産経新聞が渋谷区長選に“参戦”

2015年04月18日 07:00

どうも新田です。いよいよ明日19日から統一地方選が後半戦ということですが、一番の目玉である渋谷区長選を巡って、3K新聞がきのうの朝刊社会面で「渋谷の変」と題する特集連載を始めまして、さっそく同姓パートナーシップ条例に関する事実上のバッシング記事を掲載して、さすがはタカ派クラスタの期待にたがわぬ、実直ぶりでございます。


かつては「デジタルファースト」とか言って、全国紙で最も気前よくネットにどんどん記事を載せてしまう3Kさんではありますが、なぜか当該の記事をアップしてネトウヨから称賛される機会を逃すという勿体ない状況です。
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一応、紙面の写真もございますが、メイン記事の見出しだけでトーンは分かるでしょう。
まずは横凸版で「入会・面会『断ったことない』。同性カップル条例」とドドン。
そして縦で「根拠曖昧 業者や病院も戸惑い」。

詳しく紙面を見たい他紙の購読者や無読層におかれましては、近所の図書館あたりで手に取っていただければと思いますが、この記事の言わんとしていることは、こういうことです。渋谷区がこの条例を制定した理由としては、賃貸住宅の入居や病院での面会を拒絶された事例があるとしていたわけですが、3Kさんの取材では、同性カップルが入居を断られた話は聞いたことが無い的な不動産会社のコメントを載せております。

まあ、条例の賛否を問わず不思議なのは、渋谷区の条例制定のきっかけとなった同性カップルや不動産、病院などの「当事者」と、記者が取材した範囲の「当事者」がオーバーラップしていない(と読める)こと。記者の取材した範囲のみを随分強調している点です。まあ、ある種の3K修辞法なのかもしれませんが、区の方に届いた声の主を割り出す努力はしたんでしょうかね。このあたり、あまりやり過ぎると、不倶戴天の敵である築地新聞の誤報問題で話題になりました「角度をつける」(=新聞社の思う方向に論調を動かす)ことにもなりかねないと思うわけですが、メイン記事の2つある小見出しでは「導入区長は引退へ」と、桑原区長が“無責任”ではないかと暗にこき下ろし、もう一つは「家庭観の崩壊」と保守クラスタのプライドをくすぐっております。

まあ、そもそも4月2日時点で条例に違和感ありありの社説を載せていたんですがね。

【主張】同性カップル条例 家族のありよう考えたい
(略)条例をめぐっては法律による婚姻制度を損なうのではないかと心配する意見も少なくない。産経新聞とFNNの合同世論調査では条例に全体で6割が賛成したものの、60代以上の男性では反対が多かった。区議会でも賛否があった。条例の趣旨に反する行為があった場合、事業者名を公表する規定の適用回避を求める付帯決議がつけられている。差別や偏見をなくす啓発などを優先し、かえって反発を招くような条例運用は避けてほしい。

と、まあ、世論調査全体で6割の賛成があった事実があるにもかかわらず、わざわざジイさんクラスタの反対多数をクローズアップする等、とにかく嫌で嫌でたまらないようです。

さらに4月4日のコラム「産経妙」(朝日で言う天声人語です)は本音が出ている。

どうしてこんな人が国会議員になっているの、というお叱りの声が、小社の読者サービス室に毎日のように寄せられている。確かに、社会人としての基本ができていないお粗末な議員が多すぎる 

うん、まあ、そうですね。

会見で号泣した元兵庫県議を持ち出すまでもなく、地方議員のレベルも疑問符がつく。もっと問題なのは、世間の関心が薄くなりがちな自治体や議会が、暴走しやすいことだ ▼同性カップルに「証明書」を発行する条例が成立した東京都渋谷区は、その典型だろう。

さようですか。きのうの社会面でわざわざ渋谷区長選の連載を「変」とネーミングし、産経妙で「暴走」と定義した行間から、記者の皆さんの本音を私が意訳して差し上げましょう。

ったく、リベラル野郎どもがこんな炎上条例作りやがって、日本の伝統・風紀が乱れるんだよ。条例を作って引退する区長は無責任だし、提案した長谷部なんか区長にさせねえぞ、村上のオバサンを勝たせるからな、おい」……ってことなんでしょう。そういえば3Kさんは、民主党に政権交代した時も社会部のツイッターで「民主党さんの思うとおりにはさせないぜ」と狙い通りの炎上を達成して後に削除した誇るべき実績がございます。そろそろ本気モードの保守奥儀をご開陳すれば、全国のネトウヨの皆さんが感涙にむせぶことは必至であります。
産経ツイッター
まあ、思想信条は自由なんで、どんな主張をなさろうと別にいいと思うんですよ。そもそも政治的中立を求める放送法の縛りがあるテレビ局と違って、新聞社は論説で一定の方向性は今でも打ち出せる。いっそのこと業界で言うところの「不偏不党」やら「反対論への寛容」なんて胡散臭いお題目は形骸化しているわけで、欧米の新聞みたいに支持政党や候補者を明言した方が潔いというのが元同業者の私の持論です。

読売や朝日みたいに部数がマジョリティーだと政党支持層にある程度広めにマーケティングせざるを得ないんでしょうが、3Kさんは小回りが利く部数だし、最初からリベラル界隈の読者の顔色なんか窺う必要なんか全く無い。胡散臭いなんちゃって政治的中立の建前を残す業界の常識を覆し、言論面から男気ジャンケンばりに選挙に堂々と“参戦”する方が存在感を高められるんじゃないでしょうか。

なお社会面の記事では、首長がひっくり返した多選禁止条例とか、過去に物議を醸した法令や条例をサイド記事で紹介して、同性条例をそれらと同列に上げる気マンマン。ただですね、その中で挙げている東京都の銀行税を導入したのは、3Kさんの名物一面コラムだった「日本よ」の執筆者であり、亡き昭和の大スターの兄でもある元都知事氏。銀行に訴えられた挙句、和解で手打ちするというグダグダの「黒歴史」を彷彿とさせることも辞さないあたり、男気を感じます。

さてはて、情勢記事では「混戦」とした3Kですが、連載の渋谷区民の心証形成に与える影響はいかほどでしょうか。3K新聞のご健勝とご発展をお祈りいたします(棒)。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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