集団的自衛権から核武装へ --- 井本 省吾

2015年06月15日 11:25

上記のようなタイトルを見ると、極右的な、危なっかしい議論を展開すると思われるかも知れない。しかし、世界の流れは核拡散の方向に向かっている。

中国、インド、パキスタン、イラン、イスラエル、サウジアラビア……。過去10~20年を見れば、隣国の不穏な動きに対応すべく、自らも核武装するという国家が燎原の炎のように広がっている。

はっきり核保有を宣言せず、秘かに所有、ないし所有に向けて開発、輸入を始めている国家も含めて、という話だが、「ISIL」(イスラム国)のような国家ではない過激なテロ集団の核武装の話さえ出ている。

NPT(核拡散防止条約)体制はヒビ割れ状況なのだ。核保有国は口では「核廃絶」を唱えながら、一向に廃絶する気配はなく、非核保有国を守る体制もおぼつかない。

そこへ持ってきて、最大の核保有国にして「世界の警察官」を任じてきた米国がその立場を降りようとしている。非核保有国の不安は高まり、ならば「自主核武装を」という動きが高まっているのだ。

実は、お隣の韓国にその気配が濃厚なのだ。鈴置高史・日本経済新聞社編集委員がNBオンラインに連載している「早読み 深読み 朝鮮半島」がその事情を詳しく解説している。

核抑止論が専門の矢野義昭・拓殖大学客員教授(元・陸将補)との対談形式で、6月11日号が「米国も今度は許す? 韓国の核武装」、同12日号は「10年後には北朝鮮がもう1つ?」という内容だ。

それによると、米国は以前と違って、北朝鮮が本格的に韓国に攻め込んで来そうになったら、在韓米軍は(後で戻ってくるものの)いったん引き上げ、戦闘の先陣は韓国軍に任せるという考えになって来ている。矢野氏によると--。

米国が絶対に避けたいのは2つ。まず、中国との核戦争に拡大する恐れのある紛争に巻き込まれること。もう1つは大規模の地上兵力を長期に派遣すること、です

となると、核兵器を保有する北朝鮮に対抗するために、韓国は核武装を考える。

現に、韓国メディアにはそうした考え方が急速に台頭している。

以前の米国ならそんなことは絶対に許さなかった。だが、警察官の立場を降りようとしている今は、韓国がその気になったら核武装を黙認するだろうと、矢野氏は推測する。

というのも、東西冷戦下の1960年代、フランスや英国などヨーロッパ諸国が米国の核の傘を信用せず、独自の核武装を進めた歴史があるからだ。米国の「警察力」や核の傘に不安が出ている以上、北朝鮮や中国の核武装に対し、アジアの同盟国が核武装をしてやむを得ないと考えるのが自然なのだ。

とすれば、中国や北朝鮮の核の脅威が高まっている今、米国は日本の核武装をも認める可能性が高まっている。

広島と長崎に原爆を投下した歴史を持つ米国は復讐を恐れて、日本にだけは核兵器を持たせないという強い意志を持っている。だが、その辺も揺らいでおり、もし日本がドイツ(旧西ドイツ)方式の核シュアリングを提案したら、受け入れる公算が大きいともいう。

矢野 西ドイツは米国が自国内に配備した戦術核の使用に関し平時から訓練しておく。緊急時には米大統領の承認を得たのちに核兵器を譲り受けて使用する権利です。「核の引き金」は米大統領が握っているので真の「シェアリング」とは言えず、象徴的な権利に過ぎません。それでも西ドイツは、緊急時には核を使える可能性を確保したのです

日本の場合、中国や北朝鮮の先制核攻撃を受けても、位置を発見されにくい原子力潜水艦の導入が有効だという。「もし我が国を核攻撃したら、潜水艦から核で報復するよ」という抑止力が利きやすいからだ。

矢野氏は、日本の場合、尖閣領域や沖縄が中国の攻勢にさらされても、米軍が全面には立たず、日本が先陣に立つ可能性が高いともいう。

有事の際は中国のミサイルの集中攻撃を避けるため、在韓米軍も在日米軍もいったんは後方に分散退避することになっています

背景には、中国の中距離以下のミサイルの増強があります。その脅威から逃れるため、米軍はグアム以東に後退します。米国の一部シンクタンクは、米軍が反攻に転じるのは1カ月以上先になると見積もっています

2015年4月に18年ぶりに改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、日本有事の作戦構想から地上作戦時の「極力早期の兵力来援」や、米空海軍による「打撃力の使用を伴う作戦」を示す文言は抜け落ちました

そして、次のように、不気味な予想を立てる。

今、南シナ海で米中のつばぜり合いが激しくなっています。もし、中国の人工島の埋め立てを米国が阻止する力を見せないと、中国は「米国弱し」と見て台湾や沖縄でさらに強気に出てくるでしょう

そのためにも、抑止力として日本の核武装の必要性が高まっている。核武装することが中国の危険な挑発を防ぐことになるのだ。

それに、ただでさえ反日的な韓国が核武装したら、韓国自身が対日攻勢に転ずる危険性だってある。「対馬は韓国のものだ」と言っている韓国人も少なくないのだから。

核拡散は危険である。「核の均衡」が相互抑止力を高める反面、実際に核戦争になる危険性が増すのは確実だ。
だが、核拡散が現実化している今、日本だけがお題目のように「核廃絶」を唱え、何もしなければ、安全保障が保てない時代に入りつつある。その現実を自覚しなければなるまい。

その前提として集団的自衛権の行使容認は当然で、同自衛権が憲法違反かどうか、と国会で議論している平和ボケの現状は完全に周回遅れの感がある。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年6月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。


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