生徒の空きが出るまで入れないピアノ教室のマジック

2015年04月03日 06:00
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日本人は行列が好きな民族である。美味しい店しかり、即売グルメ、人気のドーナツ屋、パンケーキ、ゲームソフト、iPhone、Windows、法律相談所など、枚挙に暇がない。メディアが注目すれば、ジャンル自体がブームになる。


そんななかある書籍が注目をあびている。「あなたの想いがとどく 愛のピアノレッスン」(学研パブリッシング)である。ここには、集客をしなくてもいつも生徒が満員のピアノ教室の秘密がつまびらかに語られている。

その昔、ピアノ教室は習い事の花形で大変な人気があった。クラスの大半がピアノを習っていることも少なくなかった。ところがいまは習い事が多様化したことや、少子化の影響もありピアノ教室は苦戦を強いられている。

本書は、生徒離れに悩むピアノ指導者に向けて、レッスンのアイディアや、生徒とのコミュニケーション法が紹介されている。ピアノ指導者のカリスマ江﨑光世氏、吹奏楽指導の新星バジル・クリッツァー氏、アドラー心理学カウンセラー岩井俊憲氏の対談形式で進行していく。今回は、行列のできるピアノ教室の秘密について学研マーケティングの小澤浩(以下、小澤)氏に聞いてみた。

●宣伝をしなくても人が集まる

—江崎氏のピアノ教室はまったく集客をしたことがないとのことですが?

小澤 はい、江崎氏は宣伝をせずに生徒が集まったことを幸運だったと仰っています。例えば、結婚して横浜の団地に住んでいたとき、下の部屋からオルガンの音が聞こえてくることがありました。近くにオルガン教室があるからそこに通っている子かなと。聞いていると「ここのリズムがおかしいな。こういうふうに直したらいいのに」と気になる。そのうちに我慢できなくなって、その部屋を訪ねてしまったんです。そして「おせっかいとは思いますが~」と気になる部分だけを教えてあげたそうです。そうしたらその親御さんがすごく感謝して、先生にお子さんのピアノレッスンを依頼されたんです。その後親御さんが「ピアノを習うならいい先生がいるよ」とあちこちで話してくれて、どんどん生徒が増えるようになりました。これがピアノ教室のはじまりだったとのこと。

その後も一軒家に引っ越されたのですが、家を建てた大工さんの娘さんを教えたところ評判を呼んで、また自然に生徒さんが集まったんですね。先生はいつも最初のお子さんから広がりが始まるんです。

●生徒を継続的に学ばせる仕組み

—生徒を継続的に学ばせる秘訣はなんだと思いますか?

小澤 まず、子どもを対等な存在だと認めることです。例えば、はしゃぎまわってレッスンをしない幼児には、「何をしたいのかなぁ」と本人に聞いてみるんですね。すると「遊びたい」とか自分の目的をちゃんと話します。「じゃぁ、ちょっと遊んだらピアノを弾こうか」と尊重するようにコミュニケーションをとっていくと徐々に先生の話に耳を傾けるようになるんですね。

そうやって自分が認められている場であるという認識が育っていくと、通っているピアノ教室は、家庭、学校の次の第三の空間、いわば大切な居場所となっていくんです。そこで先生や他の生徒さんとの信頼関係も厚くなります。当然ピアノも楽しく安心して学ぶので上達も望めます。ピアノの技術向上に早く効果があって楽にできる方法はないと思います。やはり先生と生徒さんのコミュニケーションです。ですが、一人ひとりの上達の歩みは、はやくても、ゆっくりでも、止まっていても、まず人間として成長することに重きをおいていらっしゃる教室であればそれは問題のないことではないかと取材も終わる頃に気が付きました。

—有難うございました。

江崎メソッド×アレクサンダー・テクニーク×アドラー心理学。このメソッドは、ピアノ教室に留まらず多くのビジネスの現場でも参考になることだろう。

尾藤克之/ジャーナリスト、経営コンサルタント
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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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