地方創生に必要なのは地域の"取捨選択"

2015年03月29日 14:06

書店にいくと、どこの店にも「地方創生コーナー」みたいなのがある。増田某さんの「地方消滅」が筆頭格だけど、便乗書籍とかも結構いっぱい出ているらしく、それなりの面積を取っている。

「消滅都市」レポートはかなりインパクトが大きく、政府でも内閣官房に「まち・ひと・しごと創生本部」が立ち上がるなど、政治的にホットなトピックになった。まあ、人口減少なんてのは10年も20年も前から言われ続けた話で、「何をいまさらw」という印象もなくはないですが、ようやく社会問題として認識されるようになってきました。

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このように注目を集めること自体は、私のような地方在住者からすると「いいこと」だとは思うけど、とはいえ、最近の「地方消滅」のブームは問題のフレーミングが変ではないかと感じる。

消滅するのは自治体であって地方そのものではない

「地方消滅」なんて、そんなことは今更ことさらに大きい声で言わなくなって、すでに消滅しちゃった「地方」なんていくらでもあるわけですよ。日本の中山間地には、長い歴史の中でもう消滅しちゃった村は沢山ある。問題にならなかったのは、消滅する前に近くの大きい自治体と合併したから見えてこなかっただけ。

これは木下斉さんがよく言っていることだけど、消滅するのは自治体であって、地方そのものではない。税収が上がってこなくて自治体が財政破綻することはあるかもしれないが、そこに住む人がいきなりいなくなるということはない。

大事なのは、そこに住んでる人に必要な行政サービスがきちんと提供されるかどうか。逆に、そこが維持できるなら自治体が消滅したって別にいいわけですよ。

住民からすれば、ちゃんと保険や年金の手続きをしてくれたり、住民票発行してくたりといった「基礎的な行政サービス」が一番大事。それが「オラが村」のものだろうと「隣の市」のものだろうと大差ない。

基礎的な行政サービスを維持するために必要があるなら、今にも消滅しそうな自治体を体力のある近くの自治体に吸収させる、という場合も当然あっていい。「人口減少でオラがムラが消滅してしまうから、チホーソーセーして人を呼び込まないといけない」なんてのは合併したら困る自治体の議員と職員の都合だけの話でしかない。

例えば富山県でも、細入村とか山田村とかのような中山間地の自治体が富山市と合併したのは大英断だったと思う。中山間地の住民は、新・富山市のコンパクトシティ政策に「中山間地切り捨て」と不満タラタラのようだが、普通に考えれば人口1000人ちょっとの村が中長期的に単独で生き残っていけるはずはない。単独で餓死するくらいなら「寄らば大樹」で生き残ったということ。

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(出典)市町村合併が公共料金に与える影響についての実態分析調査

野放図な”地方創生”は地域を破壊する?

政府の総合戦略も出て、今は各自治体で人口をどうやって増やすか、政策ダマを考えているところだと思うが、「そもそも本当にやらないといけないことって『人口を増やすこと』なんですか?」と問いたい。

今死にそうな自治体が何をやっているかというと、せっせと農地転用して住宅地を造成している。

「ほら、車で20分のうちの町なら、隣の市の半額で土地が買えますよ」

と言っているわけだ。これは以前にも書いたけど、これから住宅需要は確実に減るのに、一生懸命負債をつくってるわけ。

しかも、人間は住宅地から生まれてくるわけじゃないんだから、どこかで流入が発生すればどこかは流出している。それぞれの自治体が「自分さえ生き残ればいい」と思って行動したら都市構造はめちゃくちゃになりますよ。

補助金や交付金をばら撒いたら確かにちょっとぐらいは人が入ってくるかもしれないけど、それって死にそうな自治体に無理やり人工呼吸器つないでなんとか生きながらえさせているだけのような気がしてならない。行政が提供しないといけないナショナル・ミニマム、シビル・ミニマムとは何なのか、ちゃんと考えないと意味がない。そもそも、ちょっと税金突っ込んだぐらいで人が帰ってくるなら最初っから消滅したりしません。

地方創生に必要なのは地域の”取捨選択”

逆に、地方創生は各都道府県の中核となる市は力を入れないとダメだろう。人口20万人の市も1000人の村も平等に扱っても非効率。伸ばして中核にする自治体とどこかに救済してもらう自治体を分けて考える必要がある。

国や都道府県がやるべきなのは、①瀕死の自治体を救ってくれる合併先を斡旋する「仲人」役になること②中核となる都市が最低限維持できるように支援すること、であって、すべての自治体を「がんばれ、がんばれ」と無責任に応援することではない。

国や都道府県が地域を”取捨選択”することなしに地方の住民を守ることはできない。「自治体」を守るのか、「住民」を守るのか。本当に優先しないといけないのがどちらかは明らか。

藤田 哲朗
U-Turner日記@富山

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