政治家の出処進退は自ら決める

2015年09月30日 04:00
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政治でスキャンダルが発生すると必ず出てくる「出処進退」という言葉があります。これは永田町用語と言われている独特な言い回しです。

例えば、A議員が政治資金規正法違反の疑いで地検から捜査があったとします。A議員が所属している政党のしかるべき立場の人が次のように発言するでしょう。「まずは捜査結果を待ちたいと思います」。

記者会見の席では、マスコミが「議員辞職はしないのですか」「任命責任はないのですか」と色めき立ちます。その問いには、「いまは何も申し上げられません。政治家の出処進退は自ら決めるものです」と発言するはずです。

「大切なことは政治に空白をつくらないことです。国民生活を守るためにも政治を停滞させてはいけません」と締めくくります。「政治家の出処進退は自ら決めるものである」とは誰の言葉で、なにがゆえんなのでしょうか。

幕末~明治時代に活躍した、勝海舟と福沢諭吉はお互いのソリが合わなかったと言われています。福沢諭吉は「幕臣でありながら新政府に加担した裏切り者」と快く思わず、勝海舟も「天は人の上に人は作らずと御託を並べる人に国家を語る資格は無い」と語っていたとの記録が残されています。

福沢諭吉は「瘠我慢の説」を1901年に出版します。付録として勝海舟と榎本武揚に送った書簡と返事が掲載されています。このときの勝海舟の返事が「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張、我に与からず我に関せずと存候」でした。意味は「行蔵(出処と進退)は自分で考えることです。一方、毀誉(悪口と称賛)は他人がするものです。どのように評価されようがそんなことは自分にとっては預かり知らないことです」。

これまでに国会本会議における逮捕許諾に関する決議が議運で可決された例は20例、本会議で採決された例は18例、許諾例は16例あります。また、本会議で議員辞職勧告決議が採決されたことは5例あります。

国会議員は「不逮捕特権」が保障されているので原則として会期中に逮捕はされません。ゆえに国会議員は法律を遵守し自らを律すべき義務があるということでしょう。「行蔵(出処進退)は我に存す」には深い意味があったのです。

●尾藤克之
ジャーナリスト/経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業の役員等を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など。
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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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