日常から乖離した社会福祉という偽善

2015年10月05日 03:00
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(ボランティア活動中の南澤氏。写真左)

日本におけるノーマライゼーション社会の実現には超えなければいけない壁が存在します。ノーマライゼーションは、デンマークのバンクミケルセン(1919~1990)によって提唱された概念です。「障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿である」とする考え方です。

この概念は全世界に普及して、国際障害者年(1981年)のテーマである「完全参加と平等」とした国連決議へとつながり、いまでは社会福祉における基本的な考え方として理解されています。今回は、社会福祉の位置づけをより鳥瞰するために、ボランティア活動に取組んでいる現役大学生の南澤由雅さん(東京理科大学理工学部在学中)に話を伺いました。

●ボランティア活動を通じて何を学んだのか

—活動の内容と役割について教えてください。

南澤由雅(以下、南澤) 障害者と健常者が共同生活をする活動に参加しています。共同生活をすることで双方のボランティアスピリッツを高めることができます。参加者は数名のグループにわけられて活動をしますが、今回は7名のグループを引率し、各グループ間の連携を強める役割として参加しました。

グループには障害者、健常者、若い中高生のリーダーもいます。参加者に事故が無く楽しんでもらうことが、リーダーの大切なミッションです。今年は長野県の志賀高原で約200名を集めたイベントが開催されました。

—会社であれば7名の部門長ですね。活動後に感じたことはありますか。

南澤 障害者に対する偏見とは、障害者に対する認識の欠如が引き起こすものだということが分かりました。私はいま健常者として生活をしていますが、病気や事故によって誰もが障害を負う可能性があります。本来であれば、私たちの日常にもっと密着しているはずの福祉が、実は遠い場所に乖離している存在であることも理解できました。

日頃から社会福祉の意義や必要性を意識しながら生活しなければノーマライゼーションの社会を形成することはできません。多くの人が、障害を正しく理解して意識を高めることは大切だと思います。これからも、多くの人に、ボランティアスピリッツを伝えていきたいと考えています。

●いまの障害者を取巻く環境

—いまの「障害者を取巻く環境」についてどう思いますか。

南澤 いまの社会は障害者をタブー視しているように感じます。そのため健常者と障害者との間に見えない社会的の壁が形成されています。社会人になってから経験をしたこともないのに「障害者との共生社会の重要性」「障害者の雇用率の向上」などと言われても、なかなかその壁は消えるものではないし理解も深まらないように思います。

本質的な理解を深めるのであれば、幼少期から福祉について学んだり、実際にコミュニケーションを取る経験が必要です。しかし、小中学校では、特別支援学級に分かれているため、実際に接する機会は得られません。仮に、そこで接する機会を得たとしても、子供たちの両親に差別的意識をもっている人がいれば活動が阻害される可能性も否定できません。国や行政もデリケートな問題であるため思い切った政策を打ち出せないことが歯がゆく思います。

—国や行政はこの問題にどのように取組むことが望ましいと思いますか。

南澤 現状では、自らが意思をもって障害者と関わろうとしない限り機会を持つことは困難です。障害者への理解が深まらなければ福祉の充実は見込めません。幼少期から障害者と関わっていく仕組みが必要になると思います。

—ありがとうございました。

1972年に米国ペンシルバニア州裁判所は「障害の如何を問わず、すべての子供はその能力に応じて教育を受ける権利を有する」(Pennsylvania Association for Retarded Children,PARC判決)と宣言しています。これは、差別的な教育に対する是正を求めたものであり、教育のダンピング(教育の放棄)を招く危険性があることへの警告です。

内閣府の平成26年度障害者雇用状況によれば日本における障害者数は、身体障害者366.3万人(人口千人当たり29人)、知的障害者54.7万人(同4人)、精神障害者320.1万人(同25人)であり、国民の6%が何らかの障害を有するとしています。障害者政策は私たちにとって喫緊の課題でもあるのです。

●尾藤克之
ジャーナリスト/経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業の役員等を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など。
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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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