政府とマスコミの微妙な関係

2015年03月30日 12:01

報道ステーションの騒動について、古賀茂明氏がまだインタビューでいろいろ言っているようだが、彼のいう「官邸の圧力」の証拠は何もない。政府が個別の番組や人事について放送局に介入することはありえないし、あったら大変なことになる。


NHKの籾井会長や大越キャスターの交代についても、安倍政権の意向がどうとか取り沙汰されているが、会長が番組内容に介入することはありえないし、キャスターが5年やるのは長いほうだ。世間の人が思っているほどわかりやすい形で、政治的圧力がかかることはないのだ。

日常的な連絡はよくある。NHKの場合は企画総務室と総務省の間にホットラインがあり、災害報道で番組を中断するといった連絡をしている。私がいやだったのは「日曜討論」で幹事長など大物が出るとき、理事が副調(スタジオの裏のブース)に来て、生放送を見ることだが、口を出すことはまずない。

たまには直接的な圧力がかかることもある。有名なのはNC9カット事件だが、これは政治家の圧力ではなく、島桂次報道局長(当時)が中塚副会長の意を受けてやった個人プレーだった。その後、島会長が辞任に追い込まれたのは、彼がアメリカの秘密口座から7000万円横領していたことを海老沢氏に脅されたからで、いずれも政治的圧力ではない。

もう一つ印象深いのは、NHK特集でNTTの民営化をやったとき、真藤総裁から圧力がかかったことだ。1985年3月31日に彼がNTT社長になるまでを追いかけていたのだが、編成上の都合で放送が(彼が正式には社長になっていない)30日になった。これに真藤氏が怒って「中曽根さんから話してもらう」という抗議が経営陣に来たのだ。

しかし経営陣は取り合わなかった。政治家の指示で番組編成を変えたら、それこそ大事件になってしまうからだ。これで真藤については「政治家を使ってNHKを脅す田舎者」という評判が(局内では)できてしまった。メディアに露骨な圧力をかけるのは、逆効果なのだ。

ただし間接的な形では、いろいろな政治的圧力がかかる。たとえばロッキード事件のころは毎年、社会部長の人事をめぐって島グループと上田哲グループの多数派工作が行なわれた。毎日のニュースでも、編責の派閥によってオーダーが変わる。政治的圧力はそういう微妙な形でかかるもので、力のある政治家はあからさまな介入はしないし、する必要もないのだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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