ギリシャはどんでん返しの最終章、そして続編へ

東野圭吾氏の小説は最後の数ページに大どんでん返しが隠されていることが多いのですが、ギリシャの最終章も予想を覆したどんでん返しとなり小説は続編へと持ち越されることになりました。正直、私もびっくりを通り越して唖然としております。

もしも私が勝手な想像を繰り広げるとすればギリシャ国民は厳しい生活の中でチプラス首相の強い姿勢と口調に酔ってしまったように思えます。かつて戦争が起きた時、その指導者たちは国民に強く立ち上がることを訴え、そして国家は燃えました。それは現実の世界から遊離した世界で繰り広げられるのであって冷静な判断を当事者に求めるのは難しいものです。だからこそ、チプラス首相が突如国民投票を持ち出した時、EUの首脳は大きな抵抗を見せたのだろうと思います。

今、この状態で国民に問うにはあまりにも酷である、そしてわずか数日しかない時間の中で国民に冷静になり、考え、判断させようとするにはあまりにも短すぎた気がします。それ以上に本問題の解答を国民に問う性質だったのかという根本的疑問もあります。トロイカとの複雑怪奇で日々刻々と変る諸条件を国民に均等に理解してもらい、将来を判断してもらうことを国民にゆだねたのは政府の責任回避であると思っています。

しかし、このような判断が下された以上、続編がどのようになるのか、再び振り出しから考えなくてはいけないでしょう。唯一分かっていることはギリシャは実質的にデフォルトであり、その宣言がいつあるかもしれないということです。更にはサムライ債の満期も間もなく来るわけで今後はどこからデフォルトコールが出るかも分からない状態になります。

EUは緊急流動性支援(ELA)という酸素補給を目先、続けるのかもしれませんが、栄養分の補給はどうなるかわかりません。いや、EUは契約社会としてもはや、合意が遠く、且つ、どれだけ注入しても回復の目途がないかもしれないギリシャ財政にELAという酸素補給すら止める可能性がないとはいえません。

EUは二つの面から対策を考えなくてはならないでしょう。一つは交渉合意の困難性が数段上がった舞台で更に合意を探る努力を続けるのか、そしてもう一つは政治的にギリシャを見放す判断を下せるのか、であります。

北米流のドライな見方からすれば更なる継続的な交渉の意味合いは検討する必要があります。ボトムラインとしてはユーロからの離脱を認めた場合、他国への波及をどう食い止めるのか、そのためにはギリシャにどのようなペナルティを化すことで離脱の鞭を見せつけるのか、このあたりではないかと思います。

考えてみればギリシャはヨーロッパの中では小国であり、成績の悪い手のかかる子でありました。そして国民投票でも改心が見られなかったことで退学扱いにするには十分な世論を説得する理由が存在します。

金融市場は確かに一時的な動揺をするかもしれません。しかし、ギリシャのユーロ離脱のうわさはかつて浮かんでは消え、浮かんでは消えていたものが現実化しそうだという割り切りで見れば吹っ切れたと前向きに捉えたいところです。

EU首脳会議が7日にも開催される見込みのようですからその時のステートメントがまずはこの続編の方向性のベースラインとなることでしょう。どちらに転んでも今、ユーロ圏にとって歴史的事態に直面していることは間違いありません。最後に、チプラス首相が国民投票を持ち出す直前にほぼ合意が見えていたところまで来ていたことは記憶に留めておく必要があるでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょうl。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 7月6日付より