韓国経済の苦悩

岡本 裕明

このところ韓国もののニュースは一時に比べて大幅に減った気がします。意識的にそうなったのか、ニュースがないのか、日本人を刺激する香辛料が足りないのかはわかりません。但し、実態を見る限り経済に関しては以前にも増して苦しさがにじみ出ているように思えます。

韓国経済が明らかに落ち込んだとみられるのは2014年4-6月期の四半期ベースのGDPあたりからだと思います。それまでの1%程度の成長率からこの期に0.5%まで落ち込み、その後、上下しながらも直近の15年4-6月が0.3%となっています。つまり年成長率は2%に届かないのです。インフレ率も月次で見ると今年に入ってから0.4-0.8%程度と低迷。政策金利は今年二度下げて現在1.5%などなど冴えない数字がずらり並んでいます。

特に対中国向けビジネスの伸び悩みが顕著になっていることがより大きな懸念となっています。韓国にとって誇りであるサムスンのスマホは中国市場では今や市場占有率トップ5に入らない製品となりました。新型が二回続けて失速したのが大きいと思いますが、決して同社製品が悪いわけではなく、中国の製品がそれに追いつきつつあり、価格やマーケティングで競争力をなくしたのが原因でしょう。自動車では現代や起亜は中国市場にて今年に入りそれぞれ5%台、3%台と1%ポイント程度の市場占有率下落となっています。

理由は10年以上昔から言われていたことが基本的に当てはまります。つまり、「品質の日本」と「価格の中国」の間に挟まれたということです。ただ、もう少し言うなら中国製は韓国製に比して見劣りしなくなったのに価格は安いし、中国国内では韓国製は外国製品ですのでマーケティング上のハンデも追ってしまったということでしょうか?

もう一つは日本側の韓国に対する脇が甘くなくなったことです。先日、新日鉄住金とポスコの間で争われていた知的財産権をめぐってポスコ側が300億円を払うことで和解しました(流出させた個人とはまだ続くようです)。当たり前の結果でありますが、今まで日本から韓国にどれだけの技術が「無償流出」していたか考えるとようやくきっちり証拠を掴み、首根っこを押さえたわけです。

日本政府も含め、技術流出は個別企業の財産のみならず、日本財産の流出と捉え、厳しく対処する姿勢を見せたことはそれまで濡れ手に粟だった韓国にもう「無償サービス」はなくなったのです。韓国国内ではこの厳しい処遇が韓国経済にボディブローのように影響してきているとの見方もあります。当然でしょう。

日本企業側もスタンスが若干変わっています。人口5000万の韓国と取引をするよりその26倍の人口がいる中国企業と取引をした方が将来性は高いという発想です。よって中国の繁栄は韓国がいよいよ放置されてしまう結果を生むことにならないでしょうか?

私が朝鮮半島の危機を常に考えているのは長い歴史を見てもこの半島はいつも何か起きているところで安定した繁栄となりにくい宿命を抱えているのであります。

そんな中、TPPで韓国は乗り遅れ、今、土台が出来上がったものに乗るかどうかの選択を迫ることになります。韓国国内の反対派の動きをみる限り、正直厳しい判断になると思います。韓国国内の反対が大きすぎて中国により甘える姿勢を強める、というのが私の予想です。しかし、甘えれば甘えるほど韓国の体力は消耗し、回復不可能になりかねないことも事実です。

日本との厳しい関係が生んだ成り行きかもしれませんが、日本もとばっちりを受けないよう身構えておくべきでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月20日付より