一極集中か、多極分散か

2015年09月25日 15:23

自民党は昨日、両院議員総会を開いて安倍晋三首相の総裁選無投票再選の報告・正式決定をしたわけですが、それを受けてのち行われた記者会見で安倍首相は、『デフレから脱却し、力強い成長軌道に乗せるため、「生産性革命」を大胆に進めていく。大きな経済圏を世界に広げながら、投資や人材を日本へと呼び込む政策を、果断に進めてまいります』と言われると共に、『高速鉄道によって、北から南まで、地方と地方をつないでいく。日本全国が、大きな一つの経済圏に統合されることによって、それぞれの地方に、ダイナミックな「成長のチャンス」が生み出される。地方創生の大きな起爆剤となる』との御考えを述べられていました。


私は5年前のブログ『私の国土ビジョン~「地方分権」を超えて~』の中で、温暖化して行く北海道での大農法による生産性の高い米国的農業の実施提案と共に、当地でのカジノ産業の発展がウィンタースポーツとのコンビネーションにより、過疎地の問題等々を解決する一つの方策となるのではと書きました。

それに続けてはまた、新潟県等の大陸に近い地域を物流センターにして行くといった可能性の模索が過疎過密問題の解決に繋がって行くという意味で一つ意義があるのではないかということ、そして更には、地政学的な理由から韓国や香港あるいはシンガポールに行くにも非常に近い九州とりわけ福岡の経済圏というものを今一度本格的に見直す必要性があるのではないかということを述べました。

今月2日一般公開された日本経済研究センターの研究報告書『老いる都市、「選べる老後」で備えを ―地方創生と少子化、議論分けよ』(2015年7月発表)では、人口等の「集積の利益は生産性を高め、賃金水準を引き上げる。高い賃金はさらに人を呼び込むというメカニズムが作用しているものと考えられる。このことは無理に集中を是正しようとするとかえって生産性の上昇機会を奪い、日本全体の成長力を損なうことになりかねない」との指摘が為されています。

之は、安倍政権の看板政策である上記の「地方創生」に相容れない側面もありましょうが、事実「一極集中」した方が効率的であるに違いなく、一面それはそれで必ずしも悪い状況だというふうに私は捉えていません。東京都の舛添要一知事も、「外国企業を含め都市部に集めた方が新たな技術やサービスを生み出しやすく、経済効率も高いとの考え方」をしてられるようですが、勿論そういうところは有るのだと思います。

他方やはり日本全体で構想せねばならない部分もあって、結果として生まれ育った地域が過疎化したならば、当該地域をどうして行くか国としても地方自治体としても考えねばなりません。今その全てが壊れ行くような状況に陥っている沢山の過疎の町などどうなっても構わない、との割り切りで一極集中を望むというのでない場合、過疎の問題をある程度考慮しなければならないと思います。

例えば2年前の10月、私は『「JR北海道問題」について』というブログを書きましたが、此の会社がレールや列車の異常を放置していた問題を巡っては「会社が抱える構造的な問題」3点の他、北海道がずっと抱えている過疎地の問題とも結構絡んでいるのではと述べました。それ即ちJR北海道は、九州と較べると人口は4割しかいないにも拘らず、JR九州より長い路線を抱え多くが赤字路線であり、然も厳しい自然条件で路線の維持に多くのコストが掛かるといった中で、十分な安全対策などというのも疎かになりがちだったということです。

乗降客がどんどん減少するような状況で、利用者がいる限り事業を存続させようと努力するが結局経営がパンクして行くといったケースは、此のJR北海道の問題に限らず市バス・市電の類でもずっと見られてきた現象です。維持できないような過疎の公共サービスは国で面倒を見る、と割り切るのも一つかもしれませんが、何でも彼んでも国で面倒を見ていたら国の財政も持たないわけです。そういう意味で、「地方創生」というスローガン下で推進される様々な施策の方向性につき、誤りであるとは言い切れないのだろうと思います。

投資云々だけでなく、こうした社会生活一般を営む上での公共的サービスの運営維持といった観点からも「多極分散」がベターと考えるべきだと思われますし、更には例えば大地震の歴史を紐解き関東を中心とする各地域で次の大地震のリスクが懸念されている現況で、それが現実のものとなれば一極集中の負の側面が出てくる部分もありましょう。今80年から100年位に一度の大地震発生リスクの蓋然性が極めて高くなっており、1923年9月に起こった関東大震災から見るに、地震エネルギーがかなり溜まっているのではと懸念されています。

冒頭挙げたカジノ産業をに述べますと、過密状況を益々過密にするような東京等での当産業育成を目指すのではなく、大都市から地方への人口移動が起こり得るよう配慮して地方振興ということも考えながら、寧ろ上述した北海道あるいは余り産業が育っていない風光明媚な沖縄のような所で育てて行くべきだと考えています。未だ「普天間基地移設問題」に揺れる沖縄についても、米軍基地の御陰で当地経済が成り立っている部分もないとは言えないわけで、沖縄カジノ計画は検討すべき一つだと私が主張し続けている所以です。

安倍首相は上記記者会見でまた、『北は北海道から、南は沖縄まで、地方がそれぞれ持っている特色を存分に活かしながら、「ふるさと」を活性化する。地方創生も、いよいよ本格化してまいります』 との御認識を示しておられました。「年間訪日客はや最高、9月10日時点1342万人 1900万人届く勢い」というニュースも先週水曜日にありましたが、いま尚一層観光客の地方経済に対するインパクトを十分に認識し、地方に眠る膨大な観光資源の開発や温泉開発、地域の食材を使った料理の工夫等々につき政府・地方自治体を中心にオールジャパンでもっと知恵を絞って行くべきでしょう。

理想的には勿論、地域夫々に日本の中で他を凌駕するような一つの産業を育て上げ、それを核として実質的にその地域を興して行くというようにならなければなりません。日本の国土全体として見るに非常にバランスの取れた形での発展を目指すべきで、言うまでもなくその姿はグローバルでの競争圧力に対する均衡の中で実現されます。

BLOG:北尾吉孝日記
Twitter:北尾吉孝 (@yoshitaka_kitao)
facebook:北尾吉孝(SBIホールディングス)

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