THE PAGEの「金本監督」報道はすごいのか?

どうも新田です。鉄人ばりの連続投稿で恐縮です。
早いもので9月も終わりに向かい、楽天のデーブ監督辞任に端を発する2015年ストーブリーグ・シーズンが佳境に入ろうとしております。けさは、日刊スポーツが巨人・原監督の去就が微妙で江川さんらの名前が挙がっていると伝え、関西では阪神で「金本監督」誕生話が出ておりました。


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■ネット発スクープとして画期的 !?
ヤフトピのツイッターを見て知ったのですが、デイリーかサンスポあたりの配信なのかと思いきや、勝負をかけてきたのはヤフー系のネットメディア「THE PAGE」

阪神・和田監督が退任、金本新監督誕生へ。
阪神が和田豊監督(53)と来季の契約を結ばない方針を固めたことが25日、THE PAGEの取材で明らかになった。昨年オフに1年契約を交わしていた和田監督は、契約切れによる退任となる。球団サイドは、シーズン終了を待たず、近日中にも和田監督に対して来季の契約を更新しない意向を伝える方向だ。
(略)後任の監督人事に関しては、阪神OBで現評論家の金本知憲氏(47)が最有力。金本氏は、星野仙一監督のラブコールに応える形で、2003年に広島からFAで阪神に移籍、成績だけでなく、練習から妥協を許さぬ姿勢でチームを引っ張り18年ぶりの優勝に貢献、2005年にも岡田彰布監督の元、4番打者として2度目の優勝を支えた。

執筆したのは元サンスポの本郷さん。下記のくだりは、あー、スポーツ紙記者ぽい人事記事の書き方だなと。

2012年まで10年間、阪神でプレー。引退後は、3年間、ネット裏で評論家生活を続けていた。球団は、その野球理論と共に“アニキ”と呼ばれた強いリーダシップを評価。勝負どころで勝利への執念を出せなかったチームの空気を変えるには、うってつけの情熱を持った人物として、本社、球団の意見が一致した。また若いファンから絶大な人気を持っていることも魅力だ。

一般紙の記者は監督人事の記事で「野球理論」とか“アニキ”とか「うってつけの情熱」みたいなワーディングしないので、スポーツ紙カルチャーらしいといえばらしいなという印象です。

グーグルニュースで「阪神」「金本」で検索すると、スポーツ紙も金本さんの後任説は挙げているわけですが、掛布さんの名前も一緒に挙がっており、「金本最有力」に踏み込んだTHE PAGEが勝負をかけてきたと思うわけです。プロ野球の監督人事を特ダネで抜くというのは簡単なことではなくて、ましてや記者クラブというサークルの外にいるネットメディアが人気球団の監督人事をスクープしてその事実通りになれば、新興メディアへの人材シフトの流れを感じさせる画期的な出来事です。

■独自コンテンツはスポーツ紙の二番煎じなのか?
反面、どうなんでしょうか。
本郷さんの特ダネにケチをつける意図はありませんが、金本さんが次期監督になるかどうかは、いずれ分かることです。日経新聞が「●●銀行と▲▲銀行が合併、きょう発表」と一面で打ってくるのと同じで、アメリカの新聞界あたりだと総じて特ダネとしての評価は高くありません。そのあたりのことを現代ビジネスで手厳しく批評している元日経記者の牧野さんあたりに言わせれば、新聞社が自分たちの都合でただの発表速報を“スクープ”扱いしている「エゴスクープ」という見方もできそうです。

そもそも、THE PAGEは読売記者をドロップアウトしてヤフーに移った奥村さんが「ネットメディアも独自発信すべきではないか」という問題意識から始めたベンチャーなわけですが、ネットに舞台を移してもスポーツ紙と同じ「速報」を出す意義がどこにあるのか、経営的視点でいうと差別化という点では微妙なような気もします。

■NewsPicksのスポーツ記事との違い
奥村さんとは面識ないけど(読売の先輩だけど)、お目にかかる機会があれば、このあたりのことを聞いてみたいと思いますが、お金のあるネットメディアというものがデイリーあたりの潰れかけスポーツ紙記者の受け皿になるだけのことなのか、同じウェブでもNewsPicksのスポーツ報道のように、「スポーツ×ビジネス」「スポーツ×テクノロジー」といったコンテンツ面でも新しい付加価値を与えて発信していくべきなのか論点になる気がします。

そのあたり、スポーツ紙あがりの本郷さんたちを擁するTHE PAGEと、木崎さんたちフリーの出版系スポーツライターがいるNewsPicksでは、カルチャーが違うという部分もありましょうが、個人的には、ネットに舞台を移してもなお、記者クラブ型報道を続けることに違和感を覚えなくもありません。むしろ人脈や知見を生かして違う視点からのコンテンツ、およびネット版池上彰的解説コンテンツを主眼にすべきだと思いますが、できる記者は早出ししてなんぼということでしょうか。

まー、その昔、ロッテの監督人事を特オチした私が言うのも野暮ったいですが、あとは読者とメディア業界関係者のご意見も聞いてみたいところです。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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