「真田丸」は難破せずに大河を順調に航海できるのか

2015年07月12日 22:00

どうも新田です。小学校2年からほとんどの大河ドラマを観ておりますが、今年の「花燃ゆ」はイマイチ過ぎてすっかり観なくなり、テコ入れがあると聞いて久々にちょっと見てみたら、なんちゃって「大奥」になっていて呆然、視聴率がどこまでどん底になるのか激しく傍観しているこの頃です。それで来年の大河「真田丸」を早く観たいわけなんですが、先日の主要キャスト発表で出てきた情報を観ていて、取りざたされた「国民の大河離れ」も一段落するのではと思った次第です。


真田幸村イメージ
■定説「戦国ものは幕末ものより当たる」は本当か?
まずは過去の傾向からの占いです。昔から「大河は戦国ものが当たるが、幕末は当たらない」と言いますが、それが本当なのかしらというわけで、歴代作品のビデオリサーチ社の視聴率(関東地区)から「戦国」「幕末」ごとの平均値を出してみましたよ。エクセル苦手だし、面倒くさかった末のグラフはこちらです。
大河グラフ1
やっぱり総じて幕末は低いですね。
ただ、このあたりは昭和期と平成期で、視聴者を取り巻く環境の変化、すなわちドラマに感情移入するにあたっての社会背景も考慮しないといけないとは思います。「八重の桜」のオンエア前にも書きましたが、バブル崩壊前まで比較的経済が安定していた時期は、武家社会から近代国家へのレジームチェンジが描かれるというストーリーにシンパシーを感じにくいのかもしれません。一方で平成期は日本の国力が衰退し始めて、構造改革だの、シルバーデモクラシーだの、終身雇用制崩壊だの言われてきておりまして、2000年代以降の平均視聴率を比較してみると……。
大河グラフ2
さほど差は無いんですよね。NHK側も過去の「幕末は当たらない」という定説にビビったんでしょうか、1998年の「徳川慶喜」と2004年の「新選組!」の間で6年もインターバルがあり、2000年代の16作品中では戦国ものが8本に対し、幕末ものは5本と差はあるんですが、局側が萎縮するほどの差ではなかったわけです。

まあ、大河が国民的ドラマじゃなくなったからという全体的なシュリンク傾向もあるでしょうし、若い女性視聴者を開拓した「篤姫」のように企画とマーケティング次第で、時代に関わらずヒット作品を生み出すことは可能なのだと思います。

■「真田丸」大きな期待とひとつの懸念
その意味では、三谷さんの脚本とNHK製作陣の企画がどれだけシナジーを発揮するかがカギになるわけですが、スポニチの報道によりますと、これまでの大河の英雄一代記にありがちだった序盤は子役が少年時代を演じるような展開ではなく、堺さんが初回からずっと登場されるそうです。三谷さんといえば、映画「清須会議」で信長の跡目を巡り織田家中で蠢く策謀をコミカルテイストを交えつつ、人間味あふれる描写が秀逸だったのですが、ああいう、短時間の“密室”に濃縮された人間ドラマを描く主義。総花的に歴史ストーリーを描くのは好まれないそうなので、初回から幸村を中心とする物語を、それこそ毎回ある1日に絞って一流の武将へと成長するプロセスを濃密に描いていくのではないかと思われます。その意味では、比較的スムーズに視聴者サイドが物語に感情移入しやすいという効果もありそうです。


また、幕末以上に、戦国ものの方が、ファンタジックかつ活劇要素を盛り込みやすいという点で、三谷さんは筆を振るいやすいような気もします。「新選組!」放映開始の頃だったかトーク番組で歴代の大河作品で「黄金の日々」が大好きだったとおっしゃっていたあたりからも、どんな作品を作ろうとするのか期待できます。「黄金の日々」は私が物心つく前の作品なので、一度ツタヤでDVD全巻借りて見たのですが、大航海時代の視点から切った戦国絵巻をダイナミックに描き、そこに若き日の松本幸四郎さんや、円熟の極みだった鶴田浩二さんたちの名演技で惹きつけられました。


ひとつだけ懸念があるとすれば、一部の戦国ファンが指摘もしているように、実在の真田幸村という人が歴史の表舞台で大活躍したのが、最後の大阪の陣くらいで「過大評価ではないか?」という冷静な指摘もあります。青年期は上杉家や豊臣家での人質生活ですし、徳川の大軍を破った2度に渡る上田城合戦も昌幸パパの軍配に寄るところなわけで、家康の首まであと一歩と迫った壮絶な最後の合戦の印象があまりに強くなっているために、「信長の野望」で統率92とか武勇99とか、スーパー武将扱いになっているところがあります。

そうなると関ヶ原に至るまでの段階で、どういう成長ストーリーを描いていくのが最大のカギのように思えるんですが、三谷さんが「新選組!」の折に「教科書で書いていないからといって間違った史実ではない」的なコンセプトの下、近藤勇と龍馬が無名の若い頃はお友達として顔を合わせていた的な、やりたい放題があまりに繰り広げられてしまうと、コアな歴史好きの視聴者がしらけてしまったり、あるいは「大河ドラマは学校の歴史の授業でも教材に使われるものだから」的な教育方面からのお叱りを受けてしまったりする懸念もありますが、フィクションと史実の間で絶妙な折り合いをつけられるのかもポイントになりそうです。

■三谷さんの凄みに期待します
それにしても三谷さんって本当に面白い方ですね。
記者会見の折は報道陣に混じって「壁新聞の記者」を名乗って俳優陣に質問もされていたそうで(笑)大泉さんとの丁々発止なやりとり、楽しい雰囲気が伝わってきます。

質疑応答の終盤では、記者席にこっそり座る脚本の三谷幸喜氏(53)が出演者に質問を浴びせる場面も。予定外の挙手で指名され、「西日暮里壁新聞の三谷と申します。大泉さんに!」と質問を切り出した三谷氏に大泉は「時間ないから打ち切ってください!」と爆笑。それでも三谷氏は「戦国武将を演じるということですごく意気込んでいるとお聞きしたんですが、一年間、ふんどしを絞め続けるというのは本当ですか?」と質問を続行。大泉は「そんなことはありません」とちゃんと回答しつつも「壁新聞の方ですか?壁新聞の方をどうして入れるんですか?なんだ、あの人。だったらコッチ座ればいいじゃないか。会見中も僕を見てやれ!みたいな顔して鬱陶しいんだよ!」と不満が止まらず、会場は笑いに包まれた。(スポニチより)

実は私も社会部の記者時代に映画祭の取材で三谷さんと一度だけお会いしたことがあるのですが、照れ隠しでギャグをジョブ的に繰り出すあの飄々とした語り口。あれカメラが回っていないところでも全く変わらないんですよ。楽屋で繰り広げられるトークはステージやテレビで披露されるのと同じくらい軽妙で笑わせてもらいつつ、改めてすごい人だなと思いました。「真田丸」期待しております。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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