ギリシャの最終章

先週の日本の株式市場はギリシャ問題に楽観的見方が台頭したことで日経平均は500円以上上昇、良い雰囲気で週を終えました。大嵐の中国については27日に利下げを決定した為、通常であれば月曜日の上海株式市場は急騰するはずです。

が、このブログを書いている日本時間の日曜日の早朝に於いてギリシャの楽観視は悲観視に変りつつあり、これから24時間以内にポジティブな展開が期待できないと世界市場に大きな不安感が漂うかもしれません。

ことが動いたのはチプラス首相が7月5日に国民投票をし、その声を反映させるから6月末期限を数週間延ばしてくれ、と唐突に発言、ギリシャ議会でその審議をしたからでしょう。ユーロ圏はこれに対して猛反発。理由は国民投票の結果、トロイカにとって不都合な結果が出れば極端な話、今までの努力は水の泡と化すからであります。

ギリシャがトロイカに負っている債務は国民が決めるものではない、政府が決定するものである、という視点に立っていますが、見方を変えればトロイカはそんな結果は見たくない、聞きたくない、影響を受けたくないという完全拒否であります。

最新の情報では27日(土曜)に開催した緊急の19か国財務相会議でユーロ圏はギリシャの支援について6月30日から先の延長はない、と決定しました。つまり、ギリシャが作り上げようとする新たなギリシャ神話はおとぎ話と化したわけです。考えてみればユーロ圏はギリシャ問題に2009年から実に6年も付き合わされています。ユーロ圏のトップ、および財務大臣らはどれだけギリシャ問題の為に時間を費やし、前向きに検討したか分かりません。それでもユーロ圏はギリシャがとん挫することだけはどうしても避けなければならない理由もあったわけです。

では仮にこの先、大どんでん返しもなく、6月30日を迎えるとどうなるか、でありますが、基本的に破たんですからギリシャの銀行はモラトリアムするのが通常の対策となります。つまりギリシャの銀行からユーロの流出を防ぐために一定期間金融機関や金融市場を閉鎖します。日本でも関東大震災の時と昭和恐慌の時に行ったことがあります。過度の金融市場の不安定が生じた時だけに行われる特殊な対策です。

モラトリアム期間中にギリシャ政府は市民生活を安定化させるための対策を練るはずですが、政府の借用書であるIOUや場合により配給券の発行もあり得るでしょう。特に25%に及ぶ公務員、および50代から貰える手厚い年金生活者には厳しい状態が待っているかと思います。

私はポーランドが1981年末に戒厳令を布告した際に同国にいたことがありますが、とにかく食べるものが何もなくてひもじい思いをしたことはよく覚えています。イモしかなくて肉もパンも手に入らずでした。破たんするとはこういうものか、としみじみと感じたのですがギリシャもそうなるのでしょう。

但し、ギリシャの場合にはアングラ経済が活性化し、国が病む公算の方が高い気がします。

ではユーロ側はどうするか、ですが、ギリシャのユーロからの離脱をそう簡単に認める気はないでしょう。債権者として紐つきにしておくことは非常に重要な債権回収手段です。

多分ですが、チプラス首相は責任を取って辞任しますから総選挙の結果で新政権との破たん後の交渉を進めることになるでしょう。勿論チプラス氏が再選されないとは限りませんが、ギリシャ国民もいい加減に目を覚まさないと今日のパンならぬ今夜のスーヴラキが手に入らなくなります。

個人的には解決してほしいと思っておりますが、チプラス首相は反緊縮で当選した首相ゆえに解決させる手段を持ち合わせていないという事なのかもしれません。ここから数日はギリシャから目が離せません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月28日付より