」とは表現できないが、否定できない事実だ。

日本の戦後の経済発展は、国民の勤勉や能力だけによるわけではない。時代が日本の発展を促したわけだ。その意味で、「時代の恩恵(おかげ)」を忘れてはならないだろう。

「おかげ」を受けることは、恥ずかしいことでも、惨めなことでもない。私たちの存在そのものが「おかげ」の結果ではないか。韓国紙が「欧米の支援と共に、日本の支援のおかげで韓国経済は当時、経済的危機を乗り越えました」と書けば、名記事となった。

一方、日本外務省は、「敗戦後、経済的発展を達成出来た背景には近隣諸国の犠牲もあったことを知っています。経済的発展を近隣諸国に分け与える機会が許されたことを感謝します」と主張できれば、「品格のある国家」と改めて評価されるだろう。

韓国紙には、宮沢賢治の「永訣の朝」という詩を読んで頂きたい。

病床にあった妹が、妹の為に何もできないことに苦しむ兄に向かって、陶碗を出して、「雨雪(水一杯)」(あめゆじゅとてちてけんじゃ)を頼む。妹は自分のために何かしたいと願う兄の心を配慮し、水を頼んだのだ。この詩には「受ける」側の心の美しさが描かれている。

支援を受けることは、本来、与える側を喜ばす業だ。だから、与える者は受ける者がいることに感謝しなければならない。未来志向の日韓関係とは、受ける側と与える側の「おかげさま」関係ではないだろうか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年3月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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