デモに参加したら就活できないの?と思った時に読む話 --- 城 繁幸

今週のメルマガの前半部の紹介です。
最近、政府の進める安保法案に反対するデモが各所でちらほらと行われています。近年のデモというと暇な高齢者しかいないイメージがありましたが、今回は一応学生も参加しているようで、メディアなんかも積極的に取り上げているようですね。

一方、社会人の側からは「そんなデモに参加すれば、あとあと就職活動で後悔することになるぞ」という忠告も一部で聞こえてきます。確かに「学生、デモ」と聞くと、60年代の学生運動や一連の過激派事件を連想する人も少なくないのは事実です。

果たして、デモに参加すると企業側のブラックリストに載ってしまうのでしょうか。そもそもブラックリスト的なものは存在するのでしょうか。企業と人材の関係を理解するいい機会なので、簡単にまとめておきましょう。

デモに参加すること自体にデメリットはないけどメリットもない

結論から言うと、デモに参加すること自体、今のところは就活にぜんぜん影響しません。というのも、良くも悪くも安保関連のデモなんてマイナーな存在だからです。

一日中PCの前に張り付いて天下国家を語る草莽の志士と違い、第一線で働くビジネスマンは誰がどんなデモに参加してるかなんていちいちチェックしないし、そもそもシールズなんて知らない人も多いでしょう。

だから、安保に限らず、今のところ日本で行われているデモで参加したいと思うものがあれば心置きなく参加すればいいでしょう。今のところデメリットは無いというのが筆者の意見です。

ただし、そうしたデモに参加しているという事実は、面接では口にしない方がいいでしょう。理由は、それを言ってしまうと結構なマイナス評価につながる可能性があるからです。そうなる理由は以下に述べます。

過去30年ほど振り返ってみると、今回と似たような議論というのは何度も存在しました。たとえば91年の湾岸戦争時における機雷掃海目的の海上自衛隊派遣、そして92年のPKO法案等がそうです。そのたびに「軍国主義復活を許すな!」「戦前の日本に戻すな!」と言って反対し続けた人たちがいますが、21世紀の現在も、日本は軍国主義にもなってないし戦前に先祖返りもしていません。

それぞれの反対運動は説得力に欠け、運動は広汎に広がることなく、半年もたてばきれいさっぱり社会から消えていったものです。そして、今回の安保反対運動のバックにいるのも、そうした「歴戦の敗者」たちです。

要するに共産党にせよ社会党にせよ、彼らは論理的にとっくに破たんしていて新たな社会の在り方を政策的に落とし込むことが不可能なので、なにかしらイベントのたびに危機をあおることで存在感を演出しているだけなんですね。要は左翼ビジネスの一環というわけです。「民主主義の危機だ!」とか叫んでる人もいるようですけど、危機なのは彼ら化石左翼の存在そのものというわけです。

さて、企業の入り口で学生を審査する立場の諸先輩方は、上記のような憐れむべき現実をこれまでの人生でいやっちゅうほど見せつけられてきているわけです。そんな相手に、ボロ雑巾みたいな左派のロジックを開陳して「これすごいですよ!今の日本は大変なんですよ!」って言ったとしたら、普通の面接官ならどう思うでしょうか。

筆者の感覚で言うと、その学生の資質に深刻な疑問を抱くビジネスマンの方が多いように思います。恐らく、情報収集のアンテナがとても低いか、偏っていて、なおかつ自分の頭で論理的に思考する能力に欠けていると判断されるはず。

まれに「自分の頭で考えるのが重要だから、彼らは正しいんだ!」みたいなわかったようなことをいうオッチャンもいますけど、二十歳過ぎてんだから自分の頭で考えるなんて当たり前の話で、重要なのは自分のオツムで考えた結論に決まっとるでしょう。

もちろん、筆者自身とその周辺が偏っているだけかもしれませんね。企業によっては「その通りだ!安部ファシスト政権を共に打倒しよう!民主党政権時は本当に良かったし!」なんて共感してくれる面接官もいるのかもしれませんね。筆者は一人も会ったことないですが。

というわけで、デモ自体に参加するのは全然問題ないけれども、あまり積極的に企業に対してはアピールしない方がいいだろうというのが結論です。

最後に割と真面目にアドバイス。
無色無臭な新人をゼロから育てたいという企業は急速に減っていて、今はどの企業も、学生にある程度の“実績”を求め始めています。大学4年間は骨休めの期間というのは90年代末までの話で、今の大学4年間は、自らが組織にとって有為な人材であることを示すための修行の場と言っていいでしょう。

そして、現在は幸いなことに、自分の理想のキャリアを形にするためのツールも色々と揃っています。ネットを使えば効率的かつダイレクトに必要な情報を入手できるし、さまざまなポジションの人とコンタクトすることも可能です。

企業もインターン等で、学生の段階で業務を経験できるツールを各種用意してくれています。そこでしっかり成果を上げれば、就活なしで内定&入社一年目で役付きなんて企業も(ファーストリテイリング、サイバーエージェント等)出現してきているわけです。そう、今の学生というのは、過去数十年でもっとも機会に恵まれていると言ってもいい存在です。

そういう機会的に恵まれた時代に、あえて「企業サイドに面と向かって言えないこと」にリソースを振り向けるのは、とってももったいないなというのが筆者の正直な感想ですね。どうせ労力を使うなら、活動力と人脈をフル活用して別の社会問題の解決に貢献した方がはるかにマシでしょう。社会問題に取り組めば実際に困っている人たちから感謝されますが、安保デモなんてやったって感謝されるのは中国共産党くらいです。

そうそう、筆者の同世代の団塊ジュニアの中にも、2000年代初頭にそっち方面に旋回しちゃった人たちはちらほらいますね。「大企業の内部留保を取り戻そう」だの「正社員と非正規雇用は連帯しましょう」だの言われるうちに、化石リベラル界隈に上手くオルグされていった方々です。

で、彼らが今、何者になっているかというと、何者にもなってないですね。オスプレイとか原発の反対デモに誘ってくれる高齢のお友達はいっぱい出来たみたいですけど。というか、たぶん今の安保反対デモにも動員されてるはずです。ああいう界隈では久々の若手らしいので、第一線で力作業をいっぱい任されている40代くらいのオッサンが多分そうです。

若いデモ参加者から見れば直近のサンプルとしてはキャリアデザイン的に大いに参考になるはずなので、いろいろ話を聞いてみるといいかもしれません。

以降、
ブラックリストは存在するか
学外活動を企業に評価させるための3つのポイント

※詳細はメルマガにて(ビジスパ夜間飛行BLOGOS

Q:「社内政治ってやりたくないんですけどやらないとダメなもんですか?」
→A:「査定なんてぶっちゃけ相対評価の奪い合いなのでやらないとダメです」

Q:「マイホームのローンを組むのはアリですか?ナシですか?」
→A:「イケダ・チキリン枢軸国と田端連合軍の戦いはイデオロギー戦争です」

+雇用ニュースの深層

「労働条件ばかり聞くのはNG」はNG?

現実問題として、日本企業への就職は身分制度への加入であり、加入に際してはわたくしを滅することが求められているわけです。

「中高年フリーターを正社員にするぞエイエイオー!」というプロレス

「ゴールは正社員」としておくと、出来なかった場合、1.企業が悪い、2.本人たちの努力不足、という2つの選択肢のどちらにでも責任は丸投げできてとてもお得です。

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2015年8月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。