“実験”に失敗した楽天デーブルス

2015年08月30日 00:00

どうも新田です。夜は肌寒くなったこの頃ですが、プロ野球界のストーブリーグ第1弾となる一報が、しめやかな秋風とともに仙台の方から飛んで参りました。まー、予想通り、発信源はお家騒動真っ只中の楽天。デーブ大久保監督が辞任の意向を固めたと各紙が報じておるようです(サンスポの特ダネのようです)。


※早くもネット裏で秋風が吹き始めたコボスタ(画像はwikipedia)
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混乱に拍車をかけた「現場介入」報道

一応、表向きは下位低迷が辞任の名目になっていますけど、就任1年目の監督が今の楽天の戦力でAクラスが難しいことくらい、野球通の一般人でも分かることですから、結局は田代さんの辞任に端を発するネット裏の混乱を収めるために、デーブさんが身を引いたというのが合理的な解釈ではないでしょうか。

その混乱に拍車をかけたのがいわゆる「三木谷オーナー現場介入」問題なわけですが、この件はなんとなくスポーツ紙の間では既成事実になっておりますが、以前のブログでも指摘したように一般紙が踏み込むかどうかが目安。スポーツ紙の記事では現場介入問題は触れておりますが、サンスポの大久保辞任を追いかけた朝日が夕刊に突っ込んだ電子版記事には現場介入の四文字はありません。まだ一般紙の記者が二の足を踏む要素があるってことなんじゃないでしょうかね。

「現場介入」をどう解釈するか?

三木谷さん周辺に取材をすると、試合がある日に、本人がアメリカ出張の真っ只中だったりするわけで、果たして携帯電話を使って、わざわざ打順の指示を出すなんて逐一やっているのか疑問は残ります。そりゃ今の時代、砂漠だろうが、運行中の飛行機からでも国際電話はできますけども、オーナーの現場介入を嫌うユニホーム組とその周辺が実態を120~150%に水増しして親しい番記者にリークしているんじゃないかという気もします。

もちろん、ご本人が報知のインタビューでも語っているように、従来にない組織作りを目指していたのは事実です。問題はそれをどう「解釈」するか。報知への取材では「現場介入というより、フロントと現場の一体化」と正当化したことが、また球界関係者や野球記者の不評を買っているわけですが、折しも「抜本的な改革の年」と位置付ける今季から球団スタッフに入った山本一郎さんが昨年12月、三木谷さんの強化戦略と星野さんの後任にデーブさんを据えた狙いについて、ハーバー・ビジネス・オンラインに寄稿しております。なお、掲載時点ではまだ球団と契約する前とあって結構踏み込んでおり、参考になります(太字は筆者)。

楽天としての、オンリーワンの野球の完成を求める三木谷さんとしては、三木谷さんの考えに忠実な指導者を監督として据えて、じっくりと新戦力を育成しながら楽天イズムを作りたいと思っていたのでありましょう。

はい、まったく私もそう思います。この後の文脈で、メジャーリーグではオーナーの現場介入もよくあることと現在の状況を予見する内容に触れているのですが、今回の事態をどう解釈するのか、私が腹落ちした表現は、まさにこの記事の文末にありました。

突き詰めて考えてみると、楽天のこのデーブ監督人事というのは実に悩ましいケーススタディであることはご理解いただけるのではないでしょうか。ここには確実な、100%の解はない。壮大な実験場として楽天イーグルス改め楽天デーブルスの誕生を祝い、またその行く末を固唾を飲んで生暖かく見守ってまいりたいと思います。

“実験”で現場と記者がアレルギーを発症

この「壮大な実験場」という山本さんの表現は見事に今回の事態を評価する上で私は腹落ちしました。そもそも、半世紀ぶりの新規参入という球団の成り立ちからして、既成概念にとらわれないイノベーター志向でトライ&エラーをするうちに成功したものを積み重ねていくスタイルなわけです。

しかし、橋下さんが市長に就任した直後の大阪市役所のように、大胆な構造改革を荒療治でしようとすると、組織内には抵抗勢力は絶対出現して改革に想定外のエネルギーを要します。本場ハーバード大学で組織変革の研究で知られるコッターさんは「変革や飛躍を成功させるには、相当数の社員が強い危機感を持たなければならない。それができないことが最大の失敗要因である」と語っているわけですが、一連のお家騒動はおそらくオーナー手動の改革策の突風が強すぎて、ユニホーム組の「相当数」の理解を得られなかった証し。

そもそもベンチャーどころかビジネス経験のない方々なのでカルチャーギャップがあるわけです。そして、同じくカルチャー的にはユニホーム組寄りの野球記者もある種の共鳴をしてしまって、一連の壮大な実験に対してアレルギーを集団発生させてしまったんじゃないでしょうか。夕刊フジのベテラン江尻記者などは、三木谷アレルギーが極地に達して「球界撤退」論まで持ち出しています。

打開策は古田監督とGM復活!?

今後、番記者たちの関心は試合そっちのけで監督人事になると思いますが、後任が誰にせよ、早くこの混乱を収集し、来シーズン、心機一転して戦えるようにしなければなりません。サンスポの記事では、地元出身の大魔神さんの名前を挙げておりますが、これで清原さんを打撃コーチとして入閣でもさせれば目先の世論対策&メディア対策として打ってつけ。来季のキャンプの頃にはお家騒動は無かったことになるでしょう。しかしコーチ経験のない佐々木さんの監督としての手腕は未知数。清原さんもスキャンダルにより球界復帰が難しい情勢です。

そうなると、以前から取りざたされた古田敦也さんはどうでしょう。監督経験があり、三木谷さんも信頼を置いています。球界再編の時に築いた新経連界隈のイノベーティブ人脈との交流もありますので、三木谷さんが現場にやってほしい、ITとデータを活用した野球を体現しつつ、デーブさんほどには“介入”をする必要もなくなるように思います。ただ、古田さんが、三木谷さんの傀儡のように思われて、またチームが低迷となると、本当に立て直しができなくなってしまうでしょう。

今の三木谷バッシングのアレルギーを見ていると、「オーナーが選手起用まで言及するのは、やはり越権行為」(ダイヤモンドオンライン、SPORTSセカンドオピニオン)と見られているところに行き着くので、ここはオーナーと現場の間にワンクッション置く形でGM制度を10年ぶりに復活させ、三木谷さんと次期監督の代わりに批判の矢面に立ってもらうのはどうでしょうか。ではでは。

(※追記 7:20) けさの日刊スポーツによると、後任には星野さんの復帰という話が挙がっているそうです(スポニチは与田さん、梨田さんら)。健康問題の再燃というリスクはあるものの、ほかに適当な人材も見当たらなさそうで、この緊急事態を乗り切るにはやむを得ないところでしょうかね。ただ、個人的には違う打ち手を見てみたいです。

(※訂正 22:45)キャリコネの氏家編集長からの指摘で、「ハーバード・ビジネス・オンライン」ではなく、「ハーバー・ビジネス・オンライン」でした。訂正します。ていうか、ややこしい名前つけんな、コバンザメ商法の扶桑社のタコ。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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