バロンズ誌:米株は利上げ、ドル高の逆風に耐えられるか --- 安田 佐和子

2015年04月13日 10:17

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バロンズ誌、今週の特集は長期介護保険をめぐる考察です。米国でも、ベビーブーマー世代が続々と引退を迎え老後の生活への不安が拡大中。手頃な価格で幅広くカバーする保険を探すのも困難ななか、バロンズ誌は指南書を提示しています。その他、金融事業の大半から撤退する方針を打ち出し自社株買いを発表したゼネラル・エレクトリックに大胆にも売りを勧めてきました。詳細は、本誌をご覧下さい。


当サイトが定点観測するストリートワイズは、利上げ局面の米株相場に一石を投じます。S&P500の年初来リターンは2.1%と、ストックス・ユーロ600指数の21%に大きく水を開けられる状況。その差は、業績見通しにも色濃く反映されています。S&P500構成銘柄の1株当たり利益予想は1-3月期に4.8%減、4-6月期に2.3%減。原油安とドル高が痛手となり、プロフィット・リセッションに陥る見通しです。

1-3月期の決算が予想を上回れば株価上昇の期待が高まる半面、長期的視野を持つ投資家は米株に吹き付ける逆風を見据えているでしょう。米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内利上げを検討するなかで、ドル高が業績の足を引っ張り利益率の伸びも失速する公算が大きい。

利上げに踏み切った1983年、1994年、2004年のケースを振り返ってみると、ウェルズ・キャピタル・マネジメントのジェームズ・ポールセン主席投資ストラテジストいわく「米株は向こう12ヵ月間で横ばいから10%下落」していました。現状のゼロ近辺金利政策を踏まえると、利上げへの反応は「一段と激しくなりうる」と警鐘を鳴らします。

ドル高の影響は、見捨てておけない懸念材料。利上げ観測の高まりを受け、ドルは年初来から対ユーロですでに14%も上昇し業績の重しとなることは間違いありません。コーヘン・アンド・スティアーズのマクロ・ストラテジストのマイケル・ペン氏は「S&P500の売上の3分の1を海外が占める」だけでなく、「ドル高は国内総生産(GDP)の13.5%を占める輸出を直撃する」と分析。従って「利上げによるドル高は欧州株、日本株と比較し米株へのダメージが大きい」とし、あくまて慎重スタンスです。

肝心の業績見通しですら、楽観に傾いている懸念が残ります。ベアリング・アセット・マネジメントのインベストメント・マネージャーであるマシュー・ウィットブレッド氏は「労働市場の回復している」なか、賃金が利益率を押し下げるリスクに着目しています。また金利上昇はすなわち資金調達コストの上昇につながり、利益率を圧迫しかねない。ベアリング・アセット・マネジメント自体、米株から撤退し欧州株と日本株へシフトしたといいます。

S&P500の株価収益率(PER)も18.5倍と、過去平均の15-16倍を超えてきました。前出のポールセン氏いわく「PERが18.5倍で、米株は過去36ヵ月間にわたり1900年以降でもっとも安定的に上昇してきた」。成熟した楽観の果てに、ブル相場は幸福とともに消えていくのでしょうか。

アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、ジョナサン・レイン氏がいつものランダル・フォーサイス氏に代わってまとめた今週のテーマはイランと6カ国プラス1が合意した核協議における枠組み。足元で株価が上昇した背景として、市場関係者が見過ごしている重要なファクターと指摘します。仮に目標の6月末まで最終的合意が成立すれば、イランによる核兵器開発を劇的に遅らせるだけでなく断念させることにもつながる。見返りに、米国を中心とする諸国はイランへの経済制裁を解除してくるでしょう。国際連合、欧州連合(EU)、米国が足並みをそろえ禁輸措置を解けば、1日当たり100万バレルの原油が供給されることになります。

米株、枠組み合意を弾みに上昇?
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(出所:Keystone, Jean-Christophe Bott/AP)

影のCIAとの異名を持つストラトフォーの創業者、ジョージ・フリードマン氏はメキシコ休暇中にバロンズ誌の取材に応じ、今回の枠組み合意は米国の外交政策の転換と説きます。つまり、イスラエルの利益を第一とする路線からの転換であり、中東関与からの後退を指す。オバマ政権が選択した手段は勢力均衡(バランス・オブ・パワー)戦略で、中東の4大勢力すなわちイスラエル、サウジアラビア、トルコ、イランとの密接な関係作りにあるといいます。だからこそ、米国はイランのイスラム教シーア派民兵が関与するイラクのティクリートで展開された作戦に空爆で参加した。その裏で、イエメンではイランが後方支援するシーア派系の武装組織”フーシ”とサウジアラビア諸国がつくスンニ派のハディ暫定大統領との間で紛争中ではありますが。

フリードマン氏に言わせれば、米国側の方針転換はイスラエルのネタニヤフ首相に対する信用失墜の証です。ネタニヤフ政権は長年にわたり、「イランが核兵器を開発するまであと1-2年」と煽って来たわけですから。特に「イスラエルの存続を脅かす」と触れ回った一方、実際に核兵器を所持しイランを打ち砕く態勢にあるのは他でもない、イスラエルです。

少なくとも、今回の米国の路線変更で中東を発火点とするブラックスワン現象を回避する期待が漂います。

テネオ・インテリジェンスのマネージング・ディレクター、クリスピン・ホーズ氏は、イラン国民は米欧などの制裁でどん底に突き落とされた経済に疲弊し切っていると指摘します。その上で、枠組み合意に冷ややかな視線を送るイランの最高指導者ハメネイ師は「核協議への主導権を握っていない」と主張。6カ国協議プラス1で歩み寄りを見せる穏健派ロウハニ大統領にこそ「国民の支持が傾いている」といいます。

ホーズ氏は、経済制裁解除を経てイランの原油がマーケットに流入しても原油先物が一段安となるリスクは回避されると予想しています。そもそも、油田施設・掘削設備の老朽化もあって早々に通常操業できるものでもありません。経済解除には、少なくとも1年を要するとも考えられます。また、サウジアラビアがイランの輸出再開に備え生産を調整する場合もあるでしょう。

(カバー写真:Richard Schneider/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年4月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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