ポストモダン後はイスラムの時代か 『服従』

2015年10月04日 13:09
服従
ミシェル ウエルベック
河出書房新社
★★☆☆☆



2022年、フランスの大統領選挙でイスラム同胞団の代表が当選し、フランスをイスラム化する。大学でもムスリム以外は教職につけないことになり、パリ第3大学の教授である主人公は、改宗するかどうかの選択を迫られる――と書くと、きわもの未来小説のようだが、ウエルベックは『素粒子』などで知られる著名な作家だ。

本書は偶然、シャルリ・エブド事件の日に発売されて爆発的なベストセラーになり、半年余りで英訳と邦訳が出た。ただ内容は、多くの読者が期待するような劇的な展開はなく、主人公の性生活とイスラムの話がないまぜになって淡々と語られる。

主人公は文学部に勤務して、19世紀の作家ユイスマンスを研究しているのだが、文学部が「文学研究者を再生産する以外に役に立たない滑稽な組織」であることを自認し、さまざまな女子学生とのアバンチュールを唯一の生きがいにしている。

パリでは長い間ニヒリズムとアナーキズムが支配しており、人々はそこから脱出したいと考えている。そこに出てきたイスラムは、彼のようなニヒリストにとっては魅力的だった。何かに「服従」するという思想はカトリックにも共通で、そこには本質的な違いはないのかもしれない。

多くのフランス人はイスラムを嫌悪しており、彼らを代表する国民戦線がイスラム同胞団と決選投票になるが、社会党がイスラム同胞団に投票することを決めたのだ。今フランスのイスラム人口は1割ぐらいだから、現実には彼らが政権を取ることはありえないが、年老いたヨーロッパにイスラムが活力を与えている面も否定できない。

これから人のグローバリゼーションが進むとき何が起こるのかを、本書はポストモダン的な退屈の次の段階として描いている。小説としての出来はまぁまぁだが、解説(佐藤優)がネタバレで最悪なので星を一つ減らした。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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