日本は「AI」研究開発競争に勝てるのか

スティーブン・スピルバーグが映画『A.I.』(A.I. Artificial Intelligence)を制作したのは2001年のことだ。米国ではあまりヒットしなかったが、日本では興行収入約100億円と成功を収めた。どこか手塚治虫の『鉄腕アトム』のプロットをなぞったようなストーリーが受けたのかもしれない。

ロボットについての感覚は欧米人と日本人とでは大きく違う、という意見もある。これについては、欧米人が自分たちと敵対する存在としてロボットを拒絶しがちなのに比べ、日本人は小さい頃からマンガやアニメなどでロボットが身近な存在であるから、という分析も可能だろう。映画『ターミネーター』や『マトリックス』などにみるように、ハリウッド発の映画も「人間対マシン」という図式が多い。

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HONDAのASIMOも最新ヴァージョンでは、駆け足やダンス、階段昇降などができるようになっている。


技術はいつの時代も日進月歩だ。映画『A.I.』の時代には、人間そっくりのヒューマノイドロボットもフィクションの中の存在だった。今では人工知能(AI)の研究も進み、その一段の技術革新が望まれている状況に入っている。また「ロボット先進国」だった日本も米国などの軍事ロボットに急追されている。

経産省は、産業技術総合研究所(産総研)を拠点にし、ようやくAIの研究開発へ本腰を入れ始めた。ロボットに限らず、いわゆる「IOT」の情報家電にAIの技術は必須だ。産総研は5月7日、AI研究のための組織「人工知能研究センター」を立ち上げた。ここでは「脳型AI」やビッグデータをAIと統合して分析解析する「データ知識融合型AI」の研究を進める。後者のデータ知識融合型AI研究は、これまで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として進められてきたものだ。

AIの研究の歴史は、盛り上がっては衰退する、というサイクルを十数年単位で繰り返してきた。古くはアラン・チューリングの「チューリング・テスト」の時代から、コンピュータ性能の加速度的な進歩を背景に隆盛を極め、「人間そっくり人工知能」開発に期待が高まったが、巨額資金を投入してもまともに「思考」するAIはできなかった。

1990年代にAI研究は「冬の時代」に入る。しかし、パターン認識をベースにしたニューラルネットワークや一時、流行語にもなったファジイ制御、さらに遺伝的アルゴリズムなどのプログラミングの研究開発は、その間もコツコツと進められた。一方、果たして「思考」とは何か「意識」とは何か「AI」とはいったいどんなものか、という哲学的な論争も尽きない。

日常使用に耐えうる利用価値のあるAIが一向に実現できないまま、コンピュータの性能やデータの処理速度と量が爆発的に急伸し、それに影響されてAI研究の方向性も変化しつつあるようだ。「人間そっくり」に「思考」せずとも、あたかも人間のように振る舞うことのできるマシンであればいい、という開き直りもあるかもしれない。

米国のGoogleが、同国の巨額な軍事技術開発費を背景に、世界中のAI研究者を「青田刈り」しているのは明らかだ。つい最近の報道では事故も起きている自動運転技術は、すでに実用段階に入っている。過渡期技術に事故はつきものだ。米国での研究成果が日本を追い越す日は近い。いや、実はもうすでに追い越されている、と指摘する声も多い。

表題の記事では、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者らが、ニューラルネットワークによるAIで従来の技術より一歩前進した、と書いている。アナログメモリを使い、単純な回路にしたことが良かったらしい。単純化することが重要だそうだが、AIの研究の多くはこうした行きつ戻りつの「振り子運動」で尺取り虫の如く少しずつ進歩しているのかもしれない。ただ、こうした記事を読む限り、振り子が振幅する間隙を縫えば、日本のAI研究にもまだまだ可能性がありそうだ。

SCIENCE 2.0
Simple Artificial Neural Circuit A Step Forward In Artificial Intelligence


オゾンホールは今世紀末に消滅する:NASA発表
WIRED.jp
1980年代後半から極地に近い地域で、拡大を続けるオゾンホールが発見され始めた。オーストラリアなどでは紫外線が強まり、皮膚がんなどの発症が多発する、などと警告され、世界的にオゾンを破壊する化学物質に対して規制が強まった。その結果、オゾン層はもとに戻りつつあり、この記事によれば米国のNASAが今世紀末にはオゾンホールがなくなるだろう、という予測を発表したらしい。ただ、燃料電池などで使われる水素が新たにオゾン層を破壊する物質になるのでは、という話もあり、依然として予断を許さない状況なのは確かだろう。

New dinosaur’s keen nose made it a formidable predator, study finds
PHYS.ORG
鋭い嗅覚を持つ肉食恐竜が新たに発見された、という記事だ。恐竜の化石には状態が良く、MRIなどで内部を調べることのできるものがある。頭の上に角を出し、そこを共鳴させる草食恐竜パラサウロロフス(Parasaurolophus)の化石などは有名で、化石内部の構造からコンピュータを使って鳴き声を再現させたことがある。この記事によると、米国ペンシルベニア大学の研究者が、新たに発見された小型肉食恐竜、映画『ジュラシック・パーク』にも出てきたヴェロキラプトルと似た種類の恐竜の頭蓋骨化石を調べた結果、優れた嗅覚を持つことがわかったそうだ。彼らは前方を立体視できる視力も持っていたらしい。間違いなく史上最強の肉食生物だろう。
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パラサウロロフスを襲う二足歩行の小型肉食恐竜Saurornitholestes sullivani。クレジット:Mary P. Williams

Think You Are a Fearless Driver? Think Again before Trying this Insane Bridge In Japan
Wonderful Engineering
あなたが勇敢なドライバーだと思うなら、この日本の橋を撮影した写真を見てみろよ、という挑戦的な記事だ。これは鳥取県境港市と島根県松江市との間にかかる江島大橋。橋の下を通過する船舶の航行に支障がないようにするため、島根県側は6.1 %、鳥取県側は5.1 %という勾配をつけ、最高44.7mの高さまで登る。ただ、撮影の仕方、望遠レンズの効果などで遠近感が圧縮され、極端な急勾配に見えるのは確かだろう。

2015年第1四半期アプリ利用状況レポート:日本を含む5大市場で比較するアプリ利用状況
App Annie
この記事によると、アプリストアとアプリ内広告の収益が一年でともに70%も増加したらしい。モバイルの主要市場(米国、日本、韓国、イギリス、ドイツ)で、ユーザーがどのようにアプリを使っているかを調査したレポートだ。これら5大市場のAndroidスマートフォンの場合、「通信」と「ソーシャルネットワーク」のアプリはセッション数の40%に上がる。また、やはりアジアではモバイルゲームが伸びているようだ。


アゴラ編集部:石田 雅彦