バロンズ誌:大型合併、米株押し上げに力及ばず --- 安田 佐和子

2015年03月29日 17:43

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バロンズ誌、今週のテーマはJPモルガン・チェースです。ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)兼会長率いる同銀は、米当局との闘いを乗り越え再び確固たる地位を築きつつあります。総資産は約2.6兆ドルと、米銀でナンバーワン。2014年の1株当たり利益が5.29ドルだったところ、2015年には5.76ドル、2016年には1株当たり6.50ドルに膨れ上がると予想されており、まず4月14日の1-3月期決算で復活の威力が試されます。


当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米株相場がテーマ。映画”モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン”には「Blessed are the cheese makers(祝福されたるは、チーズ職人だ)」の台詞があります。イエス・キリストが生きた時代に近所の子供として生まれ救済者と間違えられたブライアンをコミカルに描いた映画で、上記の言葉は遠くでキリストの説教を聞いた1人の青年が発しています。聞き間違いのジョークネタは、敬虔なキリスト教徒に冒涜として受け止められました。

ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイとブラジルの3Gキャピタルの演出により実現したクラフト・フーズとハインツの合併を聞いて、先ほどの映画の名ゼリフが頭をよぎった方もいらっしゃったのではないでしょうか。チーズ・クラッカーなどの食品メーカー、クラフトの株価はニュースを受けて44%も急騰しました。

北米3位の商品会社誕生にも関わらず、株式市場への影響は限定的でした。ダウ平均は27日までの週に414ドル安、2.3%安を迎え、過去5週間で4回目の下落に。年初来のリターンをマイナスに反転させています。

1-3月期の決算を控え、アナリストは予想を下方修正し続けたことが市場の重しとなったのでしょう。ファクトセットによると、1株当たり利益は4.6%減で2012年7-9月期以来の減益となる見通し。下げ幅は、2009年以来で最大に及びます。”プロフィット・リセッション”が意識されるはずですね。敗因は2つ。ドル高と悪天候です。

BCAリサーチの”デイリー・インサイツ”によると、ドル高はS&P500構成銘柄に対する業績予想に十分織り込まれていない可能性をはらみます。売上の30%、利益の40%の海外に依存するS&P500構成銘柄の利益とドル高には、逆相関があって然るべきところ、実質貿易加重平均ベースでドルが15%上昇した割に利益の下方修正幅は狭い。すでに割高感が台頭するなかでは、「市場予想を小幅に下回る利益をだったとしても、大きな打撃とを与えかねない」というのです。

エコノミストは、米2月耐久財受注の惨憺たる結果を受けて米1-3月期国内総生産(GDP)見通しを下方修正してきました。JPモルガンは、ドルが10%上昇すればGDPを1%押し下げると試算します。アトランタ連銀の推計では、3月25日時点で0.2%増と17日週の0.3%増から下方修正されました。

アトランタ連銀のGDP見通しは、ゼロに接近中。
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(出所:Federal Reserve Bank Of Atlanta)

リオリエント・フィナンシャル・マーケッツの米国大陸リサーチ・ヘッドであるデビッド・P・ゴールドマン氏(香港在住)によると「原油急落を踏まえれば、小幅なマイナス成長を見込む」。ガソリン価格で拡大した個人消費の伸びを、設備投資が相殺すると分析しています。全米における設備投資のうち石油・天然ガスセクターが40%を占めるだけに、ダメージが軽微にとどまる可能性は低いでしょう。消費にも、楽観視していません。雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)の伸びは力強かったとはいえ「創出されてきた雇用の大半が低賃金で人出が必要な職であり、回転扉型」と切り捨て、「アメリカ人に消費を促すには余りにも力不足」とまとめます。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が27日引け前に行った講演では、2004-06年に「緩やかなペース(measured pace)」と表現したような会合ごとに25bpの利上げという形式を取らない意向を明らかにしました。同時に、利上げは経済指標次第で可能とも強調しています。Fedがハト派寄り、との認識をもつマーケットに喝を入れたも同然でした。1-3月期の業績と成長率への不安が高まっているなかでのイエレン発言を受けて、マーケットの活力が乏しかったのも頷けます。

ストリート・ワイズは、別の視点から自社株買いに注目。S&P500構成銘柄の自社株買い総額は2014年に5500億ドルに及び、前年比13%増加しました。今年も自社株買い動向が注目されるなか、決算シーズンを控え自社株買いが落ち込む時こそ買い場と強調します。みずほ証券のストラテジスト、カーマイン・グリオリ氏いわく、企業は決算発表の5週前に自社株を休止し発表後の1-2日後に再開させるため「投資家に売買のタイミングを与える」。同氏の認識どおり、S&P500は27日までの週で2.3%下落していました。

過去8四半期の決算シーズン開始5週前の動向をみると、ゴールドマン・サックスの調べではS&P500の平均リターンは0.3%の上昇にとどまり4回がマイナスに陥っていました。逆にシーズンまっただ中の1ヵ月後は、平均1.6%上昇していたのです。

自社株買いで投資家が注目すべきなのは、S&P500だけではありません。小型株セクターと日本株こそ、実入りがあると分析します。シティグループのストラテジスト、スコット・クロナート氏は、小型株指数ラッセル2000での自社株買いは2014年に230億ドルと2007年以来で最大だったと指摘。構成銘柄のうち30%が自社株買いを行いました。今後も、自社株買いの流れが続けば「小型株がリスク資産への投資という概念を打ち消す」と考えます。またS&PキャピタルIQのポール・フルーイン氏は、自社株買い発表後60日にラッセル1000は全体の指数を0.7%、ラッセル2000は1.5%上回ってきたと指摘。反応が遅れる背景には、投資家が少なく反応が鈍くなる点を挙げていました。

日本株をめぐり、みずほ証券のグリオリ氏は「自社株買いで複数年に及ぶ上昇気流に突入する前段階にある」と説きます。安倍首相が経済回復を目指しコーポレート・ガバナンスに焦点を置く政策を転じるため、大企業は増配や自社株に重点を置かざるを得ない。みずほ証券は向こう2年から5年にかけ日経平均3万円、27日時点から56%の上昇を見込んでいます。

(カバー写真:New York Post)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年3月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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