日本の社長の報酬はなぜ低い?

2015年04月23日 09:37

格差問題は世界共通の話題であり、特によく言われるのがアメリカの経営トップの天文学的な報酬額であります。年数十億円の報酬、数百億円の退職金は当たり前となったアメリカの企業人らに対して日本の社長さんの報酬は6千万円程度とも言われています。上場会社の役員報酬の開示でようやく1億円を越える報酬をもらう経営者が増えてきたかなとは思いますが、6千万円とは企業の稼ぎと比べればどうなのでしょうか?

日本の社長の報酬が低めに抑えられているのは様々な要因がありそうです。


まず、会社は誰のものか、という点ですが、欧米では株主のものであって、質問の発想そのものがメイクセンスしません。従業員とは長年の労使の壁が分厚く存在します。一方、起業者にエンジェル投資などを通じて援助をするのは株主です。もう一つの切り口は経営側の存在ですが、それは会社という資産を上手にマネージメントする専門家であって、その報酬はマネージメントフィーと考えてしまってもよさそうです。マネージメントフィーは固定フィーとインセンティブに分かれ、例えば、インセンティブは売り上げを増やし、コストを下げればもっともらえる仕組みが基本かと思います。コストを下げるとは従業員の給与も当然含まれるわけでそこに背反する関係が作られます。

業種にもよるでしょうが、マネージメントフィーは利益の2-4割ぐらいでしょうか?そして基本的にどんなに業績が悪くてもマネージメントフィーがマイナスにならない仕組みが施されています。つまり、会社決算が赤字でもとんでもない社長の報酬が発生するわけです。

私も株主であるカナダの某資源開発会社は赤字決算にもかかわらず、トップ報酬が10億を超えていました。日本なら大騒ぎですが、こちらでは発想そのものが違うという事でしょう。また、日本マクドナルドの配当が業績の割に下がらないのもこのあたりにヒントの一つがあるかもしれません。(アメリカマクドナルドが日本マクドナルドを運営しているという意味でよりマネージメントフィー的な性格を打ち出し、株主という発想から切り離しているかもしれません。)

二つ目に欧米人はなぜ、そこまで報酬に固執するのか、であります。年間数億円の報酬をもらってもまず、使い切ることはないでしょう。一般的には家、車、別荘、ボートなどを買ってもその後が続きません。食事や旅行などで使える金額はどれだけ豪勢にしても微々たるものです。

私は次の世代に残せる仕組みがその答えではないかと思います。アメリカの相続税は基礎控除が現在約6億円(5ミリオンドル)まであります。カナダには相続税の発想はありません。また、そこまで富がある方は通常、ファミリートラストを形成するなどして○○家の資産は代々受け継がれるはずです。ファミリーツリーが年輪のように太くなる、とはこのことなのです。

但し、富裕層には多額の寄付をして社会還元する機能も日本には全くない仕組みです。逆に言えば富裕層になり寄付等を通じて個人の名声をより高める手段は欧米独特のスタイルであるともいえます。これはビジネスでも同様で大規模事業には多額の社会貢献を条件とさせられることはごく普通です。私が進めた不動産開発でも集合住宅600戸程度の事業で総額64億円相当の社会貢献をしています。これはある意味、名声料(有名料)ともいえるのでしょう。

さて、日本の場合は社長の報酬が少なくても済むのは次世代に残しにくいその仕組みではないかと思います。「相続が三代続くと財産はなくなる」とはよく言ったもので、社長の貰い分は自分で使う程度のにとどめておけ、とも取れます。社長の家で豪勢な屋敷に住んでいる人は案外少なかったりするものです。新興系の社長さんならマンションが主流かもしれません。

ただ、日本には欧米にないメリットがあります。それは各種ベネフィットや接待費などであります。社費で銀座や赤坂で最高の食事、さらに二軒目に繰り出すというお馴染みのスタイルは欧米ではそうそうないでしょう。欧米なら自分で払っているケースも多いでしょう。世界でも一、二の富豪であるウォーレン・バフェット氏はハンバーガーとコーラを自分で払っているわけでしょうから。

報酬も社会的背景を勘案しないと一概に格差を語れないとも言えそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人  4月23日付より

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