「避諱」文化が生む中国の歴史偽造

2015年09月04日 16:02

中国が3日、「抗日戦争勝利70年」を記念した軍事パレードを実施した。旧日本軍が戦ったのは国民党軍であり、現在の中国を支配している共産党ではない。まして、1943年のカイロ宣言でルーズベルト米大統領、チャーチル英首相と会談したのは蒋介石国民政府主席であり、毛沢東ではない。

ところが、「抗日戦争勝利70年」を記念して製作した中国の映画には、出席していないはずの毛沢東が登場する。まさに噴飯モノである。こうした歴史の偽造、歪曲を行って恬として恥じない中国の行動の源は何か。

北村稔・林思雲共著「日中戦争の『不都合な真実』」(PHP文庫)で中国生まれの林氏は「中国の避諱(ひき)文化に由来する」と指摘する。

中国で科学が誕生しなかった大きな原因は、中国の避諱文化にある。中国人から見ると、「真実」は決して重要ではなく、重要なのは偉大な人物と国家民族の擁護なのである。必要ならば、真実を投げ捨て……ても構わないのである。

「避諱」は避け、隠す(諱)を意味する。国家と社会の安定を保ち、発展させるのに必要なら国家の体裁を保つための虚言を弄し、ウソをつくのは望ましい行為として称賛、奨励される。

例えば、南京事件など戦時中の日本軍の蛮行を誇大に言い募るほど愛国者といわれ、慎重な見方は売国奴と批判される。そこで、競って大袈裟な数字を並べ立てる動きが強まり、どんどん誇張、歪曲が広がる。

林氏の著書によると、南京大虐殺についてある中国人が「日本兵が5万7418人を殺すのを見た」と証言した。

この数字は一の位まで正確に述べられており、常識で考えれば嘘だと判断できる。しかし中国人は、誰も嘘だとは言えなかった。(この証言を否定すれば)日本人を弁護する売国奴の漢奸になるからである。……数字は、そのまま中国の主要な新聞に掲載された。

しかも、この後がある。第2次大戦後の極東軍事裁判に参加した中国の主席代表が自著「極東国際軍事法廷」の中で、この5万7418人を引き合いに出し、(日本兵は中国人を)「針金で縛って」「手当たり次第に斬り殺した」「最後は死体に石油をかけて燃やし証拠を隠滅しようとした」と残虐な犯行を、想像で付け加えたのである。

「避諱」文化に染まった中国人と歴史論争をしても、一致した見方に到達するのは不可能だ、と林氏は書いている。

日本のマスコミはよく、「日中共同で歴史研究をしてお互いの誤解を解き、双方の共通の土台を築く必要がある」といった意見を書く。

例えば、4日付けの日本経済新聞社説はこう見解を述べている。

(安倍晋三首相は)次の習(近平)主席との会談では焦点の「歴史認識」について丁寧に説明し、将来に禍根を残さないよう布石を打つ必要がある。中国にも大局を重んじる度量を期待したいところだ。

いつまで甘い期待に浸っているのだろうか。「国家のためには歴史を偽造してもいい」と考えている確信犯の集団に対し、歴史認識について丁寧に説明しても無駄である。骨折り損と言っていい。

形式的な議論は最小限度にとどめ、お互い利点を共有できる経済交流の拡大や偶発的な軍事衝突が起こらないようにする取り決め、マニュアル作りを中心にした方がいいだろう。

ただし、歴史の真実についての広報活動はこれまで以上に世界に発信する必要がある。

安倍政権誕生以来、「日本の歴史認識」に厳しかった欧米のマスコミも最近は軌道修正の動きが目立っている。

英国の有力雑誌「エコノミスト」は8月21日号で「9月3日に『抗日戦争勝利記念』の軍事パレードを閲兵する中国の習近平国家主席こそ歴史をねじ曲げて、自国の将来の野心に利用し、日本を不当に悪魔化している」と厳しく批判する巻頭論文を載せている。

表紙は習主席がライフルとペンとが一緒になった銃を持って立つ写真、記事の見出しは「中国はいかに将来を支配するために過去を修正するか」。

欧米もだんだんわかってきた。韓国に対しても懐疑の目を向け、日本寄りになりつつある。ここで手を抜かず、政府や意のあるメディアは「真実の歴史」を世界に発信する努力を怠ってはなるまい。

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