「ハルモ二の恨」を利用したのは誰か --- 長谷川 良

2015年06月27日 14:55

韓国の尹炳世外交部長官(外相)は24日に聯合ニュースのインタビューに応じ、日韓国交正常化50周年の記念行事を期に日韓の関係修復に意欲を示したが、その中で、慰安婦問題に対して、「被害者のハルモニ(おばあさん)の恨(ハン)を晴らすことが必要」と訴え、薬の処方に喩えて、「慰安婦被害者問題においても、細かい分野で痛みを和らげる効果がある処方にならなければならない」と答えている。

外相は「ハルモニの恨」を晴らさなければならないというが、韓国政府はそのためにこれまで何をしてきたのか。ソウルの日本大使館前に少女像を建て、米国にも慰安婦少女像が建てられたが、それで「ハルモニの恨」が本当に晴らされると信じていたのか。それとも、「ハルモニの恨」は日本側が晴らさなければならない問題と考えてきたのだろうか。

われわれは隣国を選ぶことは出来ない。同時に、どの国に生まれるかも選ぶことはできない。ハルモニのことを考えてみよう。生まれた国が日本に併合された韓国だった。慰安婦とならなければ生きていけなかったハルモニには恨があったかもしれない。しかし、終戦を迎え、多くのハルモニは解放された。その段階で、ハルモニは慰安婦であった人生に終止符を打って新しい人生を歩み出したはずだ。当然、慰安婦であったことなど誰にも告げず、生きていこうとしただろう。彼女たちの家族も同様だろう。娘たちが過去を忘れて新しく出発してくれることを願っていたはずだ。

そこに旧日本軍の慰安婦問題が韓国の政治議題となって浮上してきた。そして慰安婦として政治の舞台や集会に呼び出され、その恨をもう一度想起するように強いられてきたのだ。

外相は、「ハルモニは自身の過去を世界に証言したいと願っている」というが、本当にそう考えているのだろうか。どの国の慰安婦がその過去を公の場で語りたいだろうか。彼女らは本来、静かに余生を過ごしたかったはずだ。しかし、韓国側は反日攻撃の武器として慰安婦問題を活用してきたのだ。時間の経過と共に癒されつつあった「恨」に塩を摺り込み、目覚めさせた張本人は韓国政府だったのではないか。

繰り返し聞きたい。韓国政府は過去70年間、「ハルモニの恨」を晴らすためにどれだけの努力を払ってきたのか。もし、「わが国はハルモニの恨を十分晴らしてきた」と主張するのなら、日本側に慰安婦への経済的支援を求める必要などないはずだ。

国民の幸せに対して、国側が先ず責任を担う。慰安婦の幸せ、恨を晴らす最初の責任は韓国側にある。外相は、「細かい分野で痛みを和らげる効果がある処方にならなければならない」と答えている。韓国側が恨を晴らす処方箋を熟知しているのならば、どうして彼女たちの恨みがこれまで晴らされなかったのか。韓国側には十分な時間があったはずだ。

朴大統領は今月、ワシントン・ポストとのインタビューの中で、「慰安婦問題の協議は最終段階に来ている」と述べたという。この発言は慰安婦問題を国主導で推進してきたことを半ば認めたようなものだ。慰安婦問題とは、「ハルモニの恨」云々ではなく、対日交渉で有利な状況を勝ち得るための政治道具だったことを、朴大統領の発言は図らずも明らかにしているのだ。「ハルモニの恨」を晴らすことが主要関心事なら、「慰安婦問題の協議が最終段階に来ている」とは絶対に表現しないだろう。「恨」には最終段階や初期段階など存在しないのだ。

日本側は過去、「河野談話」、「村上談話」などを通じて謝罪を表明してきた。そして、「アジア女性基金」を創設して慰安婦救済に乗り出してきた。慰安婦たちもそれを聞いてきたはずだ。
一方、韓国では、慰安婦問題で日本側から謝罪を勝ち取りたいという誘惑に駆られてしまう政治家が余りにも多いのだ。これは韓国の「政治の後進性」を示すものだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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