6月FOMC議事録、ギリシャと中国に懸念表明 --- 安田 佐和子

2015年07月09日 14:04

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6月16~17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表されました。声明文で景況判断を引き上げながら経済・金利見通しでややハト派寄りだったところ、議事録では情勢が悪化する以前にギリシャや中国動向に懸念を表明。9月利上げの可能性を残しつつ、正常化に急いでいない様子もにじませています。FOMC議事録のポイントは、以下の通り。

▽利上げをめぐる協議
・多くの参加者は、6月に利上げを開始するにあたって条件を満たしていないと判断
・多くの参加者は、6月利上げが時期尚早と認識
・1人の参加者は6月利上げを求めつつ、1~2回の据え置きを容認できるとの見解も示す。
・多くの参加者は利上げ正常化を決断する基準で意見収束がみられたと強調、成長やインフレの進展を見極めへ
・数人の参加者は経済動向が利上げに適う、あるいはまもなく適うと認識
・上記の数人の参加者は利上げ後ろ倒しのリスクとして、利上げペースの加速を挙げる

▽経済動向
・経済動向と労働市場のリスクは概ね均衡も、参加者は多くの要因が見通しを慎重にさせると判断
・インフレ目標値2%を達成できないリスクを懸念
・雇用コスト指数、時間当たり賃金などに賃金上昇の気配
・労働生産性が低迷から脱却できるのか、生産性が上昇しても雇用の伸びを抑制する懸念も
・労働資源の活用不足につき数人が年末に終焉を迎えると予想しつつ、複数が既に減退したとの考えを表明

▽海外動向
・複数の参加者はギリシャ支援協議、中国をはじめとするエマージング経済の進展を憂慮
・多くの参加者は、ギリシャ支援協議決裂による米国市場へのスピルオーバーを懸念

▽ドル高、原油安
・ドル高と原油安が落ち着き、インフレの下方圧力を払拭

▽金融市場
・米10年債利回りの上昇、独債につれたもの
・ギリシャ問題やユーロ圏のインフレ上昇で、ターム物プレミアムが上振れ
・ギリシャ支援協議の影響で株価が下落も、日本と中国は例外

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番であるジョン・ヒルゼンラス記者による「Fed、海外の混乱を受け利上げにためらい(Global Tumult Gives Fed Some Pause on Rates)」との記事を配信。ギリシャや中国という不透明要因に加え米経済の鈍化も意識し、利上げ開始を9月以降へずらす可能性があると伝えた。ヒルゼンラス記者はギリシャが国際通貨基金(IMF)への債務延滞を決めた6月30日に続き、9月利上げに否定的な見解を寄せている。

BNPパリバは、議事録を受け「ギリシャ協議物別れや中国の動向をすでに不安視しており、今回初めて利上げ開始を協議したものの正常化に急いでいない様子が伺える」と指摘。何より、6月以降「ギリシャ債務危機や中国株安など海外要因から派生すリスクが高まり、米6月雇用統計も失望を誘う内容」だった。従って「見通しに対する自信は薄らぎ、年後半恐らく12月の利上げが妥当」と見込む。

一方で、バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミストは、議事録の内容を受け「労働市場とインフレが回復基調をたどるとの当方の見通しに整合的で、海外要因はこうした予想に深刻な影響を与えるとは想定していない」とのコメントを寄せた。特に、労働市場に対し「完全雇用に近づいていると発言したフィッシャーFRB副議長の認識を反映している」と指摘。利上げ開始予想を「9月」で据え置いた。

——6月FOMC議事録は、ギリシャ債務危機や中国株安という波乱に見舞われる前から慎重姿勢を打ち出していました。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁(投票権あり)も8日、「インフレが望ましい道筋にあるという証拠を確認する前に行動することを警戒している」と発言。年内利上げの可能性に言及し、「利上げ開始まで時間を掛け過ぎた場合はリスクを充てる」と述べながら、以前より明らかにハト派寄りへシフトしています。やはりFedは、9月利上げを諦めてしまうのでしょうか。10日にはイエレンFRB議長が「景気見通し」について講演し、質疑応答も予定するため必見です。

(カバー写真:FRB/Ustream)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年7月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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