産業金融における投資運用業の機能

2015年04月21日 11:30

金融は、原理的に、資金を調達しようとするものと、資金を運用しようとするものとの間を、仲介することである。仲介は、公開資本市場を通じても、当事者間のプライベートな関係性のなかでも、可能である。


公開資本市場において、仲介機能を果たすのが投資銀行である。プライベートな関係性のなかで仲介機能を果たすのは、銀行等である。

では、投資運用業者は、どのような仲介機能をはたしているのか。一つは、公開資本市場において、資金調側を代理する投資銀行に対峙して、資金運用側の投資家を代理する機能である。もう一つは、銀行等と同様に、プライベートな関係性のなかで、直接に、資金調達側に、資金供給することである。

プライベートな関係性のなかでの金融仲介について、銀行等と投資運用業者の機能の違いは何か。いうまでもなく、代理している資金の性格の差異が、機能の差異を生むのである。

銀行等は、元本保証で、かつ期間の短い預金を資金源泉としているため、資金供給形態は、融資、それも期間の短い融資が主流にならざるを得ない。ところが、投資運用業者が預かっている資金性格は、全く異なる。元本保証もないし、期限の定めもない。

故に、投資運用業者は、プライベートな関係性のなかで、調達側の事情に応じて、多様な資金供給形態を工夫できる。プライベートエクイティは、その代表である。その他、融資でも、不動産を使った手法でも、メザニンでも、何でも可能である。

この資金調達方法の設計、即ち、資本構成の設計は、公開資本市場における投資銀行の重要な機能である。プライベートな関係性のなかでは、投資運用業者が、投資銀行の機能をも、果たすのである。

銀行等は、資金調達側の顧客との間に、長期間にわたり取引が継起するなかで、安定的な関係性を構築している。そのような関係性のなかには、投資運用業者が介入する余地はない。あるとしても、関係性は、特殊な状況を反映した一時的なものにならざるを得ない。

特殊な状況とは何か。どのような企業でも、一時的不振とか、新規事業投資とか、事業再編とか、様々に常態から逸れた状況に陥る。そのようなときにこそ、投資運用業の機能が必要になる。

実は、非常態は特殊なものではなくて、どの企業にも周期的に起きることであり、産業全体としてみれば、常に、どこかが非常態なのである。故に、銀行等の常態における金融機能と、プライベートエクイティ等の投資運用業の非常態における金融機能との間には、産業金融の統合的な機能として、連続的な相互補完が必要なのだ。

プライベートエクイティ等の投資運用業者が、直接的に企業とプライベートな関係性をもてるのは、非常態という限られた期間だけである。そのためには、常態における潜在的な関係性を構築しておかなければならない。ここに、いわゆるディールフローといわれる潜在案件にかかわる情報能力の問題が出てくるのである。故に、投資運用業においては、銀行等の常態における金融機能との連携が不可欠なのである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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