東京都の「区」と「市」の違い、言えますか?

2015年05月15日 22:00

昨日に引き続き、本日も大阪都構想についての解説です。
(大変大きな反響をいただいており、ありがとうございます)


大阪府「ビルつくります!」大阪市「じゃあ、俺もつくるわ!」市民「」-大阪都構想、二重行政を読み解く-
http://otokitashun.com/blog/daily/7363/

大阪都構想は前回紹介したように、政令市である大阪市を解体して5つの「特別区」に分割し、広域自治体である大阪都の下部組織に再編して統治するものです。

この仕組みと同じものが、言わずと知れた「東京都」ですね。
東京都は23区と26の市、5つの町と8つの村で構成されています。

十把一からげに「区市町村」と称されるこれらの基礎自治体ですが、じつは「区」と「市町村」では明確に持っている権限が異なります
「市町村」は規模の差による単なる名称の違いですが、区は別物なのです。

ご存知の方は退屈かもしれませんが、今日はまずこの話から始めましょう。

そもそも23区は戦中まで、23区で一つの「東京市(大東京市)」でした。
それはさすがに大きすぎて非効率、ということで分割統治が始まったわけですが、当初の「区」はあくまで東京都の内部機関であり、ほとんど自治権がありませんでした。

一時は区長の公選制も廃止され、1975年までは公選区長が存在せず、統括する東京都によって多くの機能を制限されていました。
そこから徐々に権限を勝ち取り、拡大してきたのが23区の歴史なのです。

それでもなお現在、市町村などの「完全自治体」と比べて、制限されている機能は一定程度存在します

・徴税権の一部(法人税は東京都に収められ、23区に再配分される)
・都市計画の決定権限の一部(区だけの裁量で建設できない道路、建物多数)
・教員の人事権(東京都が所有しており、教育委員会は二重行政化している)
etc..

特に財源がコントロールできないのは最大の相違で、23区は東京都の存在なくして予算を組み立てるすることができません

簡単に言うと区には「東京都の指示を仰がなければできないこと」が市町村に比べて多いと言えます。

なお、大阪や札幌などの政令指定都市にある「区」は、単なるエリア区分のための名称に過ぎないので、そもそも基礎自治体ではありません。
ご注意を。。

さてここで、大阪都構想反対派の方々がよく引用される、実際に特別区を預かる東京都世田谷区の保坂区長の主張を見てみましょう。

大阪都構想の欠陥 東京23区の現実
http://www.asahi.com/and_w/life/TKY201402050010.html

「特別区は、そこに託される責任に比して財源や権限が不足している」

という彼の主張に、一定の理はあります。
しかしこれを持って

「東京都の特別区制度は上手くいってないではないか」
「東京の特別区も、『東京市』に戻ることを望んでいる!」

と主張するのは、明らかなミスリードです。
保坂区長の主張はあくまで

「世田谷区を世田谷市に(特別区を完全自治体に!)」

とするものであって、大東京市を望むものではありません
人口規模や統治方法から考えれば、その困難さは明らかですから。

また保坂区長がこのように主張するのは、彼が司るのが東京で最大の勢力を誇る「世田谷区」だからです。

確かに特別区制度は完全なものではありません。
二重行政になっている部分もありますし、私自身ももっと基礎自治体に権限を委譲するべきと感じている面はあります。

それでも東京都が「特別区」制度を採用しているのは、デメリットを補うメリットがあるからです。それは具体的には、「自治の原則」と「均衡の原則」を同時に満たせるという点です。

以前から私が主張しているように、東京都にも「南北問題」と言われる格差があります。
それでもハタから見れば同じ「大都会東京」として一定のまとまりと繁栄が享受できるのは、東京都が財源を再配分し、計画を統制するという機能を担っているからです。

身もフタもない言い方をすれば、保坂区長が完全自治体への移行を望むのは財源を持って行かれる側の「裕福な区」だからであって、北区や足立区の区長が同じことを望むとは思えません(残念ですが…)。

東京都が特別区制度を手放せば1300万人からなる都内には今以上の深刻な格差が生じ、一部がスラム化する可能性すらあります。(あくまで「可能性」ですけどもね)

一方で政令市の区と違い、特別区は制限はありながらも「基礎自治体」です。
公選区長や議会が政治的なリーダーシップを取り、与えられた財源や権限の範囲で他区と切磋琢磨をして独自色を出していくことは可能になっています。

わずかな交通アクセスの違いで深刻な経済格差が生まれる都市部において、「自治の原則」と「均衡の原則」を同時に満たせる特別区制度は端的にいって「よくできた制度」の一つであり、大阪都構想で標ぼうするのは当然とも言えるでしょう。


特別区の仕組みについての詳細は、佐々木信夫教授のこちらの論文が詳しいです。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43083

もちろん、繰り返しになりますが、今の特別区制度にも欠陥はたくさんあります。
二重行政の生じている教育委員会制度や、区が手を出せない児童相談所…。

s_agora0515-01

こうした点を「先行事例」として研究した大阪都構想は、特別区をさらに改良したものとして創りだすということですから、このチャレンジにも大いに期待できますし、東京都が変わるチャンスにすらなりえます。

少なくとも制度上は「均衡と自治の法則」によって、大阪市をバラバラにしたり、貧しく格差を広げるものではないことはおわかりいただけたのではないかと思います。

それでは次回は最終回。

「政令指定都市の権限を取り上げるつもりか!」
「他の政令指定都市では問題が起きていないのに、なんで大阪だけ?」
「全体的な制度の見直しが先であって、大阪市だけやる必要はない」

そういった声に回答をすることで、この大阪都構想の真の意義をお示ししたいと思います。

それでは、また明日。

おときた駿 プロフィール
東京都議会議員(北区選出)/北区出身 31歳
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、地方議員トップブロガーとして活動中。

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おときた 駿
東京都議会議員(北区選出、無所属)

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