中国経済が減速しても日本は大きな影響を受けない

2015年08月25日 13:09

株価や為替相場などは、情報や情報変化に敏感に反応し、たとえ最初は小さな動きであっても、アルゴリズムで動くコンピュータープログラムによる高速取引が相場を大きく動かします。今回は、元切り下げや中国での株価下落があり、中国経済が減速するという憶測がチャイナ・ショックを引き起こし世界同時株安となっています。


それよりも驚いたのは、各紙が一面で、でかでかとこの株安を伝え、また不安感を煽っていることです。なにをうろたえているのでしょうか。リスクがあるとすれば、メディアが煽ることで、企業の経営マインドや消費者の消費マインドが冷え込み、再び日本がマインド・デフレに陥ってしまうことです。

この世界同時株安を受けて、ドイツのメルケル首相は、フランスのオランド大統領とともに、ユーロ圏経済にリスクを突き付ける可能性は低いといちはやく声明をだしています。

中国経済の減速で影響を受けるのは、国によって異なります。先進国にとっては中国は、輸出先ではなく、輸入元なので中国経済が減速しても影響はあまりありません。影響を受けるのは、原油などの資源を中国に輸出している国、また中国に最終製品を輸出している国です。

ウォール・ストリート・ジャーナルが冷静なコメントを出しているので引用しておきます。

 中国の景気減速は一見したところ、世界経済の大きな妨げになる。中国は世界の経済生産の15%を占めており、近年は世界の成長の半分程度に貢献している。

  だが、これが他国への影響を実際より大きく見せている。中国では輸出が輸入を上回っているため、成長の減速が貿易相手国に与える影響は限られる。BCAリサーチのピーター・ベレジン氏によると、米国、英国、フランス、イタリア、スペインではGDPに占める中国向け輸出の割合が1%未満、ドイツでは 2.6%、日本では2.7%となっている。

例外は原材料を輸出する国だ。中国経済の減速に伴い、商品価格は急落している。サウジアラビアや、近く予想されるイランからの供給増によって、原油価格も 打撃を受けている。米国や欧州など原油輸入国の消費者にとってこれは思いがけない利益になり得るが、ブラジルやロシアといった商品輸出国には大きな痛手となる。

世界同時株安、経済リスクは国ごとに異なる – WSJ

日本の場合は、インフレ目標達成を目指している日銀にとっては都合が悪いにしても、中国製品の輸入価格が下がることや、原油価格が下がることは企業にとっても、消費者にとってもむしろプラス材料になってきます。
しかも、中国経済が減速するなか、中国国内の自動車販売にも急ブレーキがかかり、マイナスに転じる中で、日本車の販売だけは伸びてきており、ドイツ車とのシェアを逆転したことをこのブログで以前取り上げました。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 中国で日本車絶好調の理由

暗いニュースだけを見ていると、すべてが悪くなっていっているように感じてしまうのですが、そんななかで、いいことも起こっているという例かもしれません。

しかも、日本のように最終製品ではなく、中間財の輸出が中心だとさらに影響は小さく、また尖閣摩擦の影響で2012年以降は貿易や直接投資の面で中国離れが進んできたので、以前よりは影響は小さくなっています。

日本は「チャイナ・リスク」の影響が小さい国ですが、問題は国をあげて、サムスンや現代自動車などの中国向け輸出に取り組んできた韓国、また中国への輸出で経済が支えられている台湾などのアジア各国です。

株価は冷静に考えればやがて安定してくると思いますが、日本のなかにはチャイナ・リスクを誇張して危機を煽ろうとする人たちもいるので、気をつけたいところです。

そういえば、煽りじゃないかと感じるのは、安保法制成立に思いを寄せすぎたのか、産経の論説委員をされている古森さんが、共和党大統領候補のトランプ氏が、日米同盟の現状を不公正だと非難していることをとりあげ、トランプ氏がまるで日本だけを批判しているということを書いていらっしゃいますが、この記事だけを見るとミスリードされてしまいそうです。
暴言か正論か、トランプ氏が日米同盟の片務性を非難 3万人の聴衆に訴えた「米国を守らない日本」の特殊性 | JBpress(日本ビジネスプレス)

トランプ氏は、韓国に対しては日本よりもさらに激しい口調で批判しています。トランプ氏は、そういうキャラクターであり、そういう自己アピールなのです。
米大統領選の共和党候補トランプ氏が韓国を攻撃!:レコードチャイナ
次期米国大統領候補「サムスンとかクソなのにアメリカで大金稼いで安保タダ乗り、韓国ふざけんな」 韓国人「完全にアメリカ版安倍」 韓国ニュースの反応|かんこく! 韓国の反応翻訳ブログ

さて、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が、「世界同時株安、投資家がしてはいけない5つのこと」として、気の利いたコメントを出しています。そのトップが「ニュースばかりみない」で、言い得て妙だなと感じます。冷静になって、長期的な視点に立ったり、問題を構造的に捉えようとする気持ちを呼び覚ましてくれるかもしれません。
世界同時株安、投資家がしてはいけない5つのこと – WSJ

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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