ギャンブルと組体操は“究極の幸福”なのか --- 天野 貴昭

2015年10月14日 12:40

前回のエントリーでは予想を遥かに超える反響を頂けました。率直にうれしく思うと共に、建設的なご批判も数多くあった事にも注目致しております。伺えたご意見は賛否に拘らず今後の情報発信に活かして参る所存です。
ありがとうございました。


※ギャンブルにハマる人は何を求めているのか(写真はイメージです)
ギャンブル(フリー)
今回は伺えたご意見を基にギャンブルの外郭に存在する「娯楽・楽しさ」といった概念について皆様と見識を深めて行きたいと願っています。

昨年、つくばエキスプレス柏の葉キャンパス駅付近の某施設にて「柏の葉地区を将来もっと魅力的な住みよい街に発展するためのアイディアソン」というイベントに参加しました。

そこで見えていらしたある来賓のゲストトークとして
・つくばエキスプレスの沿線、つくば学園都市界隈は日本でも有数の消費者金融無人機が設置してある地域である。
・学問・研究に特化された都市だけに周辺に娯楽施設が乏しく、休日に暇をもてあました研究者達がパチンコにハマってしまい、散財・借財している様だ。

…といった情報と、これに基づいた以下の3見解を伺い知る事が出来ました。

(A)パチンコは有害性が高いから規制、廃止すべきだ。
(B)パチンコに代替する娯楽施設が設立する前に撤廃するのはかえって危険だ。
(C)日本人の気質として「楽しむ事・感動する事」に対して感受性が乏しい事、「楽しみ方がヘタな民族」である事が問題の本質ではないか?

これら3つの見解はどれも決して間違ってはいないと思います、でも逆に言うと全てに問題があるとも思えます。

今回はこの中のうち(C)にかかわる参考意見として
社会学者で哲学者であるハンナ・アレントh.Arendt の意見を元に私見を述べて行きたいと思います。

人間の条件 (ちくま学芸文庫)
ハンナ アレント
筑摩書房
1994-10



アレントの代表作である「人間の条件」には古代ギリシャ人が導き出した究極の幸福(エウダイモニア)について紹介がされています。
※本編ではエウダイモニアを「幸福」と訳されていますが、これは現代社会で言う「感動」に近い感情と解釈いただいた方が理解しやすいと思います。

エウダイモニアを手に入れるには、必ず、生命を代償にしなければならない…

エウダイモニアを確実なものにするためには、ただ綿々と生き続けて自分を小出しに暴露するのを断念し(中略)たった一つの行為の中に自分の全生命を要約しなければならない(ちくま学芸文庫版 頁313より引用)

…これをご批判覚悟でざっくりとまとめると
究極の幸福を得る確実な方法は、命賭けで何かに打ち込み達成直後に燃え尽きて昇天する事だ」と古人は結論付けた、とアレントは記しています。

勿論、感動する度に死んでもらっては堪らないのはアレントも承知していて、彼女もこの「古人の見つけた究極の幸福」を現代社会に合致させる事には相当苦労している様です。

尚、アレントの達した結論についてここで僕が要約するのは差し控えます。
決して出し惜しみしているのではなく、アレントの解釈は専門家間でも多岐に分かれる為、要約は必要最小限度に留めたいのです。

本記事によって彼ら(アレントの研究家)が注目される契機となる事を願っています。
ここからはアレントから離れ「エウダイモニア(幸福・感動)」に関する私見を述べたいと思います。

現在、日本で行われているエウダイモニアを得る術の中で、最も解りやすくてかつ最も表現方法が下手な社会現象は「暴走族」だと思います。

彼らは改造車に乗り、交通規定を無視し、肉体的な死・社会的な制裁というリスクを背負いながら深夜の街を爆走します。

また彼らは「私は伝説になる」「完全燃焼する」「流星になる」と、暴走中に昇天するイメージをしきりに述べます。

暴走前後で写真を撮りまくるのも特徴的です。
あれは暴走行為で得たエウダイモニアを作品として残そうとしているのだと思われます。

ギャンブルでもエウダイモニアが発生する事は容易に推測できます。
只、その際は生命・生活に関わる程の金額をかける必要性が予測されます。…年収1億円の人が100万円賭けてもエウダイモニアは発生し難いという事です。

その他で人工的にエウダイモニアを派生する手段として世界的に有名なものは
スポーツ(オリンピック)があります。
只、日本国内に限って言えば高校野球が最も強力だと思います

そして最近物議を醸している「組体操」も身近で全員参加が出来るエウダイモニアを求めての行動だろうと推測しています。

少し長くなりました。
高校野球と組体操の詳細な見解はまたの機会にご紹介したいと思いますが、
話をまとめますと、
「少なくとも僕にとっては、ギャンブル依存症も、高校野球での選手酷使問題も、組体操の事故も、問題の根はさほど変わらなく思えている」
「問題解決に向け、幸福・感動の具現化はとても重要な要素だと感じている」
…という事です。

皆さんはどうお考えになりましたか?

天野貴昭
トータルトレーニング&コンディショニングラボ/エアグランド代表

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