バロンズ誌:米連邦政府の混乱、米株相場への影響は? --- 安田 佐和子

2015年10月14日 12:02

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バロンズ誌、今週号のカバーは共和党大統領レースで飛ぶ鳥を落とす勢い(最近は失速の感は禁じ得ませんが)のドナルド・トランプ氏を取り上げます。さすが投資情報誌、単に支持率と他候補への暴言にスポットライトを当てませんよ。1990年代前半、金融業界めがけ総攻撃した過去を振り返ります。トランプ氏が所有するカジノ施設「タージ・マハル」に鋭い分析で切り込んだジャニー・モントゴメリー・スコットのゲーム関連アナリスト、マービン・ロフマン氏と交わした戦いをめぐる詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ストリート、テーマは債務上限引き上げ交渉をはじめワシントンでの混迷です。

「私は政治団体の一員ではない。共和主義者である」——世界恐慌を生きた社会批評家兼俳優のウィル・ロジャーズが生きていれば、こんな言葉を口走ったのではないか(注意:ロジャース氏は民主党寄りで同党に政治資金を提供したが、共和党も支援していた)。共和党内では、ケビン・マッカーシー米下院院内総務(カリフォルニア州)が議長レースから脱落し、金融市場にも無視できないインパクトが忍び寄りつつある。

同時に、米財務省は11月5日に債務上限に達する見通しを表明。12月11日にはつなぎ予算も期限を迎え、間に合わなければ2013年に続き米連邦政府が閉鎖に追い込まれてしまう。今週は12日のコロンバス・デーを挟み1週間にわたって休会を挟むところ、今月末での辞任を発表したベイナー米下院議長(オハイオ州)を後任が決定するまで地位にとどめつつ、水面下で様々な動きが錯綜することになろう。

米下院議長に選出されるために必要な過半数218票を獲得できる候補は、米下院歳入委員会のポール・ライアン委員長(ウィスコンシン州)で、2012年米大統領選挙ではミット・ロムニー氏の副大統領候補を務めた。ライアン委員長は関心を寄せていないが、主流派とティーパーティーとの対立を踏まえれば納得がいく。

世界の金融システムの要たる米国が債務不履行(デフォルト)に陥れば、金融システムへの影響は計り知れない。格付け会社ムーディーズが前週に指摘したように、政治リスクは米国のトリプルA格付けを脅かす。2011年8月にS&PがトリプルA格から引き下げた当時、S&P500は直後に6.5%下落、最終的に19%まで落ち込み弱気相場入りに迫ったものだ。

米国が発行する借用書(IOU)は当然ながらドル建てであるため海外で優遇資産として扱われ、利点が非常に大きい。金本位制の時代に無尽蔵に金を採掘できるのと同じで、我々には米国債を発行するためにドルを印刷するという手段を有する。もちろん、職権乱用と判断されるような措置であり、発行が極めて抑制されたなかで初めてその特別さが増す。

債務上限交渉はこれまで、偽善の下で成立していた。グッゲンハイム・パートナーズのクリス・クルーガー氏が指摘するように、オバマ米大統領をはじめバイデン副大統領、クリントン民主党大統領候補、ケリー米国務長官そろって当時のブッシュ米大統領の債務上限引き上げ交渉に反対票を投じていたのだから。

仮にベイナー米下院議長が債務上限引き上げ交渉で妥結をとりまとめたとしても、クルーガー氏は米上院で採決に必要な60票を得るのに「十分ではない」と予想する。民主党のハリー・リード院内総務(ネバダ州)の協力は必至となるだろう。共和党の米大統領候補、特にマルコ・ルビオ候補(フロリダ州)にとっては厳しい選択肢を余儀なくされる公算だ。

政治が極めて困難な局面にある一方、米株は前週に上昇を謳歌しS&P500は年初来で最高のリターンを達成した。ブルームバーグによると世界の株式相場の時価総額は2.5兆ドル膨れ上がり、ウィルシャー・アソシエーツはウィルシャー・アソシエーツ500指数の週足がで3.44%、時価総額ベースで8000億ドル増加し1年間で最大だったと伝えている。強気相場が帰って来たのだろうか?

S&P500は、ダブル・ボトムのネックラインを抜ける勢い。
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(出所:Stockcharts)

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのマイケル・ハートネット氏は、そう考えてはいない。前週、株式ファンドは43億ドル流入し債券ファンドからは24億ドルの資金が流出した一方、金利がゼロ同然のマネー・マーケット・ファンドは530億ドルもの大規模な資金流入を確認していた。ハートネット氏は、リスク資産の急伸について「単なるショートカバーであり、リスク・オンのポジションが新たに積み増しとなったわけではない」と分析する。

併せて、米3ヵ月物Tビル入札で最高落札利回りが史上初のゼロを記録した。欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を敷くため投資家が金利を支払わなければならない半面、米国ではFedが寝かせた資産に0.25%の金利がつく。もっとも、Tビルがゼロにたどり着いた状況ではそうはならないが。

ユーロダラー先物でも、変化が現れた。3ヵ月物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を軸に決済され米国の金利動向をうらなう上で活用されるが、足元の0.3196%から来年にはゼロに到達。現状のFF金利誘導目標が0~0.25%で、年内でなくとも年明けに利上げが予想されているというにも関わらず、誰かがコール・オプションを取得しているためだ。

一部のエコノミストと違い、Fedの利上げが年明けに持ち越されるとの見方が強まったためだろう。ルイーズ・ヤマダ・アドバイザーズは、顧客向けに前週「弱気相場が進展中:ラリーは目前」と題したレポートを配信した。ヤマダ氏によると、弱気相場はラリーとともにやって来るというではないか。

直近の上昇は、最も下落が激しかった素材やエネルギーがけん引し、エネルギー・セレクト・セクターSPDR(XLE)は、8%も急騰していた。こうした流れ追い風にヤマダ氏はS&P500は2050pから2060pへ、ダウ平均は17,500ドルまで上昇余地すると予想しつつ、その後にダウ平均で14,000ドル、S&P500で1600pまでへの急降下を見込む。ヤマダ氏いわく「昔から弱気相場でのラリーは弱気相場が牙を剥く前に自己満足を呼び起こす」だけに、助言として「資本保全がカギ」との言葉を投げかけていた。市場は敗者、勝者ともに高い価格を差し出すだけに、的を得たアドバイスではないだろうか。

——引き続き、同コラムは弱気路線を突き進みます。足元の上昇局面は単なる

ストリートワイズの枠は今回「編集からのレター」と題した枠に変身、10月15日に香港で産声を上げた海外版「バロンズ・アジア」の1周年記念を祝うページに変わっています。構成メンバーは写真でみた限り8名、そのうち3人がアジア系でした。

(カバー写真:BKL/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年10月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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