日韓は“フェアな過去”を作ろう --- 長谷川 良

韓国では新しい為政者が登場する度に、「日韓の両国関係は未来志向でいくべきだ」と発言する。その度に日本国民は、「やっと過去問題から解放されて、新しい関係が樹立できる」と受け取ってきたが、隣国の国内情勢が厳しくなると、その為政者は日本の過去問題を争点化し、国民に媚を売るのを日本国民は何度も目撃してきた。最近では、李明博前大統領の豹変ぶりは特出していた。

そのような歴史が繰り返されてきたので、韓国の政治家が、「日本とは未来志向で……」と発言したとしても、日本国民はもう何の感動も湧いてこなくなった。「ああ、そうですか、どうぞご自由に」と白けてしまうだけだ。

当方もそんな日本人の一人だったが、「未来志向の関係」という言葉の意味がここにきて分かってきたのだ。21世紀の日韓は、「国際社会にどれだけ貢献する国となるか」を競う関係こそ「未来志向の関係」という意味だったのだ。

「過去のあの時、こうだった」とか、「迫害されてきた」といった類のテーマに時間を注がず、世界の紛争解決や開発途上国の開発援助にどれだけ貢献したかの競い合いこそ、日韓両国がエネルギーを投入しなればならない課題だ。

それでは現時点で日韓両国の国際貢献度はどうだろうか。当方が日本人だから言うのではないが、日本は貢献度レースでは韓国に圧倒的に先行している。簡単な例として、ノーベル賞受賞者の数だ。物理学、化学、医学生理学などの分野で日本人学者はノーベル賞を受賞済みだ。ノーベル賞を受賞するということは、その分野で国際貢献を果たしたことを意味する。
一方、韓国は、数億ドルを北朝鮮の故金正日総書記にプレゼントしてその代価として実現した南北首脳会談が評価されて受賞した故金大中氏の平和賞1つだけだ。明らかに、韓国は日本に大きく水をあけられている。

政府開発援助(ODA)の支出額や国連への救出金では韓国は日本より大きく遅れている。世界が日本人を好ましく受け取り、一定の尊敬を払うのは当然の結果だ。国際社会への貢献度が高いからだ。

誤解を恐れずにいえば、国際社会は日韓両国間の過去の問題など余り関心がないのだ。戦時の慰安婦問題や植民地時代での強制労働といった問題は、日本よりも欧米諸国がいち早く体験済みだ。日韓両国がそんな問題で争うのをみて、欧米諸国は「時間とエネルギーの浪費だ」と受け止めたとしても不思議ではないだろう。

国際社会は世界の紛争解決や開発支援で貢献する国に対しては尊敬を払う。過去の問題を取り上げて中傷、誹謗しあっても、国際社会から歓迎されることはないだろう。

繰り返すが、日韓両国以外の国にとって、日韓両国が国際貢献でフェアな戦いを演じてくれたほうがどれだけ頼もしいことだろうか。未来もいつかは過去になる。「未来志向の関係」とは、次の世代の為に“フェアな過去”を積み重ねていくことではないか。そして、フェアな過去が悲惨な過去より少しでも長くなれば、それだけ日韓両国間は喜ばしい関係となるのではないか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年7月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。