ウォーレン・バフェットの「高い知性」より

北尾 吉孝

龍谷大学経済学部教授の竹中正治氏は先月21日、御自身のブログで「大富豪投資家ジム・ロジャーズ氏の奇妙なコメント」3点を挙げられ、その誤り夫々を指摘されていました。そして竹中氏は、「なぜ1985年のプラザ合意前後のような大きな相場変動局面について事実関係を正しく認識していないのか」等と書かれた後、「大富豪投資家のバフェットさんの語りには、私は高い知性を感じるが、ロジャーズ氏には感じることができない」と言われていました。


嘗て、朝日新聞出身の細川隆元さん(1900年-1994年)と日経新聞出身の小汀利得さん(1889年-1972年)による「歯に衣着せぬ毒舌が評判を得ていた」テレビ番組、「時事放談」(1957年-1987年)というのがTBS系でありました。小汀さんは「体調を崩し、1970年6月7日放送分をもって番組を降板」したわけですが、その最後の方になってきますと、それなりに年を取っていても勉強している細川さんに対し、新聞も碌々読んでいないと言っても良いほど不勉強な小汀さんに時事放談をやらすのも無理ではないかと思いつつ、私はその話を聞いていた記憶があります。

対照的に年老いてなお矍鑠(かくしゃく)とされていた、東洋経済新報社の高橋亀吉さん(1891年-1977年)という御方もおられました。高橋さんは立派な経済学者として通用する人で、また同時に大変素晴らしい経済評論家であったのです。私は大学時代に高橋さんのオピニオンを読むべく、よく新聞や雑誌を買っていました。此の方は何歳になっても益々その経験値が更に増え、世に新たに起こってくる様々な事象も御自身の知識と経験の中で自分なりに消化され、経済に関する極めて質の高い論説等を書き続けておられました。

私の見ているところでは、人は年を取るに勉強し続ける人と勉強しなくなる人にはっきりと分かれてき、取り分け後者は70歳を超えて駄目になる人が多いように思われます。年を取っても後者は余勢を駆って色々と露出したりするのですから、は「命長ければ恥多し」の類であろうかと思います。冒頭挙げた72歳のジム・ロジャーズ(1942年-)が「奇妙なコメント」を発するとしたら、之に属するものかもしれません。

84歳のウォーレン・バフェット(1930年-)から何ゆえ「高い知性」が感じられ息が長いかと言ってみれば、やはりそれは彼が相場の世界で生きている現役の勝負師だからでしょう。

バフェットは一つの投資哲学の下ずっと運用し続けているのですが、実績が示す通り素晴らしいという一言に尽きます。毎年恒例の「レター」を見てみても、夫々の時代の変化をある意味先取りするようなものもあれば、時代の変化の本質を確実に捉えているものもあるわけで、やはり何歳になろうが努力を惜しむことなく勉強し続けている結果だと思います。

バフェットのように80歳を超えて尚、自主性・主体性・創造性というものを発揮できるような人は、少ないとは言え居られます。私自身はそう在りたい、という思いは強いですが、ただ馬齢を重ねているのが現状です。

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