教師も迷うよ、通知表のつけ方

2015年07月20日 10:00

教師のもっとも憂鬱なシーズン
学期のこの時期になると教師は憂鬱である。子どもたちに通知表をわたさなくてはならないからだ。
通知表と言えば、5とか4とか書いてあるやつね、とお思いの方も多いと思うが、それだけなら話は早かった。

通知表

所見といって、子どもたちを評価する文章を大量に書かなくてはならないのである。
所見は、学習指導要領の改定とともに、(教師にとって)難易度が高いものとなっていった。以前は「教科の学習について特記すべき事項がある場合に記入」だったものが、さいきんでは「児童生徒の状況を総合的にとらえる。その際,児童生徒の優れている点や長所,進歩の状況などを取り上げることを基本となるよう留意。学級・学年など集団の中での相対的な位置づけに関する情報も必要に応じ記入」となった。

書き手と受け取り手の興味がちがう
そしてここにつかわれる言葉をえらぶのがまたたいへんなのである。たとえば、

落ち着きがない等少しでもネガティブな表現はタブー。「わがまま」→「好奇心が旺盛」、「目立たない」→「まじめ」に変換。(クレームになるから)
がんばってくれましたなどの使役表現はNG。(子どもは主体的でなくてはならないという建前から)
でもなるべく具体的に書かなくてはならない。(ゆえによくわからない些末な事象が記される)
「子ども」は「子供」じゃないよね。「友だち」は「友達」と書くんだよね。(なにが基準なのかわからん)

そして、読み手にはわからないが、非常なこだわりが凝縮されているのである。
「国語で主体性があると書いてあるが、○○さんはほんとうに主体性があったのか?」「あの作品への取り組み方は、せいぜい努力したと書くのが精いっぱいなのではないか?」と当事者ですら判断しかねる内容まで検討される。

一太郎、ワードが導入されるに至り、文字数も増えた(なぜか活字になってから読む気がなくなったという保護者が少なからずいる)。また、管理職もクレームを恐れ入念にチェックするようになる。子どもや保護者が読んでもぜったいに気づかない些末な表現にまで。「評価基準(自治体などで定めている評価マニュアルの類)にはどのような表現が使われているんだ?」と。このデバッグのためにサービス残業は膨大なものとなった。

こんなに苦労して書いてるのに!
しかし、子どもや保護者にわたせば、評価(観点別学習状況という)でAの数がどうだったとか、Cがついてなくてよかったとか、そっちのほうが当然気になって、そちらほどは所見は見てもらえないようだ。しかも所見じたいも、管理職や主幹教諭、学年主任が手を加えすぎていて、いったい誰のことを書いているのかあまりにもわからなくなってしまっているのだ。
また、所見に力を入れ過ぎるあまり、肝心の観点別学習状況の印刷が他の児童ととりちがっていたり(それなりにできる子にCが大量についているとか)、出席日数がちがっていたりと客観的に見て保護者でもおかしいということがわかることが見過ごされたりすることがしばしばある。(管理職は所見の表現には口を出せるが、個々人の評価まではわからないから)

絶対評価ってなに?
そして、その観点別学習状況のつけ方も微妙なのである。絶対評価という建前がある。しかし、具体的な評価基準など設定しようもなく、みんななんとなくつけ終えてから、となりのクラスの担任と「Aの人数、多すぎなくないか?」と調整がはいるので、結局は相対評価になるのである。

また、私はなるべく主観的な判断をしないで評価をしたいので、テストを最重視しているのだが、それをすると、ベテランの女性教諭などから、「ちゃんと子どもを見ていない、がんばりもきちんと反映させてあげないとフェアーじゃない」とどこがフェアーなのかわからない物言いが飛んでくる。でもその女性教諭が、電話で保護者に成績の根拠の説明を求められて「ノートとか態度とかがんばりを考慮してるんですよ~」と苦し紛れに釈明しているところを見ると、主観なんていれるもんじゃないなと思う。(彼女はそのために、子どもの行動をものすごくノートに記録しているところが、また残念なところである)

あと当然ながら、本人は公平に成績をつけていると思っているが好き嫌いで評価をつけているのではないかと思われる事例も多々ある。(にんげんだもの)

電話(クレーム)が怖いよ
ゆえに、通知表をわたした日は、教師は電話がこわい。保護者から間違いの指摘やクレームの電話がかかってこなければ、胸をなでおろす。
このようにして、無事学期を終えるのだ。

どうでしょう?つける側の事情もわかれば、通知表の見方も少しはちがったものになってくるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。

中沢 良平(小学校教諭)

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