バロンズ誌:一人っ子政策撤廃、中国発の新QE政策 --- 安田 佐和子

2015年11月04日 07:00

前週末はニューヨーク・シティ・マラソン出場のため、更新が遅れてしまいました。大変失礼致します。
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最新号のバロンズ誌、特集は半導体メーカーです。シリコンバレーの先駆者で半導体大手インテルの共同創業者、ゴードン・ムーア氏が半導体の進化をめぐり「ムーアの法則」を提唱してから、50年。半導体の集積密度は18~24ヵ月で倍増するため、処理能力が倍増しながら小型が進むという、あの法則に限界説が再燃しています。半導体メーカーは、ソーシャルメディア最大手フェイスブックや検索エンジン最大手グーグル、ネット販売大手アマゾンが手掛ける「クラウド」に対応していかなければなりません。「ムーアの法則」の終焉で勝利の果実を手にするのは、どこなのか。詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、テーマは中国の一人っ子政策撤廃と高齢化。以下は、コラムの抄訳です。

中国は前週、一人っ子政策の完全廃止を発表し世間を驚かせた。バンク・クレジット・アナリスト(BCA)によると、人口の伸びは世界中で急減速中で一人当たりのGDPと出生率との関係は反対となっている。特に中国で最も傾向が強く、人口の伸びは足元で年間0.5%増と1980年代の3分の1以下という有様だ。もうひとつの意図があるならば、輸出主導型から内需主導型への反転が挙げられるだろう。子供を育てるにあたって、出費がつきものだ。いわば子供を2人までもつことの容認は、金融政策というツール以外での量的緩和(QE)と捉えられる。特に見通しに基づいて推移する株式市場では、乳児用ミルクボトル製造会社からスキンケア製品まで上昇した。

一人っ子政策よ、さようなら。
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(出所:Chineseposters.net

高齢化により労働力が縮小する経済的な影響は、決してポジティブではない——BCAはそう結論づける。しかし、BCAのレポ—ト「No Way Out(逃げ道なし)」には明るい材料も並ぶ。ヘルスケア銘柄だ。JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、ヘルスケア関連の消費が2014年の3%増から今年の7-9月期には4.7%増へ拡大したと指摘している。

人口動態は宿命(Demographics is Destiny)との言葉があるが、中国は未来を子供を増やすことで変えようとしている。そのおかげで中国経済は短期的な恩恵を享受し、長期的に傷つくこともないだろう。その他の国では、高齢化に備え消費と投資の行き着く先がヘルスケア関連となる公算が大きい。

米株相場は10月、2011年10月以来で最大の上昇幅を遂げた。ダウは8.47%、S&P500は8.3%、ナスダックは9.38%もの上昇を達成。ウィルシャー・アソシエーツによると、時価総額は1.8兆ドルも膨らんだという。スプレッドも縮小しており、マイクロソフトの130億ドルをはじめ各企業が自社株買い向けの資金を調達するため190億ドルもの社債を発行した。米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月の利上げ開始を見送り、欧州中央銀行(ECB)が追加緩和の狼煙を上げ、中国人民銀行が追加利下げを行った後なだけに、金利環境には追い風が吹いていた。

しかしFOMCは、12月15~16日の会合で利上げに着手するサインを点灯させたままだ。ただし、経済活動が目標に向かう軌道を達成すれば、の話。FF先物は利上げ開始と見送りでほぼ半数に割れている。MKMパートナーズのマイケル・ダーダ米主席エコノミストは、懐疑派の一人だ。QEを終了してから1年、成長率は過去5年間のレンジ下限までに鈍化し、QE2に踏み切った頃と変わらない。しかもコアPCEは目標値の2%を大幅に下回る状況だ。ダーダ氏は信用市場に走りかねない緊張状態と合わせ、大いなるダウンサイド・リスクが横たわると分析する。

Fed関係者は経済指標次第で決定すると強調するだけに、今週発表の米10月雇用統計がカギを握るだろう。市場予想では、非農業部門就労者数(NFP)は18.0万人増、失業率は5.1%。ウェルズ・キャピタル・マネジメントのジム・ポールセン主席投資ストラテジストは、失業率5%割れでの米株安リスクを唱える。ポールセン氏によると、1948年から振り返って失業率が5%を上回った場合は5%以下の時と比べリターンが大きい。米株で前者は後者の2倍、米国債では4倍に相当する。例外は、労働生産性が加速した1990年後半のみ。10月は強気派がカムバックしたかのような力強いパフォーマンスを演じたものの、今後も勢いを維持するのか一考に値するのではないか。

ストリートワイズは、10月FOMC声明文の変わり身を受けて経済環境が変化しなくともFOMCが12月に利上げに踏み切ると予想している。Fedが米株相場を意識しているなら、なおさらだ。そもそも9月FOMC10月FOMCで変わったのは経済指標ではなく、株価とボラティリティである。

シティグループのウィリアム・リー米エコノミストがテイラー・ルール(マクロ経済によって政策金利の適正値を求める関係式)に沿って分析したところ、FF金利とテイラー・ルールが乖離した時期があった。ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻とアジア危機を市場が直撃した1997年から1999年、当時のグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は利下げを示唆する経済環境に反し緩和策を講じなかった。逆に、2008年は金融危機に大揺れするマーケットに反応しゼロ近辺金利政策を導入、以降はテイラー・ルールと乖離したままだ。

仮に米株相場を見つめながら政策運営しているのならば、Fedの信認が問われよう。一方で、米株安の局面での利下げは投資家にとって好ましくない。1971年以降、Fedは24回利下げしてきた。そのうち4回はS&P500が利上げ開始の6ヵ月間に下落しており、利上げ後には平均で7.4%安を示す。逆にS&P500が上昇中の利上げを行った20回の平均リターンは、5.2%高だった。米株高局面での利上げは、成長への揺るぎない自信と解釈されるためだろう。

——ストリートワイズのご指摘は、以前から市場関係者の間では公然の秘密のようなネタですね。今までFedのために誰もが声を荒げなかったという事情を踏まえると、時の移り変わりを感じさせます。アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、平常運転で安心しました。やっぱり弱気派の旗色は変わっていません。
(カバー写真:Enrique Domingo/Flickr


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年11月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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