中国の経済運営に振り回されるな

経済の指標が悪化し、GDPが目標に達成できず、株価が急落している、といった様々な課題に手あたり次第やれることは全部やり、世の中にタブーも道徳観も協調性という言葉も何も存在しない様相、これが今の中国なのでしょうか?ここまで傍若無人振りを発揮されてもそれを止めたり諭すことすら出来ない主要国、そして、更にそれに同調するように通貨安戦争に参入するベトナムなど、世の秩序すら無くなってしまったのか考えてみたいと思います。

共産党だけが支える13億の民の運営は失敗が許されないという意味でもあります。通常の国家であれば経済を含めた政策運営でへまをすれば選挙を通じて政権交代を行い、責任が明白になります。ところが一つしかなければ代替がない訳ですから失敗すればそのまま泥沼にはまっていくのは当然の帰着点です。そして習近平国家主席が採った粛清と敵対するグループの徹底的な取り締まりは同じ共産党内の政策運営のオプションの芽すら取り除いてしまったともいえます。これは運営がうまくいっているうちは問題ないのですが、つまずくと立ち直りにくいという弱点を抱えています。正に今の中国はその悪循環になろうとしているのでしょうか?

二日間連続で通貨切り下げを断行した中国の株価は輸出関連が暴騰するなど一定の買い方もあり、下落幅は限定されています。一方で日本やNYの株価はハンマークラッシュで想定以上の影響を与えています。これは2%と1.6%という切り下げの事実よりこの後何が出てくるかわからないという不安感の台頭のほうが大きな理由かも知れません。(ただNY市場は朝方200ドル以上安から終値は前日比変わらずに回復しています。)

今回の切り下げは日本で報じられている悪化する中国経済への対策もありますが、IMFのSDR(特別引き出し権)へ組み込んでもらう画策であることは余り報道されていません。

SDRのバスケット構成は現在米ドル41.9%、ユーロ37.4%、イギリスポンド11.3%、円9.4%で合計100%となります。このSDRに組み込まれることがどれだけ重要かといえば、中国元の悲願の国際化に於いて信用を勝ち得てAIIBを主導し成功させるためには必要不可欠なのであります。

このSDRの構成は5年ごとに見直しがあり、次回は2016年からですので今年末までにはIMFとして中国元をそこに組み込むかどうかの判断を下さねばなりません。

その最大の原則は為替が管理相場にならないことであり、為替が市場の実態をきちんと反映することが必要であります。そのため、これは捉え方ですが、現在の中国経済の減速ぶりからは中国元が割高になっていると考えられ、今回の引き下げは市場実態に合わせてきたというつじつま合わせができるのです。それゆえ、実はIMFは今回のこの動きに好意的目線なのであります。日本のニュースのトーンだけでは偏る部分です。

個人的には今回の中国元の切り下げ行為は道徳上の問題はともかく、一定水準幅の切り下げならばあり得る話になる気がしています。よってこれが中国経済が酷く落ち込んでいる証拠であるといったことになるかどうかの判断は別次元と考えています。また更なる切り下げがあるかどうかは今後の中国経済の指標等によるものであり、小刻みに管理相場を動かす可能性は大いにあります。

このような行為が世界経済をかく乱させることは事実であり、中国への信頼性は再び悪化する一方、世界経済が中国に頼るところも大きく、焦点の定まらない実に締りのない事態が生じていることがより懸念されます。明日何が起きるのか、この予見が出来ないことに対するいらだちともいえましょう。北米での好意的見方としては中国が変動相場制を取り入れるための前向きなステップという解説も見られます。

私はこんな時だからこそ、中国云々よりむしろ円の国際化をアピールしておかないといけないと思っています。IMFが中国元のSDR組み入れに一定の検討をする訳ですから当然、どこかの通貨のウエイトが下がります。その際、日本円がその対象になる可能性は大いにあるわけですから円がどれだけフェアな通貨であるか、セーフヘイブンとしての意味合い、はたまた経済から財政の健全化や透明性を含めた円のアピールをするきっかけにすべきです。

中国は思っているより巧者ですから日本はいい様に扱われるかもしれません。爆買いで喜んでいても中国のポリシー一つで明日から客が来なくなるリスクを抱えていることを日本の人はきちんと理解しているのか、外から見ているとそちらの方がはるかに不安材料であります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月13日付より