訪日外国人はリピーターになるのか?

今年度の訪日外国人は1-7月で既に1100万人を超え、年間1700万人を超えるペースです。2020年目標だった2000万人は3-4年、前倒しで達成できるかもしれません。既に次の目標である2030年の3000万人に向けてのプランが聞こえてきました。羽田、成田の滑走路をそれぞれ1本ずつ増やす計画であります。

インフラを整備することは結構なことなのですが、「youは何しに日本へ」ではありませんが、買い物三昧でリピーターに刺激させ続けることは不可能であることにそろそろ気がつかねばなりません。

伊藤忠の元会長、丹羽宇一郎氏。日経ビジネスへの寄稿、「賢人の警鐘」には正にその点をズバリ指摘しております。「国も地方自治体も企業もいかに観光客にモノを売るかという発想に偏り過ぎていないか。観光を担う人はもっと積極的に海外トップクラスの観光地を訪れ、観光客を感動させる本質的な価値は何かについて、深く考えた方がよい」と述べています。

氏の指摘はズバリその通りであり、日本はある勘違いをしている気がしてなりません。

日本でしたいことと言えば買い物、美味しい食事、面白いイベントを見ることといった刺激系の魅力が並ぶかと思います。これはいわゆるエンタテイメント系と言われるものでアメリカの観光客誘導策に代表されます。ディズニーランド、ラスベガスといった施設は人工的に作られたアトラクションでそこに高いお金を払い、遊びに来るというものであります。

一方、ニューヨークとなると街としての魅力、更にはブロードウェイミュージカルやメトロポリタン、グッケンハイム美術館を含む芸術やアートを楽しむことが出来ます。パリを擁するフランスも観光客が年間8000万人以上訪れますが、ブランド物の買い物やフランス料理を楽しむばかりではなく、歴史的建造物や芸術とのバランスがそのキーではないでしょうか?

私は何度かこのブログで指摘していますが、この数年、訪日外国人が増えているのは円安と中国や東南アジアでのビザの発給緩和をしているからであります。よって、この波がひと段落すると今までの勢いはパタッと止まるはずです。一度は行くが、二度目に来る人は何%で目的は何か、またその頻度などをよく分析しないとマスコミの総訪日外国人数だけで追っていると厳しいしっぺ返しを食うことになります。

例えば東京。コンサートのチケットは直前ではまず手に入りません。一方ブロードウェイでもラスベガスでもロンドンでも当日券は特別人気があるものでなければ割と手に入ります。旅行に行く時、この街ならこれを「観て」という部分が東京には完全に欠落しています。

東京に行くと私の様に慣れた者でも疲れます。理由は迷路のようなインフラ、歩くスピード、階段なども多いし、人が溢れています。これは休暇をとってリラックスするには程遠い状態なのです。

何年か前にやはりこのブログで書いたことがあるのですが、バケーションとはなにか、リゾートとは何か、という点を日本の観光当局は果たして理解をしているのかと思います。ディズニーはリゾートではありません。そこに行き、ゆったりと出来ることがリゾートの最大のキーであります。日本人はそのような楽しみ方をかつてほとんどしたことがないので概念的にわかっていないのではないでしょうか?

私は東京でたまに時間が出来ると釣りをしに行きます。岸壁に行くときもあるし、釣堀の時もあります。それは水と戯れて無心になれるその瞬間を探しているのだろうと思います。

日本にはトレイルが少ないのも残念な点です。ここ北米にはトレイルが無数にあり、体力と時間に合わせてひょいと歩けるところが最大の魅力です。林の中を1時間ほど歩くその爽快感は日本でできそうでできないのです。

私は訪日外国人が2000万人という目標は為替が今の水準で中国が関税のポリシーを変えない限りにおいて達成できると思います。しかし、3000万という数字は今の発想では到達不可能だということに誰かが気がつき、早く提言すべきだと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月23日付より